序.目が覚めたら
婚約破棄物を…書きたいです!
「…知らない天井。」
某アニメの様な台詞を呟きなら、仰向けになった状態で手を伸ばす。
皆さん、こんにちは、こんばんは、はじめまして。つい先程前世を思い出したのが、こちらです。
“つい先程”までの私は、間違える事なくマリン・アクア・ベリル…ベリル家の公爵令嬢でした。
子供時代の記憶もバッチリ15年分。習い事で四苦八苦した記憶、それが嫌で逃げ出した記憶、バレてコッテリ両親と教育係に絞られた記憶、それを無視して繰り返し…いや、もうこれ以上言ってもお転婆だった事しか伝わらない。何はともあれ、私は間違えなくマリンだった。
…じゃあ今は?今も確かにマリンではある。そう…ではあるのだ。”つい先程“…相変わらずのお転婆で、走り回ってスカートの裾を踏ん付けた上に前のめりで頭部を床にぶつけた後、私の前世を思い出した。
ここより発展した、現代…と呼ばれる世界で、JKと言う職業に着いていた。サブカルチャー…アニメや漫画、ゲームが大好きな平凡…ゴホン、超楽しい趣味を持っていた。美人…いや、美少女だったに違いない。自分の姿、覚えてないけど。
やりたい事も山積みだった…が、突然の交通事故であえなく閉幕。車だけは絶対に許さない…絶対にだ。
とまぁ、分かりやすく言えばヲタクだったのだ。
自身の死に、未練がないと言えば嘘ではない。だって…まだ攻略してない、発売数日しか経ってないゲーム”暁の姫君は闇よに“がやりたかった。
このゲーム、恋愛シュミレーションゲーム…所謂、乙女ゲー。よくある”絵が綺麗“、”声優が豪華“、”物語が面白い“の3連打。まさに、神…神ゲーなのだ。このゲームについて話すならば、恐らく1時間では済まない…。
あーあ…悔しいなぁ…。メインキャラ4人に隠し1人…まだ、そんなにルート開拓してなかったなぁ…。殿下、宰相、騎士、幼馴染…隠しは誰だったのか…。
殿下ルートは素敵だったなぁ…。あの、卒業パーティで婚約破棄宣言からの婚約…よくあるパターンでも、胸キュン必死。それにあの、婚約破棄された令嬢の顔…グラフィック、仕事しすぎ。確か令嬢の名は…うん?
―緩く長い母譲りの綺麗な金髪。
―晴天の空の様な目。父譲りでやや鋭い。
―そして…名前は…
「…マリン…マリン・アクア・ベリル公爵令嬢…!?」
繋がった。繋がってしまった。
どうやら私は乙女ゲーの世界で、婚約破棄される…つまり悪役令嬢になった模様です。
…この後、絶望の悲鳴が屋敷内に響いた事は、言うまでもない。
一人称視点、楽しい!!