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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第5章】 転勤間近
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夏の終わりに(3)

 龍也たつやくんは持っていたカバンから、おもむろに何かを取り出す。


「お誕生日おめでとう」


 そう言って、彼はピンクのリボンがかけられた細長い包みを差し出した。


「わあ、ありがとう! 開けてもいい?」


 龍也くんは微笑みながら頷く。

 私はそおっと、そおっと綺麗な花柄の包装紙を破かないように慎重に開ける。


「わあ、可愛い! 素敵! でも先月もペアウォッチもらったばっかりだし……」


「それはそれ、これはこれ。お誕生日は特別なんだよ。海彩みいちゃんがこの世に生まれてきてくれた日なんだから。そのおかげでオレと出逢えた」


 照れくさそうに笑う彼を、本当に愛おしいと思った。


「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくね」


 プラチナの細めのチェーンの中央に、可愛いダイヤのトップがついたネックレス。

 さりげなくて上品なデザインなので、TPOを選ばない。


「気に入ってくれた?」


「うん、とっても。龍也くん、意外とセンスいいね」


「意外とってなんだよ」


 そう言って笑い合った。

 そう、2人で笑い合った。

 そして切なくなった。


 ああ、もうこんな風に笑い合ったり触れあったりする機会って、これから少なくなっちゃうんだな。


 私はつい言ってしまう。


「いよいよ明日だね」


「ああ」


「もう会えなくなるね」




 いつもに増して明るく振る舞う彼。私が少し寂しげに俯くと、「すぐ会えるから」と。


 500キロも離れているのにすぐ会えるなんて、ウソツキ。


「大型連休は勿論、月に1度は必ず会いに帰って来るから」


「出来ない約束はしない方がいいよ」


「……できるよ」


 凄く真剣に、目を見て優しくそう言ってくれる彼のことを、素直に信じられた。





 彼の右手が私のあごを少し上に向かせる。

 を細めた優しい顔が近づいてくる。

 ライトに照らされたその瞳に吸い込まれそうになり、そおっと瞳を閉じた。


 甘く切ない幸せな時間ときが流れてゆく。


 

 


 少し照れくさそうに笑う彼。

 私も恥ずかしくなって俯く。


 今日のことは決して忘れない。

 そう思えた瞬間。


 そしていよいよ明日を迎える。






 その後自宅近くの公園まで送ってもらい、「また明日」とそのまま別れた。


 足早に家まで歩き門を開けようと……。

 あれ? 取っ手になにか大きな袋がかけてある。


 なんだろう。


 おそるおそるその袋の中をのぞいてみると……。


 !


 

いよいよ龍也くんが千葉県に行ってしまう日が明日に迫った。

遠距離恋愛が始まる。


お読み下さりありがとうございます。


次話「遠距離恋愛のはじまり」から新章になります。


よろしくお願いします!

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