~八里霧中~ 情報(森林官と近隣諸国について)
「え?」
と、思った。
何を目の前で言っているんだろうって。
ただ、ルネさん自身からもく口元に
「なら、こっちの口の動きもよぉく見て」
と、口元に指を添える。
どうでもいいけど、なんか妙に近いなぁ。
にしても、確かによくよくみてみると言葉と口の動きが微妙に違う。
メガネを直してよく見て、さらにいくつか言葉を重ねるルネさんの口もとをみて。
うん、確かによく見てると台詞と口を開く音が確かにあっていない。「お」が「あ」の口調になっていたりね。
「確かに」
「そう、気がついたのはあって顔を近づけた時だがな」
あ、床ドンのときか。
にしても、随分と観察眼があること。
そのことをいうと
「これでも森林官を勤めているからね」
理由がそれってよくわからんが。
でも、怪訝な顔をする自分に気がついたか微笑んで理由を話してくれた。
「森林官というのは・・・」
森林官の仕事についてゆっくりと説明してくれた。
というよりも、いい感じにいろんなことを教えてくれて助かるわぁ。
さて、そもそもこの場所はフィルニティース大陸の中にある国家でエイルという王国とガラセンナという王国の間の国境地帯でよく小競り合いが起きるところだそうな。
森林意外にも近くに鉄や銅といった金属の鉱脈がいくつか点在している。
また、別にこの世界にある元素石の鉱脈も離れたところにあり、それらの利権から争いが頻繁に両国家間の間で起こるのだそうだ。
どっちもそれら鉱脈を得られたら莫大な富とそれに伴う資材と軍備が整うからそれに輪をかけて小競り合いが起こりやすい。
とはいえ、ただ、頻繁に起こるといっても、鉱脈を掘る人手は必要であり、それがために、村の保全は必須。
そんなときにそれらの村の安全保障をするために森林官というものがあるそうな。
基本的には村人の安全優先の権限のためその権能は相当大きなもので場合によっては王への直言もゆるされている。
ただ、それだけにかなりの激務であるのは否めないそうだ。
平たく列挙すると、
全村人の安全と治安維持、食料調達、勝敗において領土の結果の差配に村々への移住者の獲得などなど
なんか外交特権と警察機能を備えているということで、これ、一人で収まる仕事なの?って思うが実際には領土の差配以外においてはそれぞれの村に委託して村長からの書類をもって決裁するという形になっている。
だからといって不正が行われる可能性もあるし、何よりも近隣への信頼が第一であるので多く巡回して回っているそうだ。
そのため、移動距離もあることで自衛と単純に移動の長さから強いものが自然と選出されるそうだ。
ちなみにルネさんは今期で六年目の終わりだそうな。
任期は基本的に三年だが村人や領主からの要請があれば村々の投票によって任期継続となり、一年毎の更新による投票で最長プラス三年まで務めることが可能だそうな。
まぁ、目の前のスペックからして・・・・
イケメンで強くて優しくて、仕事もバリバリこなせるならそりゃ再選もしやすいだろうな。
そう思ったが、どうもこの仕事、激務だけになり手はいないそうな。
基本的に置かれる理由も戦時下の民衆の安全であるだけに自身の命が惜しければそりゃ、できないわな。
ヘタをすれば死んでしまう可能性もあるわけだし。
もっともその分身入りもあるようで、両国家からの給金ということで莫大な、とまではいかなくてもそれなりに多い稼ぎが得られ、場合によってはその職務能力から勤めていたどちらかの国で外交官なり近衛衛士になれたりするそうだ。一発逆転的なことを望むならそれでもいいかもだが、その分の能力がないとまず無理である。
外交官はともかく前まで仮にも敵国からも給金を得ていたものを近衛衛士にまで取り立てるのはどうなんだろうと思ったがその辺は、実際に王が森林官を選出するということで、最低でも二度、森林官に着任したときと退任したときは王に見える機会がある。能力の高いものであるのは疑いようのないことなのでその際に王から才を認められる率がひどく高く、実際に引き抜きによる合戦にまで発展しそうになることもあったとか。
ま、『しそう』ってことだからそのときの森林官が止めに入ったんだろうなぼそっとしたらルネさんがふっ、と笑ったように思えた。
ともあれ、そんなわけで現在の場所に関しては文字上はね。
で、そこまで説明し終わったところで、
「というわけだが、さて、今度はこちらから聞きたいのだがそもそもラス殿は私たちの言語はどういうふうに聞こえるのだ?」
と聞かれた。
うん、そりゃ音声と口があってないと違和感半端ないものね。
「えーっと、日本語なんだけども、わかる?」
「”ニホンゴ”?公用語の”ルイナ公国語”ではないのか?」
あー、やはし、知らん言語形態きましたわ。
はぁ・・・そりゃ異世界に来たんだからそこでそのまま日本語が使われているわけはないだろうな。
文字についてきいてみても胸ポケットからメモ帳と黒い細い炭みたいなものをとりだしてさらさらっと書いてみる。
アルファベットにみえないこともないけど、筆記体だからか?細長いのたくった一本線みたいでわからない。
無論、書かれた言語も何を意味しているのさっぱりだ。
とはいえ、この文字に即した言葉が使われているとなると当然日本語というわけではない。
日本語の特性上一音一音文字にするというわけだからこういう筆記体に関しては混ざる形であるのでいわば英語のような違いがあるのだろう。
ちなみにルイナ公国語というのは大陸公用語の一つで主に南部諸王国公国群で使われている言語だそうだ。
ルイナ公国はエイル王国のこちら側から見たら逆隣に位置する小さな国だが歴史は古く、議長国として永世中立を貫いているとのこと。
あっちの世界の永世中立国みたいなものかもしれない。
そのため争いとは無縁ながらも入るためには空よりも高い難しい申請試験が必要であるとのこと。
また、そこに攻め入ってはならないという明文化された国家条例案もありかつ、攻め入った場合の潜在的な不文律まで用意されている。
ある意味恐ろしい国かもしれない。
あっちの世界の永世中立国だって、元は傭兵国家だったわけだし、そもそも現在でも有事の際は焦土作戦も辞さないという国家意思を表明しているところのだしね。
まぁ、そんなわけで、
私、異世界言語の副音声化をゲットしました。