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プロローグ
カチコチカチコチ……
静かな書斎に時を刻む音がやけに大きく聞こえる。
眼前には、立派な書斎机に向かう初対面の夫。
私に怒りの眼差しを向けている。
「……毒を飲んだそうだな?」
「はい、そうです」
多分ね。
でも身に覚えが無いけれど。
「いい加減にしろ!!」
バンッ!
夫らしき人物が勢いよく机を叩いた。
その拍子に書類がふわりと舞ってハラハラと床に数枚落ちる。
「毎回毎回騒ぎを起こして、どれだけ迷惑を掛ければ気が済む!? もうお前にはうんざりだ!」
静かな書斎に響き渡る怒声。
そう……使用人だけでなく、やっぱりこの男性も私を嫌っているのね?
だったら返事はただ一つ。
「はい、分かりました。なら出ていきますね?」
満面の笑みでうなずいた。
「……は?」
あまりに予想外すぎたのか、夫らしき人物の目が点になる。
「今までお世話になりました。それでは、これで失礼いたします」
背中を向けると、私はためらうことなく書斎を後にした。
夫にも、この屋敷にも微塵も未練はない。
だって……私、ここがどこだかそもそも覚えてないんだから――!
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