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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
対貴族令嬢 案件

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(閑話)宝石祭りと光の海

エミリーの心の背景&デート編につき、長いです。

(作者がいうのもなんですが、飛ばしても本編に問題ありません。)



 宝石祭りの当日、私は仕事が休みだったので待ち合わせの時間よりも早めに来て少し遊ぶことにした。


 宝石祭りとは、宝石を展示したりするのではなく異世界を繋ぐ扉に感謝をささげる祭りだ。

 今クロニゲートで管理されている扉は、発見された当初鍵によって開けられ、今の様に異世界間を行き来できるようになったと言われている。

 そのため、この世界では毎年扉が開いたとされる記念日に、儀式を伴う祭りを行なっている。


 何故宝石祭りと呼ばれるかというと、その鍵が宝石のような輝きを放っていたからだそうだ。

 今では持ち手の所に宝石がついた手のひらサイズの鍵のモチーフを、皆持ち寄ることになっている。


 そしてこの祭りの目玉は、なんといっても夜である。皆が各々で持ち寄った鍵を振るのだ。すると、ついている宝石が光り、ペンライトのようになる。街中が光に包まれ、とても幻想的な風景に包まれるのだ。



 私は暇なので、待ち合わせまで露店を一人で巡ることにした。


 様々な露店があり、可愛らしい容器に入ったドリンクや、ゲームなど目移りしそうである。日常にはない街の活気にも私はテンションが上がり、ワクワクとしながら見て回った。少し塩気の濃い食べ物も良いが、甘いお菓子もいいかもしれない。

 なんて、浮かれた足取りで街を歩き回っていたら、声が聞こえた。


「あれ? エミリーじゃない?」


 声の方に振り向くと、魔法省の職員と思われる集団がいた。正確には私の同期に当たる人たちがいた。

 何やら私に呼び掛けたのではなく、仲間内で私を発見して呟いたようだった。

 声を掛けられるのかな?と思っていつでも挨拶できるように心持ち歩く速度を落とした。


 しかし、声を掛けられるどころか何か小さく笑い声が聞こえた。

「なにあれ、一人で歩いているの?」


 ーーんんー?

「しょうがないよ、いつも一人でいるんだもん」

「エミリーって変わってるもんねー」


 ーーおん?

 これは聞き捨てならない。


 私が魔法省に入省した際、沢山の同期がいたのだが、私はあまり友達に恵まれていない。


 基本的に新人は何人かのグループで各課に配属が言い渡されるのだが、私だけ単身で配属が言い渡された。しかも、魔法省内では異例である、悪役令嬢おたすけ課にだ。すなわち、この部署に配属された新人は私一人。それ以外の同期は皆グループで各々の部署に集まっているのである。


 おのずと、配属グループごとに皆仲良くなるので、私は徐々に孤立していった。私自身は単独行動については「気楽だな」くらいで特に何も気にしていなかったのだが……周りはそれで終わらせてくれなかった。


 私が一人で配属されたのは、何か理由があるからだ。しかもあの悪役令嬢おたすけ課に。と、詮索を始めたり変な噂を流す輩が出始めたのだ。独りでに噂だけが広まり、私の知らないところで陰口を言われることもざらに出てきた。ほっといてくれと思ったが、格好の獲物となったらしい。

 何故そんなことになったのか自分なりに分析すると一つのことが分かった…… 


 ーーそれは、私が皆と変わっているから。


 自分で言うのも忍びないが、私は人よりも顔は整っている方だと思える。それ故に、妬みを買って嫌がらせを受けることもあった。だから今回も見た目かな? なんて思ってたらなんと中身も踏まえての話だったようだ。


 どうやら私は周りと同じことが出来ないらしい。正確に言うと、同じようにやっているつもりなのだが、何故か悪く言われたり、悪目立ちをしたりする。新しい発想で提案をするとその場にそぐわないとして却下され、「なぜそんなことも分からないのか」とクスクス笑われたり。別に私は仕事ができないわけでもない。結果は出している。ただ、ちょっと人と行動がずれたり発想が違うらしい。


 それ故に、「エミリーって変わってるよね」と面と向かって言われたり、普通に会話しているのに変な反応をされたりした。そして、嫌みを言われることもあった。別に組織に不利益を与えているわけでもないのにだ。


 時には、私が何かしたのかもしれないと、私なりに空気を読んで皆に合わせるよう努力したり、刺激しないような立ち振る舞いをしたりと気を付けた。でも何をしても態度は変わらなかった。


 ーーそんなある日、私はこう思うようになった。

「なぜこんなにも周りに合わせなければならない風潮があるのだろうか」と。足並みをそろえても、少しでもずれると非難され、新しく合理的な発想であっても既存の方法と違うので受け入れられない。そんな状況が嫌になった。


 それからは、私が部署に新人が一人であることを盛大に活かし、人目を気にせず自分の信念に基づいて行動してやろうと思った。

 別に、結果を出せばいいのだ。コソコソ言いたけりゃ言ってろ。


 幸いにも今の課長は私のことを悪く言うような人物ではない。それに、新しい発想を大事にしてくれている。というか、うちのチーム自体が結果を出せば過程に関してはあまり干渉して来ない。

 きっと、魔法省の中でも別の企業みたいなイメージがあるのはそう言った所だろう。私は良きチームに恵まれたのだ。神様は私をあえて一人で配属にさせ、活かせる場を与えてくださっているのだと思うようにした。



 今、目の前にまさに私に対して変な噂を流していただろう同期がいる。

 腹が立つので、思いっきり笑顔を向けてやった。私はあなた達とは違うんだぞと。


「え、笑ってきたんだけど……クスクス」


 なんだこいつら。人が穏便にしようとしたのに。

 この態度を見て私なりに一つの結論に達した。私は確かに周りと違うことでこの人たちに不快な思いをさせてきたのは、否定できないかもしれない。でも明らかに差がある。


ーーそれは、「悪意」だ。


 私は悪意が無い。しかし、あちらは明確な悪意を持ってこちらに接してきている。人に悪意を持って傷つけることが、「変わってない人」なのだろうか? ……違うと思う。


 この判断でいくと、別に私は相手を傷つけようとしている訳ではない。そう考えると、「変わっている人」でもいい気がした。

 私は……堂々としていればいいのかもしれない。


 クスクス笑って人を見下す同僚に構うのも、私の貴重な時間や労力が割かれるのはごめんだ。

 私は声を掛けることもせず、マイペースに目の前にあった店でお菓子を買った。


 すると、不意に肩をポンポンと叩かれた。振り向くと……そこにはタロウ。

 あぁ、そういえば私の斬新な発想を、良いって言ってくれる先輩もいたなっと思い出した。


 そして自然と笑顔になった私がいた。


◇◇◇◇◇◇


「お疲れ様です、私服なのによく私って分かりましたね」


 私も私服だが、タロウもいつもの白い制服とは違い、私服である。暗めの青い上下でそろえており、いつもの洗練されたイメージからは大層ギャップがあった。

「まぁな、いくぞ」


 というと、タロウは歩き出した。祭りの会場から離れていく。

 祭りに参加するのではないのか?と思いつつも一生懸命ついて行った。


 途中、やや急な坂を上り始めて息切れしてくる私。

「あの……今からどこに……向かうんでしょうか?」

「秘密だ」


 秘密って、言われても正直そろそろ疲れてきた。それに、もうすぐ儀式の時間になる。ていうか、もう始まるのでは?! と思っていると、タロウが止まった。


「ついたぞ。こっちだ」

 やっと着いたらしい。ゼーゼーハーハー言いながら休憩してると、腕をグイッと捕まれ横に立たされる。


「んな、強引に……」

 私は文句を垂れながら顔を上げた……が、次の瞬間文句なんて全て吹っ飛んだ。


 ーーなんと辺り一面が幻想的な光の海になっていたからだ。


 眼下に見える小さな光の集まり。それが視界いっぱいに広がっていた。

 よく見ると、光の一つ一つが動いている。これは、街の皆が持っていた、鍵状の宝石だ。

 ここは高台になっており、街が一望できる場所のようだ。儀式が始まるのとともに皆が宝石を振っている姿が見える。


 その光景に思わず見惚れてしまった。


「すごい、すごいですよ!」

 思わず横にいたタロウにこう言った。すると、タロウはとても満足げに私を見た。

「綺麗だろ?」


「はい! よくこんな所知ってましたね!」

「ここは俺だけが知る穴場なんだ。よくここから景色を見たりしているんだが、祭りの日は特に綺麗なんだ。是非見せたいと思って」


 だから、慣れたようにこんな辺鄙な場所まで迷うことなく連れて来れたのか。でもこんなところ、なかなか人には教えたくないよね。


 タロウは機嫌良く笑うと私の顔を見た。

「……気に入ったか?」

「はい!」


 勿論です! 心の中で頷いたつもりが、嬉しさが表に出てしまったらしく、激しく首を縦に振ってしまった。

 その私の様子が面白かったらしく、タロウはブハッと吹き出した。


「ハハッ。そうか……そんなに喜んでくれたのだったら連れてきた甲斐がある」

「特等席を教えて下さってありがとうございます!……でも、なんでこんなに良い場所を私に教えてくれたんですか? 借りを返すから、てっきり私が何かするんだと思ってました」

「ああ……充分借りなら返してくれたぞ。だから気にするな」

「……え?」


 私が思わずタロウの顔をガン見してしまうと、タロウは少し微笑みつつこちらを見つめ返してきた。


「君の楽しそうな顔を見れたことだ」


 私の楽しそうな顔?


「そ、そんなのでいいんですか?」

「ん? 俺にとっては充分だが?」


 ーーなんと欲のない男だろうか。私の顔ごとき見たところで、タロウには何も得がないはずである。


 私がキョトンとしていたら、ふいに私の頭にポンッとタロウの手が乗ってきた。そして何故かワシワシと私の頭を撫で始める。


「最近……エミリー、君は深刻そうな顔ばかりしていただろ? でも少し元気になったみたいで安心した」


 そうか、そうなのだ。タロウは素直じゃ無いし、不器用な人だけど、心優しい人である。

 暗い話が多くて、晴れない私を心配したタロウは、借りを返すと称して私を遊びに誘ってくれたのだ。


ーータロウなりに私を元気付けようとしてくれているらしい。

 それが分かると、なんだか嬉しいような、むず痒いような、そんな気持ちが込み上げてくる。


 私は嬉しくて、ついとびきりの笑顔で、「ありがとうございます」とお礼を言った。

お疲れ様でした!


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