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その13

その13


驚いた。まさか連絡があるとは。

例の『白い貝殻の小さなイヤリング』の持ち主が見つかり直接お礼がしたいと交番から連絡があったのだ。

その日は都合が悪いらしく後日と言う事で互いの連絡先を教える事になった。

「尾っぽに根っこ。鳥の鷹の子です」

持ち主は女性で『尾根鷹子おねたかこ』と名乗った。

電話で少し話しただけだが、物静かな落ち着いた感じのする女性だ。

スタコラサッサッサノサや トコトコトコトコといった言葉とはおよそ無縁な感じだ。

「ありがとうございました。とても大事な物だったんです」

感謝の言葉を述べると

「都合が着いたら連絡します。本当はすぐにでもお会いしてお礼をしたいんですが。失礼で申し訳ありません」

彼女は丁寧に謝った。

そう言われると返って恐縮する。

気にしないよう伝えるとまた丁寧にお礼を言われた。

電話を切っても耳の奥に彼女の声の余韻が残る。

写真でも送ってもらえば良かったかな?まあ突然そんな事言うのも変だし怪しまれる。

会った時の楽しみにしておこう。

その日程なくしてメールが届く。

都合が着いたらしく3日後に会う事になった。

その3日間何事も無く過ぎると思ったら


「火のクリ◯タル」を手に入れた!


ただ、原石ではなく占いに使うような水晶球だ。ソフトボールぐらいの大きさで触れた時ひんやり冷たいかと思いきや、ほんのり温かかった。

ある世界を暗黒に染めたと言われる四大元素の一つ。しかしそれを取り除く事の出来る表裏一体の力。

その力がこのクリ◯タルにあるのだ。実際にはこれだけではないのだろうけど。

四大元素。土、火、水、風が世界を構成するという考え方の一つ。

他に木、火、土、金、水の五行であったり、

赤、緑、青の三原色…これは違うな。等あるがこれは四大元素の方だ。だってクリ◯タルだもの。

その力の一つを秘めた超強力なモノだ。なんたって世界を構成してるんだから。

…このクリ◯タルって力を失ってる状態なのか?取り戻した状態なのか?

失ってる状態だと火が暴走して世間が大変な事になってないよな?

でも今のところ大火事のニュースとかないから大丈夫なのか?

それともその世界だけなのか?だとすると…最低でもその世界に戻さないと永遠に火の力が暴走したまま?

これ持ってて良いのか?出来れば早く取りに来て欲しい。来たら即座に返すから。

それまでは大切に保管しておこう…と思う。


……これで12のモノが揃った?…ちょっと待て『白い貝殻の小さなイヤリング』に力があったらどうするんだ?

…借りないといけないのか?

だったら連絡があったのはラッキーだった?

何がなんだか分からなくなってきたぞ?

さっきから『?』クエスチョンマークしか使ってないぞ??

……落ち着こう。だいたい『引き寄せ』たからと言ってなんでもかんでも『力』があるとは限らない。

それに『力』があったとして魔法陣に使う為のモノなのか?

れいひは集まったモノを『本物』と言った。

だが『本物』とは何だろう?『本物』である必要性はあるのか?

これからも『引き寄せ』るかもしれない。

例えそれが『本物』であろうとなかろうと。

だが、それをどうすれば良い?

まだ落ち着いてない?…分かった!世界を構成するだろうモノを手にした事で勝手に気が動転してしまったんだ。

こんなのいつも手に入れてるじゃないか。

そう、いつもの事だ。いつもの事にいつものモノ……ダメだ。無理矢理押し込もうとしても落ち着かない。


…少し忘れよう。


ダメだ。忘れな草を嗅がされたようだ。


…そうだ。外に出よう。部屋に居て考えるから気持ちが閉じこもってしまうんだ。

犬も歩けば棒に当たる。良い悪い考えなく散歩しよう。

だが、またモノに当たったらと言う疑心暗鬼が生まれた時丁度交番の前に差し掛かった。

ふと交番の中を見ると若い巡査と目が合う。

あの『白い貝殻の小さなイヤリング』を届けた時対応してくれた人でもあり、持ち主が見つかったと連絡してくれた人だ。

その瞬間持ち主の事を思い出し交番に駆け込んだ。

「こんにちは。そう言えば尾根さんには会われましたか?」

巡査は聞いてくるが、それはこちらが聞きたい事だ。

一応会う約束をした事を伝えて彼女がどんな人だったかを尋ねる。

「ごく普通の女の人でしたよ。背も低くもなく、かと言って高くもなく普通で。髪もロングでもショートでもなく普通で。服装もありふれた感じの普通の格好で。本当に大人しい感じの普通のお嬢さんですね」

若い巡査はつい1、2日前に会った人を『普通』という言葉だけで終わらせようとしている。

でも『普通』だけじゃ分からない。…特徴はないのか?それとも警察官をもってして『普通』と言わしめる程『普通』の女性なのか?

ただ、大人しい感じなのは変わらないようで、取り敢えずギャップに驚く事はなさそうで安心した。

「いやぁ、でも本当に感謝してましたよ。まさか見つかるなんて思ってなかったんでしょうね…あっ!」

巡査の顔が変わる。

「美人だ!美人。美人ですよあの人!」

声が高くなり目が大きくなる。

なんだ?その『あとから美人』は?

その後も『普通』が『美人』に変換されたのか『美人』を連呼した。

「あなたも会えば分かりますよ」

巡査は笑顔で言った。

楽しみが増えたようで嬉しかった。

外に出て良かった。

『イヤリング』を届けて良かった。

気持ちも和らいだ。

彼女いやお嬢さんてどんな美人だろう?

山でくまさんに会ったりというか遭ったりしたんだろうか?

「お逃げなさい」と言われたのか?(さすがにそれはないか)

歌は歌ったのか。だったらララララじゃなく歌詞はあったのか?

…しまった。『もりのくまさん』前提のお嬢さんとして考えてしまっている。

こんなので会ったら完全に変な人として見られてしまう。

『普通』にしとこう。


だが、約束の日彼女と会う事はなかった。

電話もメールも無くこちらからの連絡にも返事も返信も来なかった。

何かあったんだろうか?

もし急に嫌になったにしても連絡の一つでもくれたら良いのに。

しつこくするのも何だし、かと言って警察に確認に行く程ではないし。

気にはなるが行き過ぎるとストーカーまがいになる。

実を言えば『イヤリング』の方も気掛かりだったが、あれが力あるモノだったとしても持ち主に返ったんだから良いか。

なあに、モノはまた『引き寄せ』るだろうから気にする事ないや。

ただ、お嬢さんには会ってみたかったけれど…。

気にしないよう気にしながら過ごしていこう…。

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