表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲也・此花STEPS!! 4~もと・訳ありフリーターの俺が花いっぱいの国でにゃんこな王様になるまで~  作者: 日向 るきあ
STEP6.サクレア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/54

STEP6-3A 回帰~朔夜の場合~

17:16

誤字報告いただきました! ありがとうございます!

何に「変えても」→「代えても」

 その瞬間、俺は確かに全てを把握していた。


 この世界の全ての地の景色。

 太古の昔から、無限の未来にいたるまでの歴史。


 往来する生命たちの変遷と来歴。

 かれらが見たこと、思ったこと、感じたこと。


 ユキマイの砂の一粒一粒。南の大洋にたゆたう水の一滴一滴。

 大空渡る風に含まれる気体の分子、ひとつひとつのかたちと動きまで。


 俺はすべて『知っていた』。どんな小さな特徴も、余さず正確に知覚していた。



 すさまじいばかりの情報が、俺の中で渦を巻く。

 いや、その表現は適切ではない。

 なぜなら、いま俺は真なる神。

 そうである以上、世界は俺だ。

 俺にはうちもそともない。

 すべては俺で、俺はすべて。



 ああ、わかる。ちっぽけなことだ。どうとでもなる。

 サクレアを襲った艱難も。

 サクレアの弱さも。

 そう、サクレアという、存ざ――




「ふざけるなッ!!」




 サクレアが、ちっぽけな、どうとでもなることだと?

 ふざけるな。俺は、俺をどやしつけた。

 そして『そこ』から、俺にそんなことを思わせてくるそいつから、俺自身を全力で引き剥がそうとした。


 だがそいつは、『神の座』は、絡みつくように俺を放さない。徐々に、侵食してくる。

 俺からサクレアを、とりあげようとする。

 サクレアをただのモブに、書き割りに、文字の羅列にひとつの点にと貶めようとする!


 違う。違う。こんなのは、ちがう。

 いやだ、間違っている。

 俺にとってサクレアは、些事などにはなりえないのだ。


 俺はサクレアを捨てない。捨てられない。

 たとえそれが、小さく愚かなあり方だとしても。

 サクレアが『神』だ。俺にとっての『神』だ。

 そのサクレアの存在を、運命を、しあわせを軽んじるものが『真なる神』というならば、そんなものはくそ食らえだ!!




 もがき、全力で叫べば、衝撃とともにヒトの視界が戻ってきた。

 おりしも、俺の正面で『天使』が、こぶしを収めるところだった。


「すまない。少し強くやりすぎた」


 まずやってきたのは、頬の痛み。ついで小さな混乱。

 そして、何が起きたかの理解。

 だが、俺は疑問の声を上げてしまった。


「お前、もしかして、俺が戻ってこれるように……?!」

「おかしいか?

 俺はお前のナビゲーターだ。お前が最良にたどり着けるよう、サポートをするのが役割。

 ……基本的には、そのつもりだ」


 その答えを聞くと、自分が恥ずかしくなった。

 だから俺は、ひとつ頭を下げると、右手を差し出した。


「その……

 感謝する、『天使』。

 俺の意を汲み、目を覚まさせてくれたこと。

 それと、悪かった。

 ここまでいろいろと、つっかかってしまった。子供じみていた」

「気にするな、サクヤ。俺がお前でもそうしていた」


 奴はひとつうなずくと、しっかりと俺の手を握り返してくれた。


「『天使』。お前は俺たちの、最良のナビゲーターだ。

 改めて頼む。力を貸してくれ。

 サクレアのためのベストを、見つけたいんだ。

『デウス・エクス・マキナ』じゃない、ひととしての血の通った道でたどり着く、あいつのためのベストエンドを」

「もちろんだ。

 俺は、そのための存在だからな」


 奴が握手をとき、身をよければ、三人の友が飛びついてきた。

 言葉もなく抱きついてきた三人に、その体の小さな震えに、俺はいま、こいつらに怖い思いをさせてしまったのだと実感した。

 なのにこうして、帰還を喜んでもらえる。しっかりと、抱きしめてもらえる。

 うれしさと申し訳なさとがこみ上げる中、俺は思いを改めた。


 俺はこいつらのことも、捨てたくなんかない。

 こいつら、ルナ、父上母上、そして、ここにはいない多くの慕わしき人々。

 どうして、忘れていたのだろう。

 こんなにもたくさんの、いとおしく、たいせつなものを。


「みんな、すまない。悪かった。

 撤回する。何に代えても、は。

 俺は、幸せにしたい。おまえたちも含めて、みんな。

 ここからも、一緒に、来てくれるか?」

「もっちのろんだよ、サクっち!

 この頼もしいシャサさんたちに、どーんと頼ってよ!」


 シャサが笑ってどんと胸をたたけば、イザークとイサがそれに続く。


「そーときまったら善は急げだ!

 もう一度サクレアのこと、調べなおしてみちゃどうだ?

 サクレアのためのベストなら、サクレアを知らなきゃだろ?

 俺もサクレア時代のサキのこと、もっと知りたいしな♪」

「おお、情報管理なら任せてくれよ!

 さすがにシンカミレベルはきっついが、天ちゃんのフルパワーくらいならがんばったるぜ!」

「ほう、我がチカラに挑むかイサよ? 後悔しても知らないぞ?

 というか天ちゃんて何だ天ちゃんて」

「あははは! やだ、天ちゃんとサクっちちょーそっくりー!!」

「だから天ちゃんはよせと!」

「というか俺たちは似てなんかないっ!」


 イザークが明るくウインクする。

 イサが茶目っ気たっぷりに親指を立てる。

 シャサが陽気に笑って、『天使』がムキになって、俺もまた――


御座トロンの間』ははじめて、明るい笑いにあふれた。

 そうして俺たちは、生前のサクレアをなす記憶を、ゆっくり、ゆっくりと、辿りはじめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ