7月25日(水)星空祭 (ほしぞらまつり)ー1
今日は2人して有給休暇を取って、この辺りではテレビ中継もされるほどの大きなお祭り『星空祭』へ。
いつもは龍也くんの愛車、黒のSUVでお出かけするのだけど、今回は初めての電車デート。
駅前広場で待ち合わせして、電車を乗り継ぎ1時間。
やはり大きなお祭りだけあって、平日の昼間だというのに電車でさえもかなりの人混みだ。
どこに行くのもほとんど車っていう龍也くんには、この時間もちょっとした冒険気分のよう。
最寄りの駅で降車し、また人の波に乗って歩き進む。
「すっげぇよなぁ」
「なにが?」
「こんなに大勢の人、一体どっから集まってくるんだろう」
「そうだね。龍也くんは車が多いから珍しいでしょ」
「うん。他人と密着するなんて、エレベーターぐらいしかないからな」
「はぐれないように気を付けないとね」
そっと差しだした龍也くんの左手に右手を重ねた。
「これで大丈夫」
そう言って微笑む彼にまた高鳴る鼓動。
「それにしてもあっついよね~」
ドキドキを悟られたくなくて。
「ホントだよな~。日本の夏は湿度高すぎなんだよなぁ」
「その上、人が多すぎて」
「よけい蒸し蒸しするよな」
「浴衣で来なくてよかったよ」
「オレは海彩ちゃんの浴衣姿見たかったなぁ」
ふふ、浴衣を着てこようとも思ったのだけど、こんな真夏に真っ昼間からの電車で遠出。
はいムリ~。浴衣はね、案外暑いのよ。まあ、一応1人では着られるのだけどね。
またいつかね。
「暑いから、手はなそっか?」
「それはダメー」
なんて言いながらもっとぎゅっと握りしめてくる彼。
内心、ふふふと思いながらも悟られまいと。
「なんかお腹すいたね」
「あ、それオレのセリフ。さき越された」
「へっへっへ」
お祭り会場に向かう道中、商店街には店頭に屋台をだしているお店も多く、いい匂いでいっぱい。
あれもこれもと目移りする中、夏には珍しい1件のお店の前で立ち止まる。
2人は顔を見合わせニヤついて同時に言葉を放つ。
『はい、ここに決まり!』
クーラーの効いた店内で熱々の……。
考えるだけでもう美味しい。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「海彩ちゃんはなに頼む?」
「私は大根と厚揚げとたまご」
「じゃあオレは、牛すじと大根とはんぺんとたまご。あと生ビール中ジョッキで」
「えっ、ビール飲むの?」
「今日は車じゃないからね。飲むよ」
「じゃ、私はアップルジュースで」
「おでんにアップルジュースって」
「だって好きなんだもん」
「それ、オレのこと?」
「はあ? んなわけないでしょ。アップルジュースのこと」
「やっぱ言ってくれないんだぁ」
お読み下さりありがとうございました。
次話もよろしくお願いします!




