第2話
虚構の活気に溢れているのはどの街も同じだった。悲しいが、魔物に襲われるということは人として恐ろしい事だ。街と街を行き交うとなると、必ず護衛がいる。傭兵業は今や高騰しており、貧しい商家は廃業せざるを得なくなってしまった。
先行きが不安になる世界ではあるが、それで儲けて盛り上がる奴はいい仕事なんだが……
「ここらは基本的に魔獣が襲い続けているんだ。傭兵さん、警戒してほしい」
馬車の御者である依頼人は俺の方を見て、そう伝えてきた。俺は馬車の荷台の上で周りを確認しているのだが…… 現実逃避をやめよう。
俺もやってみたはいいものを、結論から述べよう。魔獣が襲ってこない。ここの魔獣は気性が荒いはずである。理由としては、食いちぎられた山賊の頭が道端に転がって腐り始めているのだ。
「傭兵の兄ちゃん、武器を準備してくれ! いつ襲われるかわからねぇんだ!」
「あまり声を荒げないでくれるか。魔獣が警戒している。俺が武器を手にした瞬間、一斉に襲いかかる可能性もある」
森の中に潜み続ける魔獣が約50頭ほど、確実に人間を仕留める気なのだが……なぜ襲ってこないのか? 気になるところだが、考えても仕方がない。
まずは目線だけで牽制するしかないと思った矢先、馬車が急に止まったのだ。
流石の俺もバランスを崩し、馬車から落ちて地面に突っ伏した。それ幸いと言わんばかりに、狼のような魔獣が襲いかかり始めた。御者の悲鳴を聞いた瞬間に、俺は左腰のガンホルダーから銃を左手ですばやく掴み、撃鉄を引き空へ撃った。
それに魔獣の動きが止まったのを見逃さず、御者に怒鳴るように伝える。
「走れ! 絶対に止まるな!」
それを聞いた御者は鞭で馬を刺激し、走らせる。物凄い勢いで馬車は駆けていった。こっち見ないって、どんだけ切羽詰まってんだよ。
「魔獣だけど、道中の護衛も大変だなあ……さっさと済ませて追いつかないとならねぇけど」
左腰に指している剣を右手で抜き、牽制のために銃を魔獣に向けて、半身になって構える。魔獣の一匹がそれを見た瞬間に俺に向かって飛び込んでくる。俺は剣で脳天を串刺し、眉間に銃を当て抜きながら発砲する。
甲高い音と脳髄が辺りに散らばる。剣は血濡れ、足元に返り血を浴びた。
銃によって脳天と共に弾き飛ばされた魔獣はピクリとも動くことはなかった。
「さあ、獣風情共。こーなりたいんなら、かかってこい!」
魔獣たちは仲間の仇を討たんと言わんばかりに、俺に向かって走ってくる。俺はその間に銃をホルスターにしまい、剣を鞘に入れて、構えた。
溜め込んだ力を一気に解放させて、飛び込んできた魔獣をまとめて斬り捨てる。その後ろからやってきた魔獣を逆袈裟斬りで斬り流し、さらにその後ろからきた魔獣を突きから袈裟斬りで斬り捨てる。
左のホルスターから銃を抜き、左から来た魔獣の口へ突っ込み、噛もうとする前に発砲する。右からきた魔獣は空中から地面に堕とすように斬る。
十分に引きつけた魔獣に銃で一発脳天をぶち抜き、流れるように別の魔獣を剣で斬った後、余裕ができていたのか視界に自分の立っている位置が感覚的ではあるが、立ち上がった場所から一切動かず左足を軸に右足のみで全方向へ攻撃を行っていることがわかった。要するに一歩も動かずに全方向へ攻撃を放っているということだ。
そのまま、一歩もその場を動かずに場面に応じて約50頭の魔獣を撃ち抜き、斬り捨てた。襲ってこないことを確認した瞬間に馬車が進んだ先へ銃と剣を構えた状態で、全速力で走った。その時の俺の姿を一切に気にすることなく。
隔週更新で進めていきます。