十七 公爵邸で4 フローラ→サン
今日は何故か朝からばぁやとザーラさんが張り切っていた。理由を聞いても
「「 お楽しみは後で 」」
の一点張りで教えてはくれなかった。
私は朝食を済ませると呼びに来たばぁやの後をついて初めての部屋へと通された。
そこには・・
「初めまして若奥様!私は王都で公爵家専用のドレス店を営んでおりますフェイと申します!!」
「えっ?は、はい!よろしくお願いします?」
たくさんのトルソーに掛けられたドレス、ドレス、ドレスの山だった。
「ばぁやに聞きたい事があるのだけれど」
「ええ、ええ。仰りたい事はわかっておりますよ。ただ今は我慢なさいませ。これだけのドレスの中から夜会へ来て行くドレスを見立てなければなりませんから」
私が聞きたいのはまさにそれ!
なぜ夜会に来て行くドレスを選んでいるのか・・私には検討もつかなかった。
三十着は有るだろうドレスの中から五着を選ぶと言われ、最速で断った。だって見ただけでわかる高級品なんだもん!!
本来なら袖を通す事だって叶わない程のドレスを、着るだけでも足が震えてしまうのに、それを五着もなんてとんでもない!!
それに・・
結局私の意見も汲んで貰い二着を購入する事になった。本当は一着でも烏滸がましいのに二人が事あるごとに
「サディル様からは特別な物を選べ!と申しつかっておりますので」
とか
「公子様からはお嬢様に似合う一級品をプレゼントしたいと申されました」
とか・・格下の子爵令嬢には勿体無い程の物を選んだ。それなのにザーラさんは
「あまりにも急な事でしたから既製品で申し訳ありません。その代わり次はオーダーメイドでフローラ様にプレゼントさせていただきます」
なんて言い出した!もちろん最後には
「とサディル様からの言伝でございます」
と言われ顔から足のつま先まで血が引いた気がした。
選んだドレスは一着は白がベースのドレスで、何故この色なのか不思議だった。
白はデビュタントする際か結婚式のウェディングドレスと決まっていて、それ以外での着用は禁止されている。
それゆえ持ち込まれたドレスの中でも白色のドレスは三着しかなかった。それでも最高級品だと分かる生地ではあったが・・
そしてもう一着は赤と黒がベースのドレスだ。前回着たドレスも最高級品でそれを着ます!と言ったが
「あのドレスは急きょご用意した物ですので、すでに分家の者へと下賜されております」
「えっ!?下賜・・ですか?」
「はい、縁起の良い物は分家へと下賜されるのです。良縁を分ける、の意味を込めて」
そう言われてしまえばそれ以上何も言えなくなってしまう。私の着たドレスが良い縁を運ぶとは思えなかったが・・何とか二着のドレスと靴、宝飾品を選び終わった時には日も傾いていた・・
「サディル様、レビィ子爵がお越しになりました」
「今行く」
今日はザーラとレナにフローラを部屋から一歩も出すなと命じていた。少し前に公爵家専属のドレス店が荷を数十箱と運んでいたから時間はかかるだろう。
本来なら自分もその場にいて一緒に彼女に似合うドレスを、靴を、宝石を選びたかったが今日は我慢だ。
この先はいつでも一緒に選ぶ事が出来るのだから
そう思うと自然と
「サン、顔が崩れているぞ」
少し後ろから付いてきているウィルに注意を受ける。無意識にフローラのドレス姿を想像していて顔が・・
私は急いで顔を戻す。どうもフローラの事を考えると表情が・・
「まぁ今の表情のが俺は好きだけどな。隣国へ留学していた時のサンはどこか冷めていて、表情も暗かったからな」
「ああ・・」
あの頃の私はフローラ(番)と離され、自暴自棄になっていた。でも国へ戻ればフローラと結婚出来ると、ただそれだけの気持ちで過ごしていた。
そのおかげで隣国との地位も築けたから悪くは無かったが、まさかフローラに婚約者がいたとは思いもしなかった。いや、レイモンドからは報告を受けていたからショックではあったが、私の祝福が効いていた事に安堵した。
フローラには辛い思いをさせてしまったが・・
「ではサディル様、行ってらっしゃいませ」
私は軽く頷くとレビィ子爵が待つ部屋へと足を踏み入れた。
「単刀直入に言う。フローラ嬢とオードレ子息との婚約を解消してもらいたい」
「・・・」
「理由は・・彼女が私の番だからだ」
レビィ子爵は深いため息を吐くと やはりそうでしたか・・と言った。
「クルトがどうしてフローラに対しあの様な態度を取るのか不思議では思っていました。私の目から見てもフローラは可愛らしい容姿をしています。まぁ妻は前妻に似ているフローラを良く思ってはいませんが・・」
「私が勝手に祝福を与えてしまったからな・・」
レビィ子爵は私の言葉に頷いた。
「それを知っていたらクルトをフローラの相手に選ばず、貴方様の帰国を待ちましたのに・・」
少し恨み顔で見られたがそれは私の方だと睨み返した。
「フローラは真面目な子です。正直クルトへの気持ちは無いでしょう。でも正当な我が家の跡取りでもあります」
子爵の言いたい事もわかっている。だからこそ私は今日、子爵へこの提案をする為に呼び寄せたのだ。
「その事で相談がある。オードレ子息もあそこまで義妹殿に熱を上げているのは、少なくとも気持ちが義妹殿にあるからだ。まぁ義妹殿の気持ちは分からないが」
そこで・・と、ある提案をした。
誰もが傷付かず、丸くおさまる提案を。
レビィ子爵は それで周りが納得するでしょうか?と言っていたが私はこう断言した。
「納得するのでは無く、させるんです!!」
と・・
ブラッド公爵家
王家に次ぐ地位であり、我が国唯一の公爵家。
その力はもしかすると王家よりも上なのではないか?と噂される程だが、滅多に王都に現れない貴族だった。
もし現れるとしたら番と言われる宿命の相手を探しに来る時だけだと・・
「ねぇあなた。もしフローラがブラッド公爵家のご子息の番だったらどうします?」
「はは、そんは事は無いと思うがもしそうだったら拒めないだろうな」
番は絶対だ!
もしフローラが相手だとしたら拒む事は出来ないだろう。だが・・
「その時は私たちは喜んで送り出そう」
妻はその腕に抱く小さな娘に優しく微笑んだ。
まさか本当にフローラが番だったとは・・亡き妻に報告しないとな・・




