後日談4:その先へ続くもの
ルミナス王国、王城。
「……ついにですわね」
フィオナ王太子妃が、感慨深く呟いた。
「長かった……」
ユイが、しみじみと頷く。
「本当に長かったですわね」
クラリスも微笑む。
「ここまで来るのに、何回介入したかしら」
マリアが小声で言う。
「数えるのをやめました」
リディアが真顔で返す。
「正解ですわね」
女性陣、全員頷く。
今日は――
結婚式だった。
◇◆◇◆◇◆
静かな音楽。
柔らかな光。
集まったのは。
ルミナス王国の王族。
三国連盟の代表。
そして――
アルヴェリア王国の関係者たち。
かつて、対立していた者たちが。
同じ場所にいる。
それだけで。
この式の意味は、十分だった。
「……来た」
小さく、誰かが呟く。
扉が開く。
ゆっくりと。
姿を現したのは――
エリシアだった。
白のドレス。
過度な装飾はない。
だが。
誰よりも、凛としている。
「……綺麗」
ユイが、ぽつりと呟く。
その隣には。
ルーク。
いつもと変わらぬ落ち着いた佇まい。
だが。
ほんのわずかに、緊張している。
(珍しい)
そう思った者は、多かった。
ゆっくりと、歩み寄る。
二人の距離は。
もう、迷いのないものだった。
「……誓いますか」
静かな問い。
「はい」
ルークの声は、まっすぐだった。
「はい」
エリシアも、同じように。
「いかなる時も」
「支え合い」
「共に歩むことを」
「誓います」
短い言葉。
だが。
それは。
戦いも、政治も。
すべてを乗り越えた先の言葉だった。
◇◆◇◆◇◆
「……やっとだ」
カイルが、深く息を吐く。
「ええ」
ルークの友人が頷く。
「長かった」
「本当に」
一方で。
「良かったですわね」
フィオナが微笑む。
「うん……」
ユイは、少しだけ涙ぐんでいた。
「ちゃんと、幸せになってる」
「ええ」
クラリスが、優しく頷く。
「それが、一番ですわ」
◇◆◇◆◇◆
少しだけ、静かな場所。
「……騒がしいですわね」
エリシアが、微笑む。
「ええ」
ルークも頷く。
「ですが」
「嫌いではありません」
「同感です」
短い会話。
だが。
もう、距離はない。
「……」
少しの沈黙。
「……あの」
珍しく。
ルークが言葉を探す。
「はい?」
「今後のことですが」
「ええ」
「家庭と職務の両立について」
「……」
一瞬、エリシアが固まる。
「……その」
「具体的な計画を」
「……」
「立てた方がよろしいかと」
真顔だった。
「……ふふ」
エリシアが、思わず笑う。
「……?」
「いえ」
「あなたらしいと思いまして」
「……そうでしょうか」
「ええ」
一歩、近づく。
「では」
「一緒に考えましょう」
「……はい」
その距離は。
もう、最初とはまったく違っていた。
◇◆◇◆◇◆
◆◇◆◇◆◇
それから、しばらくして。
「……似てますわね」
クラリスが、静かに呟く。
「どっちに?」
ユイが聞く。
「両方に」
その視線の先。
庭園を、ちょこちょこと走る小さな影。
「待ってください!」
後ろから、少し慌てた声。
「走ると危ないですよ」
だが。
その声は、どこか楽しそうだった。
「元気だね……」
「ええ」
「将来が楽しみですわね」
誰かが、微笑む。
その子が。
どんな未来を選ぶのか。
どんな国を作るのか。
それは、まだ分からない。
だが。
少なくとも。
もう。
同じ過ちは、繰り返さない。
そう思えるだけのものが。
ここには、あった。
■終わりに
理想と現実。
ぶつかり。
壊れ。
それでも、繋ぎ直して。
辿り着いた先は。
特別なものではない。
ただ。
穏やかな日常と。
隣にいる人。
それだけ。
それこそが。
何よりも、尊い。
――完――
これにて、全て完結です。
本当にありがとうございました!
ここからは完全な余談なのですが、筆者の雑感です。
この話は、「理想と現実」「自由と規制」をテーマにした作品です。
耳触りのいいだけの理想と自由って、大丈夫?という考えかたです。
今回アルヴェリア王国であったような市場の規制を完全に撤廃し、自由な経済をしようとするとどうなるか。
AIでシミュレーションすると、待っているのは自由とは程遠いディストピアでした。
粗悪品の氾濫、資本の暴力による独占、騙すことが前提の情報の混乱、環境への影響の無視、企業による私的な司法・警察の成立など。「強いものが勝つ」というかえって前近代的なものとなってしまいます。
何が必要で、無くすとどうなるのか。
ぜひ、考えてみてください。




