第1話 私、誰だっけ
「う~ん……ま、眩しい……」
太陽の日差しが瞼に当たり、寝返りを打つと私はゆっくり目を開けた。
「は?」
最初に目に飛び込んできたのは、ベッドの四隅から吊り下げられたピンク色のレースカーテン。
しかもフリル付き。
「カーテン……? 何でベッドにカーテンが……って、え!?」
天井を見上げて思わず飛び起きる。
私は、お伽話に出てくるような天蓋付きのベッドで眠っていたのだ。
「こ、これは一体……?」
まだ夢を見ているのだろうか?
……夢?
そもそも、私何か夢見てたっけ……?
少しの間、ぼんやりと天井を見つめてみたものの、何も考えは浮かばない。
ハッキリと眠気だけが覚めてしまっている。
「……とりあえず起きよう」
ゴージャスな羽毛布団をめくって身体を起こし、改めてレースカーテン越しに部屋を見渡す。
――広い。とにかく広い部屋だった。
高級感漂うドレッサーに、おしゃれなソファセット。
その他もろもろの調度品が、はるか遠くに設置されている。
「スイートルーム……?」
いつの間に私は高級ホテルに宿泊していたのだろう?
いや、それ以前に――
「……私の記憶、どこいった?」
恐ろしいことに、自分の名前すら全く思い出せない。
そこでようやく、心臓がドクンと嫌な音を立て始めた。
「落ち着かないと……そうだ! 鏡で顔を見れば、何か思い出せるかも!」
レースカーテンをめくり、ベッドから足を下ろす。
「え~と、何か履く物はっと……あ、あった」
ベッドのそばには、なぜかホテル並みに真っ白いスリッパが綺麗に揃えられていた。
早速それを履いて、はるか遠くに見えるドレッサーに向かって歩き出す――
が、途中でぴたりと足を止めた。
「え?」
ドレッサーの大きな鏡に映っているのは、真っ白なネグリジェを着た長いブロンドヘアーの見知らぬ女性。
「あれ……私?」
試しに右手を挙げてみると、鏡のなかの女性も同じように右手を挙げる。
「……嘘でしょ!?」
慌ててドレッサーに駆け寄り、息を切らせながら鏡を凝視する。
「私ってブロンドだったっけ? こんなに髪長かった? ていうか、紫の瞳じゃなかった気もするし……」
どうにも違和感しか抱けない。
「本当に私かなぁ……?」
そう思うと、自分の声すら別人のように聞こえてくる。
「……まあ、美人だからいっか」
そこはちょっと得した気分になりつつ、首をかしげた。
「随分若く見えるけど、幾つぐらいなんだろう? 二十歳前後かなぁ……?」
何だか若返った気がしないでもない。
そんな呑気なことを考えていたとき。
「お、奥様!?」
甲高い女性の悲鳴のような声が、だだっ広い部屋に盛大に響き渡った――
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