31 その後の二人 ザーラとレイモンド
「いい加減にしてください!私は大丈夫だと何度言えば分かってくれるのですか!」
「それは分かってる!僕が治療したからね!でも婚約者を心配するのは当たり前だろ?」
今私の後ろを金魚の糞のように付いてくるのは私の婚約者で、サディル様専属医師の
「レイモンド、何をしているんだ?」
「・・サンか」
レイモンド・ケルド子爵。
今度私と結婚する事で伯爵へと叙爵される予定だ。
(フォンド伯爵が返上したから伯爵位が余っているからと)
「サンからも言ってくれ!もう少し休めと。ケガが治ったからと言っても心の傷はまだ治っていないはずだから!」
「ですから私にとっての薬はフローラ様のお世話をする事です!それで無くても貴方様と結婚したらお世話が出来なくなるのですから!」
「僕との結婚・・」
レイはこの言葉を言うと思考回路が遮断されるのか動きが止まる。
私はその隙を縫って急いでフローラ様の元へ走った。
そんな私たちを呆れ顔で眺めているのはサディル様とウィルだ。私はレイを二人に任せてその場から去る。
レイが私の事を心配して言ってくれているのは分かっている。でもね、正直結婚せずフローラ様のお側でずっとお仕えしたいとも思っている。
私にとってフローラ様はすでに生涯を捧げるに値する主人なのだ。
「あらザーラ?もう休んで無くて良いの?」
「はいレナさん、充分お休みをいただきましたから。フローラ様はまだ・・」
キャロルとセリルの元へ出掛けた事は聞いていたし、そろそろ戻られる頃だと思ってレイを振り切って来たのに。
それに・・
「フローラ様の寝巻き?」
「ええ、ファウナから伝言でフローラ様が体調を崩されたと」
私はレナさんからフローラ様のことを聞くと急いでベッドの準備を手伝った。
フローラ様も体調は万全では無いのに出掛けたのには意味がある。そして何かを聞き体調を崩されたのだろう・・
「ザーラ、サディル様はフローラ様の体調を知っているから馬車が到着したらこちらへお連れするようにお伝えしてね。間違っても」
「サディル様のご寝室へ足を向けないよう注意します」
レナさんは笑いながら 頼みましたよ と言って寝具を整えた。
レナさんはサディル様がフローラ様に付かせた、絶対的存在の侍女だ。私もレナさんのようにお仕えしたかった。
「いえまだ諦めてはいないわ。結婚してもフローラ様のお側にいられる、私にしか出来ない事があるわ!」
そう心に決めた私は急いでサディル様の元へと戻った。
「それで?ザーラに邪険にされても付き纏っていたのか?」
「ああ、正直ザーラの心にはフローラ様しか無い!俺がどれだけ言葉を伝えても、物をプレゼントしてもだ。いや、命を捧げられる主人が出来たことは嬉しい。俺もそうだからな。でもやはり主人と妻は違う」
「まだ婚約者だけどな」
「もう妻と同じだ!何なら今すぐにでも妻にしても良いくらいだ!」
「・・お前、こんなキャラだったか?」
俺の言葉にウィルとフィンが突っ込んでいるがそんなのは関係ない!確かに今まではこんな大きな事件もなかったし、ケガもなかった。
元気な彼女を見るたびにあの時、ウィルからグッタリとしたザーラを受けとった時の喪失感が甦る。
恐ろしかった。
目を覚さないんじゃないかと・・
「レイモンドの気持ちは分かるが結婚式を挙げたら別の役割があるだろう?それまでは好きにさせてはどうだ?」
「・・・」
「そのほうがフローラも喜ぶと思うし」
サンの言葉に思わずジト目で見てしまう。
自分だってフローラがザーラと同じ目に遭ったのだから、俺の気持ちは分かるはずなのに・・
そんな俺の気持ちが通じたのかサンは会話を変えてきた。
「フローラとあの女の会話をファウナを通して聞いたが、やはり黒幕がいた」
「全部吐いたのか?」
サンの言葉にウィルが反応した。
俺も姿勢を正しサンの言葉に耳を傾ける。
「思った通りの人物だったよ。まぁ結婚式のために王都へ向かうからな、片付けるにもちょうど良い」
「そうか・・だがまたフローラを危険な目に合わせてしまうな」
俺もフィンも不安になった。
どうにも我が一族は王都にいる貴族たちに嫌われてしまう。
それも仕方がない、王が・・王家が実はブラッド一族だと知らないから、特別扱いをされているブラッド公爵家が気に入らないのだ。
だからと言ってフローラの命を狙われてはたまった物ではない。
サンが本気を出したら止める者は公爵しかいない。が、フローラの血を取り入れたサンの魔力はさらに上がりもしかしたら公爵でさえも止める事は出来ないかもしれない・・
「フローラには指一本触れさせはしないよ」
サンが言うなら間違いないだろう。
ならば俺たちは俺たちが出来ることをするだけだ。
「いつ王都へ?」
フィンが伺うとサンは少し考えるたあと
「まずはレイモンド、先にこちらで式を挙げるんだ」
「「 えっ? 」」
ウィルと俺の声がかぶる。
フィンも なぜ? と不思議そうな顔をしていた。
そんな俺たちの様子を見てサンは笑いながら
「王宮では女性だけのお茶会が開かれる。これには侍女は参加できないんだ」
サンの言葉にウィルとフィンは更に頭を傾ける。が、私はサンが何を言いたいのかが分かった。
「気付いたか?レイモンド。お前たちが結婚したら父上はお前に伯爵位を授けるだろう。そうしたらザーラは伯爵夫人だ」
「なるほど、フローラと共にお茶会に参加出来るって事か」
サンは頷き
「それに王宮にはレイラもいるからな」
レイラはレナの姪でミィナの娘だ。彼女の能力が有ればいざとなった時フローラを守れる・・
「良し!!直ぐに式を挙げる!サンの命令だからな!ザーラも断れないな!ウィル行くぞ!!」
俺はウィルを捕まえるとサンの執務室から飛び出した。
まずはこの事をザーラに話し、俺の両親と彼女の両親の元へ挨拶に行かないと・・
「おい!レイちょっと待て!!」
俺はウィルの叫び声も耳に入らず、ただザーラの元へと急いだ。
何だかんだで明日はらすとになります。
自分ではラストのつもりで書いていますが・・続きありそうですね・・
自分が書いてるんですけどね・・




