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【改稿中】猫系女子は俺にだけ当たりが強い、たまに優しい。  作者: うにパスタ
第三章 いつか見た海、初めての夏祭り  
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3-23 キョロ充一人と、その成りかけ。

今年最後の投稿分になります。

 水族館を一周し、イルカショーを見終えた俺達は水族館を出る。


「あー。良かったね!」

「イルカ可愛かった」

 伸びをしながら竹浪さんが赤坂と語らっている。赤坂はストイックに感想を言っているけど、顔はすごい微笑んでいた。学校でもこんな風に笑えばいいのに。


「ショー見てた時の赤坂ちゃん。すっごい目キラキラしてたよ」

 赤坂はイルカが好きすぎて子供達と一緒に前に出てイルカを撫でれるやつに手を挙げようとしていた。

 結局、イルカにタッチできるのは小学生までだと飼育員のお姉さんに諭されて手を引っ込めたけど、あの時の恥ずかしそうな顔と言ったら……


「なあ、一之瀬。笑ってんのか?」

 と、隣の工藤に話しかけられる。地蔵か修行僧に徹して魚を見ていたさっきまでとは打って変わって、表情が生き生きしている。


「ああ。イルカショーの赤坂」

「ああ!」

 二人でぷっと噴き出しそうになるのをこらえる。


「は? 何、工藤君。一之瀬」

 赤坂が俺達を振り返りドスの効いた声を出す。


「な、なんでもないから」

 俺が答えると、赤坂はそのまま前を向いて竹浪さんとの会話に戻る。竹浪さんに同じこと言われたら朗らかな笑顔で答える癖に、何で俺相手だとこんなにキツイんだよ。


「つーかさ。赤坂って、あんな性格だったんだな」

 工藤は声のトーンを落としながら、俺をつつく。

 割とマジで赤坂の本性に驚いている、そんな顔だった。教室の赤坂は女子としか話さないし、猫を被っているからなあ。


「ねえ、次はどうすんの?」

 と、水族館前の開けた歩道で足を止めた竹浪さん。

 スマホの時計を見ながら、今後の予定を俺達に聞いてくる。

 時刻はもう正午をとっくに過ぎていて、そろそろ腹も減ってきた。


「そろそろお昼にしない?」

 そう言って、何故か赤坂は俺の方を見る。

 俺に主導権を渡そうとか、そういう意志を感じるけど、今日の主催者は工藤舞人だ。


「工藤――」

 隣の工藤に目配せする。

 朝から一緒に行動して分かった事がある。工藤舞人は紛う事無き『キョロ充』だ。

 学校では西崎や須山と言ったメンツが目立ちがちで、工藤はいつもその陰に隠れがち。

 率先して行動しないのも、いつもグループで遊んでいる時の名残なのかもしれない。

 一方で、今日の主導権を握っているのは竹浪さんだ。普段の竹浪さんは割と、西崎の手綱を悪い方向に行かないようにサポートしている側。

 ここまでリーダーシップを発揮する事は無い。


「一之瀬?」

 何も言わない俺と工藤を見ていた赤坂が小さく呟く。

 赤坂はこの集まりが工藤を支援する為のダブルデート(俺と赤坂に関しては数合わせだけど)である事は把握している。だから、自分から主張しようとはしていない。

 赤坂が遠慮してくれているなら、安心だ。

 やはり、ここらでリーダーシップを工藤に発揮してもらわないと……


「――おい」

 俺は工藤に目線を向けて促す。


「じゃあさ」 

 それが伝わったのか。工藤もまた小さく頷き返す。


「じゃあさ! あの店で食事でもしないか!」

 そう言って、工藤は国道沿い、観光客向けのファミレスを指さした。


「ファミレスか。まあ、いいんじゃない?」

 とりあえず、主導権を握ろうとした工藤の心意気を俺は支持するぜ。すかさず援護にまわる。


「えー」

 しかし、そこに差し込まれたのは竹浪さんの一声だった。

 思わず彼女の言動挙動に俺と赤坂が揃って注目。


「それよりも、もっとがっつりしたの食べたいんだよね」

「竹浪さん。あんまり気にしないタイプなの?」

 少し困ったように赤坂が会話に介入。一応、工藤の意見に合わせるつもりらしい。


「ちょっと奥行けばラーメンとか食べれる店あるんだけどさ。あそこのが絶対いいって」

 ところが、竹浪さんは呆然とする俺と工藤を尻目に、ぱたぱたと歩き出す。


「それにうち、小さい頃に何回か食べに行った事あるし。お兄ちゃんとか父親に連れられてさ」

「そうなんだ。まあ、昔食べたとこならまた行ってみたくもなるよね」

「でしょー?」

 足を止めないまま、ニカッと白い歯を見せて笑う。

 嗚呼、本当に夏の日差しが映えるなあ。歩く度、両サイドに流した竹浪さんの長い前髪が揺れ、少しだけ日焼けしたおでこが健康的に煌めく。


「ほら、信号赤に変わるよーっ!」

 そう言って、有無を言わさず食事処を決めた竹浪さんはさっさと行ってしまう。


「悪い、一之瀬。せっかく言ってくれたのに」

「今のは仕方ないって。そもそも竹浪さんの行動を俺達がどうにかできるとは思えない」

「だよなー」

 俺が言うと、工藤はがっくり肩を落としながら後に続いた。

 どうやら、このグループのリーダーは竹浪さんで揺るがないみたいだ。

 俺や工藤がどうこうできるレベルじゃないっぽい。


ブックマーク頂きありがとうございました。

今年は色々な方から反応を頂き、励みになる年でした。

皆様も良いお年を!

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