7月16日(月) なんですと!?
いきなりの言葉に少し動揺したけれど。
「結婚しよ」
「え?」
「結婚しよ」
「はあ?」
もう、暑いからやめてと肩にまわした腕をすり抜けた。
「えー」
少し大袈裟にがっかりした様子を醸し出す彼。
「もう、冗談はやめてよ。笑えなーい」
「冗談じゃないんだけどな」
『何を言うかということではなく、どう言うかが大事』って前にも言ったよね。
そんなにあっさりと大事なこと言われても。
それに、知り合ってまだ2ヶ月、付き合いだして1ヶ月。
まだそんなこと考えられないし、軽々しく言い過ぎ。
「あのね、まだそんな時期じゃないと思うよ」
「じゃあ、いつだったらいいの?」
「もしかして智ちゃんと恵子ちゃんの結婚話に影響されたの?」
「そういう訳じゃ……」
「はぁ、単純だね」
そう言って笑い飛ばしてやった。
龍也くんは少しふてくされていたけど、私はまだ結婚なんて考えられない。
まだ入社2年目。龍也くんが仕事を頑張りたいのと同じように、私だってもっと仕事を頑張りたい。
私は結婚したら仕事を辞めて家庭に入りたいと思っている。
だから、それまでは一生懸命仕事に打ち込みたい。あと何年かは解らないけれど。
そりゃあ、いつかは結婚したいと思っている。だけどそれは今じゃない。
それに龍也くんが運命のひとかどうかなんて、はっきり言ってまだ解らないし。
みんなはこの人が『運命のひと』って解るのかなぁ。
いつ、どこで、どういうときに、何を以て判断するのだろう。
いずれにせよ、私にそのことが解るのは、まだずっと先のことだと思う。
その後はいつものようにふざけ合ったり、冗談なんかを言いながらお土産を手にとってみたり、喉が渇いたと言ってはお茶を飲んだり、何気ない時間を過ごし、そろそろ帰る時間が近づいてきた。
龍也くんは、帰りに少し寄りたいところがあるという。
もう一度2人で見たいって。
ドライブウェイコースをゆっくりと下って行く。
少しして小高い丘にある展望公園の駐車場にSUVを止め、2人で下界を見下ろせる公園へ。
あの、1ヶ月前に龍也くんに告白された場所だ。
その時と同じようにちょうど黄昏が辺りを包み込んでいる。そこから少し先にある海に、大きく見えるオレンジが、今まさに沈もうとしている。
2人して柵にもたれながら眺める入り日。
静寂の時間。
「今はまだ時期じゃなくても……でもいつか結婚したい」
その言葉には応えずに、私はただ静思していた。
彼は照れを隠すためにああいう言い方をしたのは解っている。そして今度は真剣に言ってくれたのも嬉しい。
だけど、今すぐに返事をすることができなかった。龍也くんのことは大好きなので、いつかそうなれればいいなと心の内では思いながら。
今から1ヶ月前の6月のある日。
海の見える夕陽の綺麗な展望公園で、龍也くんからの告白を受けた。
それから付き合うことになった私達。
6月は雨が多い。あの日も朝は雨が降っていたのに、夕方にはあんなに綺麗な夕陽がみられたなんて。
それから私達はなんとなく夕陽を見るのが好きになった。
そして今日。薄暮の時間、私の中で何かが少し変わった気がする。
お読み下さりありがとうございました。
次話「7月21日(土)行き先」もよろしくお願いします。




