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社畜が目覚めたら将軍!? 史実(未来予知)で成り上がり、乱世を生き抜く  作者: 八月河
第十三回 遷都洛陽立憲法 高順改制開新天
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第十三回 遷都洛陽立憲法 高順改制開新天 一段

建安六年、春。


高順は本拠地を晋陽から鄴城へと移した。冀州の過半を制圧し、三州都督軍事として河北の覇者となった今、鄴城は地理的にも政治的にも最適な拠点だった。鄴城は河北の中心に位置し、黄河の水運を活かした物流の要衝でもある。袁紹が長年かけて築き上げたこの城は、城壁も高く、堀も深く、宮殿や官庁も整っていた。高順はこの鄴城を新たな本拠と定め、冀州の民心を慰撫し、周辺の山賊や袁紹の残党を訓練がてらに討伐させた。


鄴城の政庁では、賈詡と董昭が早速、冀州の統治機構の整備に取りかかっていた。高順は彼らに全権を委ね、自らは各地の視察に赴いた。鄴城の北には賊の残党がまだ潜伏しており、南には袁紹の敗残兵が山間部に逃げ込んで略奪を繰り返している。高順はこれらの賊徒を討伐する任務を、新たに麾下に加わった将軍たちの訓練も兼ねて実施した。張郃が遼東に派遣された後、冀州の軍事を預かるのは高覧と蔣義渠である。高順は彼らに命じて、各部隊を率いさせて賊徒の掃討に当たらせた。


「山賊討伐は、実戦の訓練に最適だ。新たに加わった兵たちに、我々の戦い方を教え込め。ただし、民を巻き込むな。賊徒と民は区別し、投降した者には寛大に接しろ。再び賊に戻らせないためには、生活の基盤を与えることが最も効果的だ」


高順の指示は的確だった。高覧と蔣義渠はそれぞれ五千の兵を率いて山間部に分け入り、賊徒の拠点を次々と制圧していった。投降した賊徒たちは、并州で成功を収めた屯田制に組み込まれ、元の賊徒とは思えぬほど規律正しく農耕に従事するようになった。冀州の民は、高順の統治が袁紹の重税と圧政に比べてはるかに公正であることを理解し始めていた。


ある日、高順は鄴城の城外に広がる農地を視察していた。かつて袁紹の時代には荒れ果てていた田畑が、今では整然と区画され、水路が張り巡らされている。農民たちは高順の姿を見ると、深々と頭を下げた。高順は馬を降り、一人の老農に声をかけた。


「今年の収穫はどうだ」


「は、はい。将軍様のおかげで、今年は久しぶりに腹いっぱい飯が食えそうです。袁紹様の頃は、税が重くて田畑を捨てる者も多かったのですが、今は違います。将軍様の税は公平で、役人たちも賄賂を取らなくなりました」


高順は静かに頷いた。法と秩序が根付きつつあることを、自分の目で確かめることが何よりも重要だった。


鄴城の統治が軌道に乗り始めた頃、高順は許昌へと向かった。朝廷から召集がかかったのである。表向きの議題は洛陽復興の進捗報告と、今後の方針についてだったが、高順はそれだけではない何かが動いていることを感じ取っていた。


許昌に到着した高順を待っていたのは、董承と伏完による曹操誅殺の陰謀だった。この陰謀は「衣帯の詔」と呼ばれ、董承が献帝から密かに授かった詔書を根拠に、曹操を討とうというものだった。計画はすでに最終段階に入っており、董承は同志たちと共に決行の機会を窺っていた。しかし高順の情報網はこの陰謀を察知し、賈詡が事前に詳細を掴んでいたのである。


「将軍、董承は長水校尉の种輯、議郎の呉碩、昭信将軍の呉子蘭を同志に引き入れ、さらに各地の宗室にも呼びかけています。決行は数日後。彼らは宮中で曹操を討つつもりです。しかしこれはあまりに無謀な計画です。董承の手勢だけでは、曹操の護衛部隊に勝てません。むしろ、曹操に彼らを誅殺する大義名分を与えるだけの結果に終わるでしょう」


高順は賈詡の報告を受け、即座に行動を起こした。彼は執金吾としての権限を行使し、許昌の警備を掌握すると共に、董承と伏完を拘束した。董承は激しく抵抗したが、高順の前には為す術もなかった。


「高将軍、貴様は曹操の手先か! これは天子の密詔だ! 逆らえば貴様も逆賊となるぞ!」


「董国丈、あなたは間違っている。この密詔が本物かどうかは問題ではない。あなたの行動が、許昌を血の海にする結果を招くことが問題なのだ。あなたの正義は、王允と同じ過ちを繰り返そうとしている」


高順は董承と伏完を軟禁し、曹操にこの陰謀の全容を伝えた。曹操は報告を受けると、即座に許昌の城門を閉じ、董承と伏完の一派を処刑しようとした。許昌の街は緊張に包まれ、人々は息を潜めて成り行きを見守った。曹操の怒りは激しく、董承の一族を根絶やしにしようとさえ考えていたのである。


しかし高順はこれを許さなかった。彼は許昌の城外に十万の兵を展開し、城門を封鎖した。十万の兵が整然と隊列を組み、その旗は風に翻って城壁を埋め尽くす。曹操は城壁の上からその光景を眺め、高順の意図を即座に理解した。城門を開かなければ、高順は本気で城を攻めるだろう。そしてそれは同時に、自分を「君側の奸」として除く大義名分を高順に与えることになる。


曹操はしばらく沈黙し、それから深く息を吐いた。


「城門を開けよ。奴(高順)の兵を入れる」


曹操の命令に、夏侯惇が驚いて反論した。


「丞相、高順は我々を攻めるつもりかもしれません。城門を開ければ、許昌は高順の手に落ちます」


「違う。高順は私を攻めるつもりはない。むしろ、私を守ろうとしているのだ。城門を開けなければ、あの男は本気で攻めてくる。そして私は、君側の奸として後世に名を残すことになる。それが高順の狙いだ。あの男はいつも、私に選択の余地を与えない」


城門が開かれると、高順は五万の兵を執金吾の権限で城内に引き入れた。これにより許昌の実権は完全に高順の手に渡った。曹操はもはや董承たちを勝手に処刑することはできなくなったのである。それどころか、曹操自身の身の安全すら、高順の掌中にあると言っても過言ではなかった。


驃騎将軍府に戻った高順を、蔡琰が待っていた。彼女は高順が十万の兵で許昌を囲んだと聞き、顔を青ざめさせていた。


「夫君、これはやり過ぎです。十万の兵で許昌を囲むなど、天下に何と言われるか」


高順は静かに首を振った。


「これでも足りぬくらいだ。もし私が動かなければ、曹操は董承と伏完を処刑し、その一族も皆殺しにしていただろう。そうなれば許昌は血の雨が降る。曹操の専横はさらに加速し、天子は彼を第二の董卓として恐れるようになる。私はその連鎖を断ち切らねばならなかった」


「しかし、夫君が十万の兵で許昌を囲んだこともまた、後世の人々は専横と呼ぶのではありませんか」


「私は董承たちを処刑しない。法に基づいて裁く。公開の裁判で証拠を示し、罪を明らかにする。曹操がやろうとしたのは、法を無視した私刑だ。私がやろうとしているのは、法に基づく裁きだ。この違いは、いずれ天下の人々が理解するだろう」


蔡琰はしばらく夫の顔を見つめていたが、やがて深く息を吐いた。


「夫君はいつもそうですね。誰よりも冷徹な計算をしながら、誰よりも大きな理想を描いている。私はただ、あなたが無事でいてくれればそれでいいのです」


「心配するな。私は死なない。死にたくないからこそ、法と秩序を作るのだ」


高順はそう言って、微かに笑った。彼はこの時、すでに次の一手を考えていた。董承と伏完を裁くだけでは足りない。この事件を契機に、朝廷の仕組みそのものを変えねばならない。立憲君主制の草案を具体化し、法による秩序を天下に示す。それが曹操を守り、天子を守り、そして民を守る唯一の道だった。


洛陽復興の第一段階が実現したという報せが届いたのは、それから数日後のことである。洛陽の城壁は修復され、宮殿の骨格もほぼ完成した。高順はこの機に乗じて、洛陽への遷都を進めることを決意した。洛陽は長安と許昌の中間に位置し、天下の中心にふさわしい地である。何より、董卓によって焼き払われたこの都を復興することは、漢室の復興を象徴する事業だった。


高順が洛陽復興に込めた構想は、単なる城壁の修復ではなかった。彼は洛陽の城壁を三段に分け、皇宮を内城、貴族や官僚の府邸を中城、士農工商の居住区画を外城と区分する壮大な計画を持っていた。これは単なる都市計画ではなく、身分や職業によって住居を分けることで、行政の効率を高め、防衛を強化し、衛生管理を徹底するための合理的な設計だった。内城には天子の宮殿と太廟、御史台などの官庁が置かれる。中城には三公九卿の府邸と学堂が配置され、外城には市場や工房、民の住宅が整然と区画される。高順はこの計画を上奏し、洛陽への帰還を進めた。


許昌の朝廷は、洛陽復興の進捗を聞いてざわめいた。洛陽はかつて漢帝国の都であり、董卓に焼かれて以来、廃墟と化していた。その洛陽が再び姿を現そうとしている。老臣たちの中には、洛陽が都だった頃を覚えている者も多く、彼らの心に希望の灯がともった。高順はこの機を逃さず、朝廷に洛陽復興の詳細な計画を提出した。それは単なる建築計画ではなく、法と秩序に基づく新しい国づくりの青写真だった。


許昌の丞相府で、高順は曹操と向かい合っていた。曹操の顔には疲労の色が濃く滲んでいる。董承の陰謀が発覚して以来、曹操は連日のように幕僚たちと対応を協議していたのである。


「孝父、お前のおかげで命拾いした。しかしお前は私に、董承たちを殺すなと言う。なぜだ。奴らは私を殺そうとしたのだぞ」


高順は曹操の目をまっすぐに見つめた。


「孟徳、彼らを殺せば、天子はお前を第二の董卓としか見なくなる。董承は天子の外戚だ。それを正当な裁判もなく処刑すれば、お前は『幼帝を欺き、孤児寡婦を脅して天下を取ろうとする奸臣』として後世に名を残すことになる」


曹操は高順の言葉に、わずかに眉を動かした。


「後世の評価だと。私はこの乱世を終わらせるために、必要なことをしてきた。辺譲の一族皆殺しもすべては天下を平定するためだ。その私が、後世の評価を気にすると思うか」


「気にするはずだ。お前は若い頃、洛陽の北部尉として五色の棒で権勢家の者たちを叩き、法の下での平等を貫こうとした。董卓を討つために決起したのも、漢室を守りたいという一心からだった。お前は決して最初から奸雄だったわけではない。理想を持った若者だった。そのお前が、なぜ今、後世の評価を気にしなくなったのだ」


曹操はしばらく沈黙した。高順の言葉は、彼の心の奥深くにしまい込んでいた何かを揺さぶっていた。


「孝父、お前は私に董卓の二の舞を演じるなと言う。しかし私は董卓ではない。私は漢室を守っている。天子を奉戴し、天下の秩序を回復しようとしている。それがなぜ董卓と同じになる」


「董卓も最初はそう言っていた。彼もまた、漢室を守るために少帝を廃し、献帝を立てたと言った。しかし彼は法を作らず、ただ武力で押さえつけた。その結果がどうなったかは、お前が誰よりもよく知っている。孟徳、お前は董卓とは違う。お前には法を作る力がある。正しい法を作り、それを守ることで、お前は董卓とは違う道を歩めるのだ」


翌日の御前会議は、かつてないほど緊迫した空気の中で開かれた。


劉虞、楊彪、孔融、蔡邕、王邑、段煨、曹操、高順らが代表として出席し、董承と伏完の処遇、洛陽復興、そして今後の朝廷のあり方について激論が交わされた。


まず董承と伏完の処遇について、曹操は「謀反は明らかであり、速やかに処刑すべき」と主張した。これに対し高順は、公開の裁判で証拠を示し、法に基づいて裁くべきだと反論した。


「処刑は容易い。しかし法に基づかぬ処刑は、新たな怨恨を生むだけだ。董承の一族を皆殺しにすれば、その血縁者たちは必ず復讐を考える。そうなれば、朝廷の安定は永遠に訪れない。王司徒の時と同じだ。彼は董卓を討った後、董卓の一族を皆殺しにし、それが涼州兵の反乱を招いた。同じ過ちを繰り返してはならない」


曹操はこれに反論しようとしたが、高順の言葉に込められた重みを感じ取り、口を閉ざした。高順は王允の過ちを目の当たりにした当事者であり、その言葉には説得力があった。


次に、高順は洛陽復興と遷都の計画を説明した。城壁を三段に分け、皇宮を内城、官僚府邸を中城、士農工商の居住区画を外城とする構想を語ると、出席者たちは興味深そうに耳を傾けた。


孔融が口を開いた。


「高将軍の構想は壮大です。しかし、これだけの大規模な工事を行うには莫大な財源が必要です。その財源はどこから」


「塩と鉄の専売益、そして冀州と并州の税収を充てます。すでに并州では製鉄と製塩で安定した収入を得ています。冀州でも同様の仕組みを整えつつあります。また洛陽の復興には、各地から志願者を募り、労賃を支払うことで民の生活を支えることもできます。これは単なる土木事業ではなく、民を富ませる政策でもあるのです」


楊彪がさらに問うた。


「洛陽に遷都すれば、許昌はどうなるのですか」


「許昌は引き続き、中原の要衝として機能させます。丞相府は当面、許昌に置いたままで良いでしょう。洛陽への遷都は段階的に進め、まずは皇宮と官庁の移転から始めます。天子が洛陽に戻られることで、漢室の復興が天下に示される。その象徴的な意味は計り知れません」


出席者たちは互いに顔を見合わせ、高順の提案に一定の理解を示した。


蔡邕が静かに口を開いた。彼はこれまで沈黙を守っていたが、ここで初めて発言したのである。


「高順、そなたの提案はよくわかった。しかし私には一つだけ懸念がある。そなたは儒教を否定しているのではないか、とな。学堂で法学を主とし、諸子百家を混ぜ込むというその方針は、儒教を軽んじていると受け取られかねない」


高順は蔡邕の目をまっすぐに見つめた。


「先生、私は儒教を否定しているのではありません。儒教の徳治主義は、為政者の修養として重要です。しかし徳だけに頼って国を治めることはできません。桓帝や霊帝の時代がそれを証明しています。だからこそ、法を主とし、儒を輔とし、諸子百家の知恵を混ぜ込む。それが最も現実的な統治のあり方だと信じています」


「法を主とし、儒を輔とする、か」


蔡邕はしばらく考え込んでいたが、やがて小さく頷いた。以前の論争で高順に敗れた彼は、もはや正面から反論することはなかったが、その目にはなおも憂慮の色が残っていた。


御前会議の後、高順は曹操と二人だけで丞相府の庭園に残った。


「孟徳、董承たちの処遇は、公開の裁判で決着をつける。お前はその裁判に口を出すな。それが、お前の身を守ることになる」


曹操は高順の言葉に、微かに笑った。


「お前はいつも私に選択の余地を与えない。十万の兵で城を囲み、私に城門を開けさせ、今度は公開の裁判で董承を裁けと言う。お前の掌の上で、私は踊らされているだけなのかもしれんな」


「違う。私はお前を踊らせているのではない。お前が自分で正しい道を選べるように、選択肢を用意しているだけだ。選ぶのは、いつだってお前自身だ」


曹操はしばらく沈黙し、それから深く息を吐いた。


「わかった。法に従おう。お前がそこまで言うなら、私はお前のその法とやらを信じてみる。ただし、一つだけ約束しろ。もしこの法が天下を救えなければ、その時は私のやり方で天下を取る」


「約束しよう。その時が来れば、私はお前を止めない。だが、その前にやるべきことがある。法と秩序を作り、天下に示す。それが終わるまでは、お前にも付き合ってもらう」


二人は杯を掲げ、静かに合わせた。かつて洛陽の廃墟で交わした約束が、今、法と秩序という具体的な形となって動き始めようとしている。

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