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3匹の猫と里親探し





太陽の日差しがアスファルトに照りつけて暑いと言うより熱い夏のある日の事


店に来てカウンターに座って深刻そうな顔をして溜め息ばかりついている松爺が私は気になって仕方ないから思い切ってどうしたんか聞いてみることにした。


「松爺・・・なんか心配事でもあるん?今日はえらい元気無いし・・・お酒も上の空で飲んでるように見えるんやけど・・・こんな場所では話されへんやろか?」私がほうれん草のお浸しを小鉢に盛って松爺の前にそっと出して聞くと


「すまんすまん!気を使わせてしもたな・・・色々と考える所があってな・・・」松爺はそう言うと私の出したお浸しをつまみながら冷酒をぐっと飲み干した。


「お客さんも少ないし話せることやったら話してスッキリして帰ったほうがええ夢見れるで~どうせ気兼ねするような顔触れでもないし(笑)」一つ席を開けて横に座ってた健ちゃんが松爺にお酒を注ぎながら笑っていた。


確かに店の中に居る客は松爺と健ちゃんとマスターに座敷にこうちゃんと麻由美ちゃんと比奈が絵美里とご飯を食べてるだけで気兼ねする客は居なかった。


「そやなぁ~・・・ワシの事では無いんやけどな・・・老人会で知り合った婆さんが居るんやけどな・・・具合悪くなってしもて入院しとるんやけど・・・」あまり自分の事はここでは語らん松爺がポケットから一枚の写真を取り出して


「婆さんには身寄りが無くて家族と言うたらこの3匹の猫だけなんや・・・」

写真には優しそうなお婆さんとミケ柄とトラ柄と真っ白の猫が写っていた。


「優しそうな人やね・・・だいぶ悪いん?猫らどうしてるん?大丈夫なん?」

身寄りがなくて入院と言う事は今この3匹の猫の世話を誰がしてるんやろうって事が私には一番気になる所やった。


「婆さんはもう長くないらしくてな・・・そやから、アパートの大家が猫を保健所へ連れて行く言うから慌ててワシが引き取ったんや・・・考えてる間もなかったしな・・・でもなぁ~ワシかてええ歳やろ?猫らの事考えると不憫でな・・・」松爺はそう言って写真を見て大きな溜め息をついていた。


「里親探そう!人慣れしてる猫ならきっとすぐにええ人が貰ってくれるで!」

健ちゃんは席を立って早速こうちゃんと里親探しの方法を相談し始めていた。


「健も浩二もほんま人がええのう・・・オカンも比奈もありがとうな・・・婆さんに言うたらきっと涙流して喜びそうや・・・」目に薄っすらと涙を浮かべながら松爺は嬉しそうにまた写真を見ていた。


「この子らは何歳位ですか?みんな毛艶良さそうやし老猫では無さそうですね~」マスターが興味津々で松爺の横へ座って聞いていた。


「ミケはそれでも12歳位でトラは10歳シロは6歳位やて婆さんは言うとった。」

外には出してなかったからノミもおらんし病気も無くて3匹とも元気らしい。


“ガラガラガラ”店の戸が開いて帰って来たのは若先生と彼女の由紀恵ちゃんやった


「おかえり~♪ええタイミングで来るね~若先生♪待ってたよ~」私が冷たいお絞りを2つ用意しながら言うと2人ともキョトンとした顔をして座った。


「待ってたって?何かあったんですか?がんもちゃんかクマちゃん?」若先生は渡したお絞りで汗を拭きながらがんもとクマを探してキョロキョロしていた。


「ちゃうちゃう!(笑)うちの子らはピンピンしてるで!松爺の預かってる猫3匹の里親探しを手伝って欲しくて相談に行こうって思っとったんよ!」冷たいビールと酎ハイのレモンを2人に出して頭をペコペコ下げてお願いすると


「なんや~良かった♪がんもちゃんかクマちゃんが具合悪なったのかと私も一瞬ドキッとしたやん!里親探しなら私も協力するよ!」由紀恵ちゃんはそう言って誰かにメールを打っていた。


「由紀恵は野良猫の保護活動をしてるボランティアさんと繋がりがあるからきっと頼りになると思います。」若先生は私にそう言ってニコニコしていた。


「里親詐欺って言って良い人間のふりして猫を騙し取って酷い事する人間も居てるから十分気をつけてね!」由紀恵ちゃんは慣れた様子で松爺からも猫たちの様子を聞き出してメモしていた。


*******


翌日からミケとトラとシロを店で預かることになった。里親候補の人にすぐに猫達と会って貰うためにも店で預かるのが一番やろうって比奈も賛成してくれて朝から松爺の所へこうちゃんが配達の合間に迎えに行ってくれていた。


店の戸を開けて待っているとキャリーを抱えたこうちゃんと松爺が戻って来た。


「おかえり~暑かったやろ?冷たい麦茶用意するからちょっと待っててな!」そう言って冷蔵庫で冷やしていた麦茶をコップに注いで2人に渡した。


店の戸をしっかり閉めてから3匹をキャリーから出してやるとソロリソロリと出て来て匂いを嗅ぎ回っていた。


「この子らみんな大人しくてええ子やで♪キャリーにも嫌がらんと入ってくれたしほんま婆ちゃんとのんびり暮らしとったんやなぁ~って俺ちょっとジーンと来てしもたわ・・・」こうちゃんはそう言って鼻をすすっていた。


確かにどの子もゆったりとしていて3匹とも座敷の上に上がって寝ているがんもの匂いを嗅いでから座布団の上で落ち着いてもう既に寛いでいた。


「順応早いなぁ~(笑)この子らみんな女の子やったっけ?肝が座ってるわ」

猫トイレは奥の物置にしてる土間に3つ用意してやって水とご飯は裏口の側に置いてやった。


「何から何までほんまスマンなぁ~浩二もオカンもありがとうな・・・」松爺は今から見舞いに行って猫らの事を報告してくると嬉しそうに出かけて行った。


こうちゃんと入れ替わりに比奈が絵美里と一緒に来てくれたので私はせっせと店の仕込みをすることにした。


「里親が見つからんかったらこのまま店で看板猫してもらったらええんちゃう?猫カフェ?ちゃうちゃう!猫BARやん!(笑)ええかもしれんな♪」比奈が一人ボケツッコミをして笑っていた。


*******


夜になるとこうちゃんから事情を聞いた美花ちゃんと宗ちゃんも来てくれて亞夜子ママと高田さんも3匹を見に来てくれていた。


「猫の里親って3匹一緒じゃないと可哀想かなぁ~?菜々美ちゃんが寂しいらしくて猫をどこかで貰ってこようかなぁ~ってつい最近話ししてたから・・・」

美花ちゃんが座敷でミケの頭を撫でながらみんなに相談していた。


「いきなり一匹になったら寂しいかもしれへんなぁ~・・・3匹は無理か?」こうちゃんが美花ちゃんに聞くと美花ちゃんは溜め息をついて


「2匹が限界やと思う・・・菜々美ちゃんが1人で世話するわけやし・・・」

そうやろなぁ~ってみんな頭を抱えて悩んでいる様子やった。


「もし、2匹を菜々美ちゃんが面倒見てくれるんやったらうちに1匹置いてやることにしよか?がんもも1匹より2匹がやっぱりええみたいやし・・・」

私が夜定食を座敷に運びながら提案したら美花ちゃんが顔を上げて


「ほんまに?ほんまにええの?ええんやったら菜々美ちゃんとパパに電話して聞いてみる!」嬉しそうに私に抱きついて喜んでいた。


「ええよ!電話して聞いてみて♪菜々美ちゃんに見においでって言うてやり!」

私が笑って了解したらすぐに美花ちゃんは電話をして菜々美ちゃんに店に猫を見に来るように誘っていた。


「菜々美ちゃん、パパと来るって!なんか向こうではしゃいでたで♪ほんま子供みたいやわ~」美花ちゃんが結婚してやっぱり菜々美ちゃんは寂しかったみたいで本気で猫を飼うつもりで色々準備していたらしい。


「それにしても簡単に決まったなぁ~♪もっと苦労させられるんかと思ってたんやけど・・・」こうちゃんがトラの鼻を指の先でツンツンして言うと


「苦労させられたかったん?早ければ早いほうがええやろ?良いことやん!」と言って麻由美ちゃんがこうちゃんの頭を丸めた雑誌で叩いて笑った。


“ガラガラガラ”店の戸が開いて菜々美ちゃんと旦那さんが帰って来た。


「おかえり~♪待ってたよ♪3匹ともええ子やから早く見たって!」私が2人を座敷にいる猫達の所に案内すると菜々美ちゃんが声を上げてトラの側へ行って


「私が子供の頃飼ってたトラちゃんにそっくり♪このまん丸な目がたまらん~」

菜々美ちゃんはそうっとトラに手を伸ばして頭を優しく撫でていた。


「この白い子は子供の頃に祖母さんの所に居たシロにそっくりや♪瞳も青いし小さい頃を思い出すな~」旦那さんまでシロを抱き上げて子供の頃を懐かしんでいた。


「それじゃ~決まりやね!トラちゃんとシロは菜々美ちゃんのうちの子に決定でしょ?」私が冷たいお絞りを2人に渡しながら聞くと2人は迷わず頷いていた。


「ミケはちょうど良い感じでがんもと仲良くなってるみたいやしこれも縁って奴なんかもしれへんなぁ~」こうちゃんががんもとミケを見て私に言った。


「そうかも知れへんなぁ~♪この子らはほんま松爺に感謝せなアカンな!松爺が引き取らんかったら保健所へやられとったんやからなぁ~」運の強い子は縁も良いんやと私は猫達を見て改めて感じていた。


トラとシロはその夜の内に菜々美ちゃんと旦那さんが家に連れて帰ってくれたので松爺には翌朝連絡して報告しておいた。もちろん喜んでくれていた。


若先生と由紀恵ちゃんにも猫達の行き先を伝えると凄く喜んでくれていた。



1週間もするとミケはすっかりがんもと仲良くなって親子のようやった。

松爺も週に3日は店に顔を出してくれるようになったし、猫好きのお客さんがまた少し増えて店は少し売上が上向きになっていた。



そして2週間後に3匹の飼い主だったお婆さんが亡くなったと松爺から連絡を貰ったので私は最後のお別れをミケにさせるために連れて行くと眠ったまま目を覚まさないお婆さんの横にミケはちょこんと座って


「ミヤーンミャーンミャーンミャーン」と暫くの間寂しそうに鳴いていた。


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