STEP8-3 ヒーローになった、そのさきも~梓と奈々緒の場合~
「これでしばらく、この海もみおさめかー……」
「だねー……」
「ここ来ると、思い出すわ。
俺、このガケから落ちたんだよな。
そして、ナナとサキに救われた。
歴史が変わって、なくなっちまったことだけどよ。
……お前たちを殴ったことも。サクレアにひでぇことしてたのも」
「アズ。
いいんだよ、もう、手放して。
俺たち、そのために『高天原』にいったんだろ?
あそこでお前は、それに見合うだけの苦労をしたんだから……」
「ありがとよ、ナナ。
でもあの過去は、俺にとっちゃ、やっぱり確かにあった事実なんだ。
そこで犯した罪も。そいつへの後悔も。
消えてなくなったから、ハイそうですかと忘れていいとは、俺にはどうしても、思えねえでいるんだ。
すまねえな。せっかく苦労してくれたのに……」
「あのさ。
まさか『だから俺はひとりで旅に出る』とか言わないよね?
もしもそんなこと言ったら、俺もさすがに怒るよ?」
「ちょ、まってナナちん!!
そんなおれ命知らずじゃないから! 海辺でナナちん怒らせるほど勇者じゃないからねっ?!
……っていうか、そんな殊勝な野郎じゃそもそもねーし……
ナナのおふくろさん笑ってくれたし、ナナが板ばさみにならねえし。
俺的にはそんでもーOKだから!
ほかの野郎が勝手にむかつくぐれーはぜんぜんいーわ! むしろグッジョブ俺だし!!」
「そんなこといって、ほんとは気にしてくれてるんだろ?
偉名宮への出張、やっぱいこうって言ってくれたのお前だよ?」
「……
お、お前のせーだから……」
「え?」
「クズ野郎の俺が、イメージぜんぜん合わないこといったりしたりしてるの。
お前のせーだからっ。
……その、ちゃんとセキニンとってくれよ?」
「もちろん!
改変前の過去のこともさ、割り切れないなら、それで悩んじゃうなら、俺が一緒に考えるよ。
いのちだけじゃない。こころもちゃんと、ひとつにつなげて。
おまえ自身が、おまえをホントのヒーローと思えるようになる日まで……ううん、そのさきもずっと、アズといっしょに向き合ってくから!」
「ありがとう、ナナ。
……ありがとう」
七瀬 奈々緒 ななせ ななお:国土管理省広報部所属、『七瀬の七番目』
名門七瀬家の七男として誰からも愛されて育った、ちょっとのんびりな癒し系。
彼が扮する“勇者ナナキ”は世界的人気キャラ。アニメやゲームまである。
サキとは高一時代に同級生として出会い、ツイブレ談義がきっかけで親友に。双子の妹の花菜恵、親友の梓とも一緒に、いろんなイベントを開催した。
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<前世>七瀬 奈々希 ななせ ななき:『七瀬の七番目』、朱鳥国建国王
偉名王国で弱者救済に尽力した活動家。その一環として『光の都政策』を廃案に追い込んだがいろいろあって有名になりすぎ、ほとぼりがさめるまでユキマイに留学。
そこで賢者メイに師事し、偉名海没の予測を得る。
避難先として新国家『朱鳥』を設立し、功労と人望から王に推された。
国情が落ち着き、民主化のため退位したあとは、大貴族として実力派議員としてバランスのとれた舵取りをみせ、愛される国を作りあげた名君。
蒼馬 梓:蒼馬バイオ研究所職員
亜貴の弟。奈々緒の親友で、サキ、サクともよき友人。
高校の文化祭でバンドをやっていたとき、パフォーマンスとして舞台に引っ張りあげた見物客が中学生の奈々緒だった。二人はその場で意気投合し、大の親友になる。
その後色々あり、命がひとつにつながった一蓮托生の間柄と判明。ますます仲良しになった。
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<前世>アズール:偉名王立研究院の被験体、活動家、朱鳥王の騎士長
偉名王立研究院を逃げ出し、奈々希と出会ったことがきっかけで義賊となった人造夜族。
しかし『盗みをすれば結局誰かが傷つくし、お金をばらまくだけでは根本的な救済にはならない』と諭され、奈々希の仲間になる。
その後『光の都構想』を廃案に追い込んだことで有名になりすぎ、ほとぼりが冷めるまでとユキマイに留学。そこでサクレアたちと出会い、生涯の友人となった。
朱鳥国設立後は、奈々希と命をつなげて一の騎士となり、つねにそばで支えつづけた。




