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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
番外編

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試験プロジェクト 10

 次の瞬間、タケルと麗奈の前に1人の幼い女の子が飛び出してきた。


 女の子はタケルの前を通過するなり、タケルの足につまずき、そして派手に転んだ。


「えええええーーーん! 痛いよーーー!」


 転んだ女の子は激しく泣き始める。よほど痛かったらしく、寝転がりながらの大泣きである。


「き、君、大丈夫かい?」

 タケルが女の子に声をかけた。しかし、女の子は気に留める様子もなく、さらに大声で泣き始めた。その余りの声の大きさに通行人達が心配して集まり始める。


 そんな中、もう1人の女の子が現れた。

「大丈夫?じる美ちゃん?」


 どうやら泣いている女の子の知り合いのようだ。あまりに大声で泣くため助け起こしている。

「すみません。じる美ちゃんはよく転ぶんです。」


 女の子はペコリと丁寧にお辞儀するとジル美なる女の子を連れて行こうとした。しかし……人だかりの多さに圧倒されたらしい。オロオロとし始めた。ついには怖くなったのか動きが止まってしまった。挙げ句の果てに、何故か麗奈の顔を見るなりこう言った。


「こ、怖いですーーーー! えーーん」

 女性の顔を見るなり怖いとは失礼なのであるが、女の子はそれどころではないと、ジル美と一緒に泣き出した。


 一角は女の子の泣き声が響き、パニックに。何があったのかと人々が大勢集まってきた。宥める人もいるが、女の子達は聞く耳を持たない。泣き喚くのでさらに、人が集まるという悪循環となった。


 さて、お気づきだろうか。この女の子達、実は女児化したジルとミラなのである。作戦のためにあえてこのような行動を取らせている。全ては、後の作戦に繋げるためだ。


 満を辞して、ここで偶然通りかかった異国の留学生である私が登場する。


「まぁ! どうしたのですか? お嬢さん達」


 私が女児化したジルとミラに声をかけると、群衆が宥めても反応しなかったのに、2人はピタリと泣き止んだ。

「エミリーお姉様!」


 泣き止むなり私を嬉しそうに見上げる。そして口々に「転んだ」「怖かった」と言いだした。知り合いの登場ということだ。


「そう、それは大変でしたね。……で、そちらの方々は?」


 私がタケルと麗奈に目線を送ると、タケルが戸惑いながら事情を話してくれた。私は真摯に対応する。


「まぁ、いきなり目の前で転んで……そうでしたか。お騒がせしました。ちなみにお二人は交際をしているのですか?」


 そう私が聞くと、しばらく黙っていた麗奈が勢いよく自己主張してきた。


「ええ。そんなんです。私達付き合っていて。今日はデートだったんだけれど、この子達が飛び出してきたので」

「そうでしたか。大事なデートを邪魔してすみません」


 内心、こんな時だけ主張するなと思ったが顔には出さずに黙っておいた。何より、今、大切な言質を今取れたことに、ニヤリと心の中で笑った。


 さあ、ここからが正念場だ。

「取り急ぎ連れの友人を呼ばなければなりませんね」


 そう言うと、私はさも忘れていたと言わんばかり後ろで待機していたあかりを呼び出す。

「あかり様ー! お待たせしてすみませんー! こちらにいらしてー!」


 呼ばれたあかりは群がる人々をかき分けて現れた。


「エミリーさん、どうなさったの? 泣き声を聞いて急にいなくなってしまわれて……」


 そこまであかりは言った後、はた、とタケルと麗奈を見て言葉を止めた。2人もあかりと出会したことに驚いたのか、固まった。おおかた、「やばい」とでも思ったのだろうか。少し緊迫した空気が流れる。


 その中を、全く空気を読まずに話を続ける私。

「こちらの方々はお付き合いなさっているそうよ。そんな方々のデート中にこの子達が邪魔をしたらしくて……勝手にいなくなってごめんなさい」


 そう私が言うと、あかりは聞き返す。


「なんですって? 付き合っているですって? 」

「はい? お2人のことですか? そのようですが……」


 すると、あかりは地面にへたり込んだ。

「まさか、前々から勘づいてはおりましたが……こんなにも大々的になさるなんて……」


 私は驚いた素振りをしてみせる。

「どうなさいまして?! 何か問題でも?」


「問題も何も、この方は私の婚約者です……!」

 そう言うや否や、あかりはその場でしくしくと泣き出した。

「まさか、浮気をこんなにも隠すことなくされるなんて……!」


 その発言を聞いた私は、これでもかと言わんばかり大声を発してさらに驚いてみせた。


「まあ!! なんてこと!! 噂の浮気性の婚約者様が、本当に浮気されているところに出会してしまうなんて!!」


 さらに声を張り上げる。

「かの有名な華族である家の御子息、タケル様ともあろう方がこのようにも堂々と浮気しているところを! しかもお相手は商家の麗奈さん!」


 もはや騒音である。だが私は止めず、周囲に聞こえるよう騒ぎ立てた。


「なーんて可哀想なあかり様!!」


 これには、元々ジルとミラの様子を伺うため周囲にいた人々も、私の発言を聞いてざわつき始める。

 さらに、騒ぎを聞きつけたのか、他からも人が集まってきた。


 ここで、私はさらに言う。

「見まして? 泣いてらっしゃるわ! ずっと身分の関係上、耐え忍んできたあかりさまがお可哀想なこと!!」


 すると、周囲も同情するかのような反応を見せ始めた。


 しかし、ここで反論するのはタケルだ。

「ま、まて。私は学友と偶然出会っただけだ」


 苦しい反論である。


「先程はお付き合いと言われ、否定されていませんでしたが?」

 私は勿論ピシャリと跳ねのけた。


 さらに、群衆の中から別の声がした。

「おじさん、こっちこっち!!」


 子供化したクレイである。横には見知らぬ中年男性が。人だかりをかき分けてこちらに向かってきた。


「おじさんの息子さんの声が、この人だかりの中心から聞こえたんだ」

 どうやら連れてきたのは、タケルの父のようだ。タケルの父は私達の前に来ると、この惨状を見て呆気に取られた。


 タケルが見知らぬ女性と一緒にいる上に目の前には、「酷い……」と啜り泣くあかりの姿があるのだ。驚かない方がおかしい。


「こ、この状況はいったい?! 馬車で移動中に突然飛び出し弾きそうになった子供から、あなたの息子が!などと言われ急いで来てみれば……一体何事か!?」


 タケルの父が聞くと、タケルは少し戸惑った。そこで私がすかさず答える。


「タケル様の浮気現場に出くわしてしまったのです」

「?! い、いえ父上。僕は女性の友達と偶然一緒にいただけで……」


 タケルは思わず言い返した。だが私は無視する。


「先程も私に付き合っていると堂々とおっしゃり、否定される様子もありませんでした。」


 すると、タケルの父の目つきが厳しいものに変わった。

「そういうことか。友達と偽りあかり嬢を騙していたと。それがバレて泣き出し騒ぎとなったわけか。貴様……」


「いえ、ですから偶然このような誤解を」

 必死に言い訳をしようとするタケル。


「誤解??」と父が言う前に、ここでクレイがワザとらしく叫んだ。


「あーーーー! このお兄ちゃん、この前もお姉ちゃんのこといじめてた! しかもおんなじ女の人連れて! 最低ーーーーーー!!」


 クレイの突然の横槍に驚くタケル。

「あ! もしや君はこの前の!」

「まだこの性格悪そうなお姉ちゃんと一緒にいてたんだ! 今度もあかりお姉ちゃん悲しませてる! 性格悪いって分かってんのに別の女のところ行くってどうなの? 頭おかしいの?」


 クレイはここぞとばかり、鬱憤をぶつけるようにタケルに言葉をぶつける。


「何! お前は何度もあかり嬢を傷つけていたのか!!」

 クレイの発言にタケルの父が反応する。第三者による発言で現実味が増したらしい。


 タケルは父がよほど怖いのか、反論することもなくただアワアワとしていた。必死に反論することもない息子の様子にさらに父は憤慨。


「とんだ家の面汚しだ!こんなにも人がいる前で我が息子の浮気が露呈するなんて! 貴様、私がいかに家の印象を下げぬよう努めているのか知らないとは言わせない! 」


 タケルの腕を強く掴むと、タケルを馬車に引っ張っていった。

「言い訳は後でみっちりと聞いてやる。」


 タケルはもはや呆然として、されるがままで攫われていった。

 麗奈は状況が飲み込めないのか、ただ立ち尽くしている。


 私達は颯爽とあかりを助け起こすと、人混みから避難させた。

 あとは麗奈は群衆の中でボロクソに言われるがいい。


◇◇◇◇◇◇

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