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咲也・此花STEPS!! 4~もと・訳ありフリーターの俺が花いっぱいの国でにゃんこな王様になるまで~  作者: 日向 るきあ
STEP7.俺たちの結論

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STEP7-2 ごくろうさま、でも……~咲也の場合~

 スノーが最初に歩み寄ったのは、ゆきさんのもとだった。


「ゆきお姉ちゃん、すっごく頑張ったわよね。

 他の子たちとも一緒になって、あの無表情無感動男だったあいつに毎日話しかけてくれて。

 倫理観とか皆無だったあいつが、まがりなりにも人並みになれたのは……

 そしてその後が全部ぐっとよくなったのは、ひとえにお姉ちゃんの奮闘のおかげ。他の誰にも、できなかったことよ。

 本当にありがとう、お姉ちゃん!」


 微笑み、腰をかがめて聞いていたゆきさんは、ありがと、とスノーをハグした。

 仲良く抱き合う二人をみていると、まるでほんとの姉妹のようにも見えた。

 腕が解けるとスノーはそのまま隣へ。

 ひざをついて微笑むロク兄さんに、ぽんと飛びついた。


陸星ろくせい兄さまもすごかったわ。

 奈々希兄さまたちと一緒に、草の根から粘り強く活動して、夜族たちの自由と人権を勝ち取った。

 そしてみんなの祝福の中、堂々とゆきお姉ちゃんをお嫁さんにした。

 愛は歴史をもかえるって、まさにこのことね。

 あたし、そんなすっごいミラクル起こしちゃう兄さまの妹になれて、ほんとにうれしいし、誇らしいの。

 感動をありがとう、兄さま!」

「ありがとう、花菜恵はなえ

 そんなに褒めてもらえて、兄さまこそ誇らしいし、うれしいよ」


 ロク兄さんはあったかく微笑んでスノーのあたまをなでなで。

 一瞬親子みたく見えたのは、いまは黙っとこう。


 次にスノーが向かったのはなんと、アズールの元だった。

 ぷっとほっぺたを膨らませ、にらみつけるようにしてから言うには。


「あんたも……が、頑張ってたわよねっ。

 楽しきゃいーやのくそ野郎なとこも、その、……マシにしたし。

 なにより奈々希兄さまのことは命の限りちゃんっと守りぬいたしっ。

 そこはまあ、認めてあげなくもないんだからっ。その……『おとうさん』。」

「のぁぁっ?!『くそおやじ』から二階級特進したっ?!

 おいおい、調子狂っちまうなそんな風に言われっと!

 ……その、なんだ……ありがとよ」


 目をそらしながらのツンデレに、アズールはぶっ飛んだ様子で叫んだ。

 しかし最後には、見たことないほど優しい顔で、スノーの頭をなでていた。

 スノーも顔を赤くしながらも、それを拒むことはない。

 やがてでっかい手が離れると、ちっさな咳払いをひとつして、スノーはとなりに立つナナっちに向き直った。


「奈々緒兄さまも、いっぱい頑張ってたわね。

 優しい奈々緒兄さまが、トロンあってのこととはいえ、戦いを起こすなんて――

 これだけは心底、ビックリしたわ。

 しかもあの完璧無双っぷりときたら、まるでラノベみたいで……

 いっそあのまま世界征服させちゃいたいくらいだったんだから!」

「あはは、やっぱり俺にはそういうの、向かなかったみたいだね。

 ……ちょっと情けないけどさ」


 そう、その顛末は悲しいものだった。ナナっちは、ちょっととほほな笑いで頭をかいた。

 しかしそんなナナっちを、スノーはむぎゅっと抱きしめた。


「いいのよ。兄さまは、笑顔が世界最強だから!

 なんかあったら、あたしを頼って。

 おにいちゃんを守る妹は、宇宙最強なんだから!」

「ありがと。うれしいよ、花菜恵。

 でも俺ももっと頑張りたいから、応援してくれよ、な!」

「うん!」

「それじゃ、お兄さまはわたしがお守りするわ! ね、お兄さま☆」

「え、あ、その……」

「たしかに、妹は最強ですね!」


 すると宇宙最強その2であるルナさんが、サクの腕を取って笑う。

 それまでのしょんぼりぶりはどこへやら、赤くなってあわてるサクの姿に、俺たちの間に笑いが起きた。

 だがユーさんの言葉に、やけに実感こもってるのは気のせいか。

 ともあれ、そんなユーさんたちに向け、スノーはぺこ、と頭を下げた。


「エリカお姉ちゃんたち、それに、ユーお兄ちゃん、ジゥお兄ちゃん。

 あたしのおにいちゃんたちがお世話かけて、ほんと、ごめんね。

 みんながきてくれて、サポートしてくれて、すごく、助かったのよ。

 おにいちゃんたちをたすけてくれて、ほんとうにありがとう!」

「いいのよ。

 お兄ちゃんたちも、ハナエちゃんのことも、あたしたち、だいすきだもの!

 また頼ってよ? 約束よ!」

「うんっ!」


 四人を代表してこたえたのはエリカ――いまのエリカのほうだった。

 ふたりがぎゅっとハグを交わせば、ユーさんとジゥさんがしみじみという。


「おにいちゃん……はああ、いい響きです……」

「最近若の妹さん口きいてくれませんからね~……」


 そういうことだったのか。うん、ドンマイ。

 女きょうだいは姉貴しかいない俺にはちょっとわからないけれど、ユーさんの切なさそのものはすごーく、伝わってくる。

 スノーはかわいらしい手で「ドンマイ!」とユーさんをぽんぽんたたくと、やつが「スノーさんっどうかぜひともうちの子に!!!」と言い出すのをさらりとかわして、亜貴の手をとった。


「亜貴お兄ちゃん。

 いまのおとうさんが、そしてあたしがあるのは、お兄ちゃんと、亜郷あさとおじさんのおかげよ。

 こんなとこまでもいっしょにきてくれて、支えてくれて、ほんとうに、ありがとう。

 これからも、あたしたちのこと、お願いしちゃっていい?

 あたしもあたしのできること、精一杯お手伝いするから!」

「もちろんだよっ!

 これからもふたりの『おにいちゃん』として、ぜひよろしくねっ!!」


 一部分なんかやけに力こもってるのは、たぶん気のせいじゃない。


「うん、『おにいちゃん』♪」

「はあああ、なんていい子だー!!」


 スノーはその辺の心理をわかってるようで、あざといほどに可愛い笑みを向ける。

 うん、いま俺、スノーが子供の姿でよかったって思ってる。

 もしも大人スノーがこれやったら、ギャップかわいすぎる彼女をめぐって、亜貴とバトルしなけりゃならなかったかもしれないから。

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、スノーはとことことイザークのもとへ。


「イザークお兄ちゃん。

 ほんと、うちのいじっぱりおやじがごめんね。

 びっくりしたでしょ、いきなり『……俺は、殺したい。それでもいいか』なんて言われて。

 だってのにスパッとうなずいて、ついてってくれて。それでサクは救われたのよ。

 ユキマイにお婿に来てくれたのがお兄ちゃんで、ほんとによかった。

 今回も、ほんとうにありがとう。ティアお姉ちゃんともども、末永くよろしくね!」

「おう! 俺はみんなの兄貴分だからな!

 みんなまとめて面倒見るぞ。もちろん、可愛い花の女神様もな?」

「うん!」


 太陽のような笑顔でスノーを高い高ーいするイザーク。

 スノーもはしゃいできゃっきゃと笑ってる。

 ほのぼのしちゃう俺たち。

 もっともサクだけは「いじっぱりおやじ……」とぼーぜんとしてるけど。

 一通りそうしてじゃれあえばスノーは、シャサさんとイサの元に向かった。


「シィお姉ちゃん、イサお兄ちゃん。

 ふたりがきてくれたから、サクはあそこまで、シミュレーションを進められたのよ。

 イサお兄ちゃんの『最適化』があったから、お兄ちゃんのいるチームはつねに最短ルートを選択してこれた。

 さらにはシャサお姉ちゃんの強い強い意志が、トロンのシミュレーション結果を強引にでも変えてたの、もう気づいてるわよね。

 そしてふたりはわたしたちのことも、たくさんたくさん助けてくれた。

 シミュレーションとわかっていてなお、いつだってわたしたちを全力で守ろうとしてくれた。

 サキだけじゃなく、スノーフレークスの花ひとつにさえ優しさをくれて、わたしすっごくうれしかったのよ。

 本当に、どうもありがとう。

 ふたりの結婚式、他にいいひといなければ、わたしに仲人やらせてね。

 わたしの全力をあげて、一生のしあわせをよんでみせるわ!」

「ハナっち――!!」

「なんていいこなんだあああ!!」


 ふたりは感涙に咽びつつ、いっせいにスノーを抱きしめた。

 しばらくして二人がルナさんとサクになだめられれば、スノーはルナさんに声をかける。

 そして口にしたのはなんと、謝罪の言葉だった。


「ルナおねえちゃん。

 いつも、いつも、みんなのことばっか先にかんがえさせちゃって……みんなをまもる女神として、申し訳なく思ってるの。

 あのとき、ほんとは、みたかったんでしょ?

 サクレアの、つらい過去の記憶。

 なのに、ぐっとこらえて……

 いまもむかしも、シミュレーションの中でもそう、

 ありがとうはだれよりいっぱいあるわ。でもそれ以上に、ごめんね、おねえちゃん。

 わたし、おねえちゃんのわがまま、もっと聞きたい。女神としてだけじゃない。妹としても、おねえちゃんのことを、まもりたいの!」


 二人はぎゅっ、と抱き合った。

 やがて体が離れれば、ルナさんは目元を小さくぬぐいながらの泣き笑い。

 あの、天使の泣き笑いだ。

 もと神猫の天使は、いたずらっぽく打ち明ける。


「スノーさん。

 わたしね、とってもとてもよくばりなの。

 だから、いつもそんなふうにしてしまうの。

 たとえいまは辛い決断でも、最後に後悔しないみちを……って。

 でも、こんな風に思いやってもらえて、すごくすごくうれしい。

 ありがとう、スノーさん。

 これからもずっと、なかよくしてね。

 ……こんなわがままでも、いいかしら?」

「帰ったらあと99個ね!」

「ふふっ。がんばるわ♪」


 最後にスノーは俺たちの前までくると、どんっと地に足を踏ん張り、腰に手を当てる。


「……で、サキ、サク。

 あんたたち、ほんっとうにそれでいいの?」


 そう、それまでのにこやかムードはどこへやら。

 彼女はむっ、と、俺たちをにらみ上げてきたのであった。

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