第15話 私はピーマンが嫌いだった・・・・・・みたい
――バタン
自室に到着し、扉を閉めると真っすぐ部屋の中央に向かう。
ドサッ!
私は勢いよく、カウチソファに腰かけた。
「あ~美味しかった! 満足、満足」
出来ればデザートが欲しかったけど、そこは我慢。
これ以上不機嫌そうな夫と顔を突き合わせているのも疲れるし。
「荷造りは全て終わっているし……馬車の手配は夫がしてくれる、と」
でも本当に用意してくれるのだろうか?
実は明日になって夫が
「フハハハハッ! 誰がお前のような奴に荷馬車を用意すると思う!? 百年早いわ!」
なんて言ってきたらどうしよう?
(まぁ、それはないわね。だって夫は一日でも早く私に出て行って欲しいだろうから)
「他に何か準備することあったかな……?」
ぐるりと周囲を見渡し、真っ白なライティングデスクが目に止まった。
「あ、そういえば引き出しには日記があったっけ」
ソファから降りるとライティングデスクに向かいガラッと引き出しを開ける。
中には日記帳が収められている。
宝物のように大切に取り出すと、深呼吸した。
「ふ~……緊張する……何と言っても、この日記に私の全ての手掛かりがあるんだからね。では……」
緊張しながら早速表紙をめくって一ページ目を開いた――
〇月×日
今日から日記をつけようと思うの。
毎晩かかさず書くわ。
頑張らなくちゃ。
この日の日記はここで終わっている。
「……え? これだけ? まぁ、日記の初日だから所信表明的なもので終わってるのかな? なら、次の頁! 」
ペラリ
〇月×日
今日も、あの人と一緒に食事が出来なかった。
たまには一緒に食事がしたいのに、いつも一人はつまらないわ。
それにしたって、どうしてピーマンを毎食出してくるの?
私はあれ程ピーマンが嫌いだって言ってるのに!
今度ピーマンを出してきたら、運んできた使用人の頭にぶちまけてやるんだから!
日記はそこで終わっている。
「……え? これだけ?」
ぺらぺらと頁をめくってみても全くの白紙。
日記を両手に持ってバラバラバラッと一気に流し見しても白紙、白紙。
「……信じられない! これじゃ、三日坊主というより二日坊主……ううん、極端に一日の文字数も少ないから一日坊に近いじゃない!」
日記を閉じると引き出しに入れて、パタンとしまう。
「何の参考にもならなかった……でも収穫はあったか。過去の私は長続きしない性格で、夫とは食事すら一緒に食べられず、ピーマンが大嫌いだったということが」
「あ」
そこで思わず首を傾げる。
「……変ね? 私、ピーマンは大好きだけど……記憶喪失で何もかも忘れて、嗜好が変わったのかな? それに、どうして今夜は私と一緒に食事をしたのだろう?」
う~ん……。
「ま、別にいいか」
再びソファに戻ると腰かける。
このソファ、座り心地がいいんだよね~。
「荷馬車の手配は問題ないとして、後はこの荷物をどうやって一度に積み込むかなのよね~? カートがあればいいのに。……ん?」
今私、何言った?
「カートって何?」
駄目だ、一瞬思い浮かんだ言葉が完全に消え失せている。
腕組みしてウンウン唸っていたとき。
――コンコンコンコン!
扉が激しく連打された――
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