~九里霧中~ 言語確認と霧
副音声化とはいえ、別に音が二重にきこえるとかそういうのではなく、もっと、高性能で、ちゃんと日本語のみでこっちにきこえてきているから聞き取りやすい。
これが一つの異能であるには違いない。
今のところ、『ルイナ公国語』というのはこうして日本語に直せているが、ほかの言語がどうなのかはわからない。
一応、聞いてみようと思い、尋ねると、一瞬、恐ろしく怪訝な顔をされたが、何かを思いついたのか次いで微笑を浮かべて、「では、挨拶と簡単な言葉でいってみようかな」
<よ、おはよう。よくもこんな寒いのに薄着でいられるな>
・・・・・
なんか、言葉がでたが、うん、確かに、日本語に聞こえる。
ちゃんと、ほかの言語なのかな?
自分の反応を見て、さらに言葉を続ける。
[こんにちは、森からきたということだが出身地の名は?]{こんばんは、歳はいくつだ?}《よぅ、子連れだが母親はいないのか?》【拝啓、食べ物はどうだ?】・・・・・
な、なんか質問がいっぱい。
それに、挨拶の言葉を織り交ぜてくる。
多分、一つ一つそうやって、言葉を変えているということの目印としていれてくれているのだろうが、うん、どこの言語もどう聞いても日本語にしか聞こえない。
とりあえず、それらの質問に一つ一つ答えていく。
にしても、一体いくつあるんだ?
十個ほど挨拶のことばが出たあたりで、「も、もう、結構です」と言って質問をきってもらった。
にしても、本当に多種の言語が出てきているんだろうな。
「じゃあ、これは?」
ルネさんが何を思いついたのかぽんと手を打った。
「la trail ella hin」
「?!」
目を向いて驚いた。え?一体何を言ってるの?アルファベットっぽい言語なんだろうけども、でも、何を言ってるのかわからない。
イタリア語?ロシア語?って、どこの言葉も私にはわかんないよぉ。
正直に、何をいっていたのか聞くと
「ふむ、では意味が抽象的なものかこちらの意図しない言葉はわからないということか」
言われて、さっき言ってくれた言葉はこのあたり一般で使われる、おまじないの言葉だとのこと。
意味としてはどうも「旅の無事」とか「幸運を」とかそんなところ。
とはいえ、本当はどういう意味なのかはルネさん本人からはわからないとのこと。
ただ、このあたりの地方ではよく使われる言葉であるとのこと。
まぁ、あれかな。ドイツとかでよく使われる「toi toi toi」とか歌とかにある「ソーランソーラン」とかそういうのかな。
意味はまぁ、あれどもおまじないという感じはそのままの言葉のままということになるのか・・・・・
うん、とはいえ、けっこうわかったことは、さっきの質問とかどれも全部違う言葉を使っていたが、どれも日本語になって聞こえること。
それと、こっちからの言葉はその質問の言葉から、変わっていくのかな、と思ったがあくまでもルイナ公国語でのみであった。
異世界言語がわかるからその全てがわかる、というのはわかるもののしゃべれる言葉はルイナ公国語のみということか。
あと、質問については一つ一つ答えていったが、やはり、どうにもね、答えづらいところもありそういう答えは「すみません」と謝った。
追求的なことは何も言わず、ルネさんは「そうか」と間をあけて質問してくれたけどもね。
うん、でも、やっぱりいい人であることには違いない。
隣り合わせで話し合っているが、人の心にずかずか入り込まずやんわりと聞く。
こうして会話を重ねるごとに安堵感もでる。
なんか友人になれそ。
こう思うのはこの世界に知人の一人もいない状況であるだけに、知る人をほしがっているのかもしれないけども、それでもこうしてこういう優しい人に出会えたことは僥倖だなって。
あっちはどう思っているかな?
ルネさんのこともいくつか聞いてみたいものだ。
とはいえ、おっと、ちびがぐずりそう。
そういえばずっと抱っこしてたっけ。
おろそうにもこの家靴のまま入るので土足だし、囲いのない布団の上におくのも危なそうだったのでずっと抱っこしてた。
もうずりずりと移動もできるわけだしね。高速ハイハイはまだだけど。
「おっと、寝た子を起こしそうだな。すまない、ではまたあすにでも仕事についてを話すか」
と、にこにこしつつ部屋を出て行った。
その途端、ヒィロちゃんがぐずってきた。
「あー、あー、ごめんね。にしても、まぁ、今後けっこうどうにかなり・・・・」
あやしつつ、抱っこしているのを降ろし、おむつを見ようとズボンを脱がそうとした。
「ああぎゅううぅぅ!!!」
あー、泣かれた。
起きたあと、おむつ変えると必ず泣いちゃうし、機嫌よくないもんだなぁ。
まぁ、起きた直後に脱がされたらそりゃそうかもだけど。
先だって、この部屋の中にてベッドの頭のところに布のおむつと離乳食があったから、どれも万全だね。
ちなみに離乳食は見たらじゃがいもを潰したやつだった。
冷めてはいてもだいじょうぶでしょうね。
もしダメなら少しお湯をもらってゆるくはなるけども温められるようにすればいいかな。
さて、おむつを開けて確認確認。
・・・・・・あれ?
おむつ、濡れてない。
そういえば今日、まったくおむつ替えてないけども、あれ?全然出てないってこと?
ちょっと頭を触る。
うん、熱はない。
でもなんで?
さっと、おむつを閉じてズボンを履かせようとしたら
「ああああーん、まぁああ!!!」
あ、ちょっと時間たっちゃたものね、ごめんねごめんね、すぐ替えますからねぇ・・・・
って!
ちょ、また、輪郭がぼやけてきましたけど?
「うぎゃあああぁぁぁ!!」
泣きが強くなる、その瞬間、部屋の中にヒィロちゃんを中心に靄が立ち始めて部屋の中なのに視界が奪われていった。
慌てて、抱っこひものないままヒィロを抱き上げて、部屋の中を見回した。
それに伴って、ヒィロちゃんの輪郭がぼやけていく。
これって昼のときの・・・・
と、そこまで考えてぴんと思い当たった。先だって、ルネさんと対峙したときも不自然な霧であったし、これはひょっとして、要するに・・・・・
ヒィロちゃんが原因だったの?
もしかして、泣くと霧が発生するとか。
あ、でも、多少のぐずりでは変化がなかったから大きく激しくなったらってことなのかも。
あやしつつ考えるとそうなのかもしれない。
とりあえず、泣き止ませないと・・・・おむつではないからご飯かそれとも、単純に下ろされたからか・・・・・
少なくともこんな異常事態、ルネさんに見られるわけには。
「ああ・・・わかったと思うが、ヒィロちゃんのご飯と布おむつは―――」
ルネさんの声が近づいてくる。
あー、さっき出てそんなにせずちびが泣いたから引き返して改めていいにきてくれたのか。
心遣いはありがたいけど、今はちょっと見られたくは・・・
「ベッドの上にあるから・・・ってなんだこれは?!」
あっさりと扉があいて、どうもルネさんが焦ってる声がした。
部屋、狭いだけにあっという間に視界が乳白色になってしまった。
そんなのを見たら普通、そうだよね、びっくりするよね。
「火事か?どうした、なにがあった?!」
あー、どうしましょ、この状況。
とりあえず、泣き止んで、ひろちゃん・・・・・




