001 宙端 カヲルコ
「あのッ、カヲルコさん、や、やっぱり、パンツも脱がなきゃダメですか……?」
モジモジしながら、紗良葉が尋ねてくる。青い瞳、金髪の少女。
どこか高貴な顔立ちは、「美少女」という表現すら足りないくらい、整っていた。
首の下に、左腕を横切らせたポーズ。胸を隠しているのだ。まるで、西洋画の裸婦モデルのようであった。
腰には、レースに縁取られた青いショーツ。身に着けた、最後の一枚である。
なだらかな肩、すらりとした脚。発育しかけた、雪のような半裸。
その美しい姿を前にして、カヲルコの目もチカチカする。
(いつの間に、もう十四歳になられたのか。そりゃ恥ずかしいよね……)
同じ女性として、気持ちはよく分かる。
ここは、深い地下の小部屋。いかつい機械類に、囲まれた研究室。
女同士、二人きり。向かい合って、立っている。
金髪少女を見下ろすのは、白衣姿の若い女性。結んだ黒髪。
氏名は、宙端 カヲルコ。医師・科学者であり、紗良葉の育ての親でもあった。
「申しわけないです、姫様」
カヲルコが謝罪すると、即、
「名前で呼んでください」
リンッと、声がやわらかに響く。
ここは、紗良葉のこだわり。こんな状況でも、それはそれ、らしい。
カヲルコの厚い唇を、フッと、くぐり抜ける笑み。
「失礼しました、紗良葉さん」
会釈。紗良葉のほほも、ゆるんだ。
厳密には、「紗・良・葉」も、当て字である。本来は、外国人名。ヨーロッパ系で、正確な発音は「スァラッハ」が近い。
続けて、質問に答える。
「下着を履いたままでも、まあ大丈夫かもしれないのですが、コールドスリープですから、やはり、何も着けない方が安全かと」
カヲルコの説明に、
「ん。そっかー……」
早くも納得したのか、うつむいた紗良葉は、潔く、右手の指をショーツの腰ゴムに突っ込んだ。ダメもとで、一応、聞いてみただけということか。
紗良葉は前かがみになり、胸は隠したまま、片手で、ブルーのショーツを、膝へ下げおろす。スルリと、一気に。
へその下、脚のつけ根が露出する。
思わず、カヲルコは顔をそむけ、
「ごめんなさい。いくら女同士だからって、抵抗がありますよね。もう、あんまり見ないようにしますから、脱いだら、そのまま、冬眠カプセルにお入りください。準備が出来たら、声をかけていただければ」
しゃがんだ紗良葉が、脱いだ下着を足首から抜き取りつつ、首を横に振った。
立ち上がって、
「いいえ。カヲルコさんは、この分野の権威ですので。専門家として、見るべき所は、ちゃんと見てください。次、私が目覚めるのは、五十年後です。何か、見落としがあったら大変ですから」




