第48章:地図の印
洞窟は静まり返っていた。
入口から吹き込む風の音だけが響いていた。
アレンは立ち、思索していた。
まだ戦いの圧力を感覚が覚えていた。
――アリス。
彼女が顔を上げる。
――何?
アレンは静かに言った。
――戻るべきだ。
短い沈黙。
アリスは数秒彼を見つめ、首を振った。
――覇者が死ぬ遠征は初めてじゃない。
――かつては誰一人戻らなかったこともある。
アレンは黙って聞いた。
――今退けば、忘れられた大陸を見つけられない。
そう言って彼を見つめ、問いかけた。
――でも一つ知りたい。
――何だ?
――どうやってあの怪物を倒したの?
――あの力は怪物的だった。
――正確なランクすら分からない。
アレンは考えた。
――異常種ではなかった。
アリスは驚いた。
――本当に?
――ああ。
――だが異常種になりかけていた。
アリスは深く息を吐いた。
――それならなおさらすごい。
――ランク9でそんな存在を倒すなんて…。
アレンは静かに答えた。
――俺はランク9だが、技は違う。
――章のこと?
――そうだ。
そして彼は言った。
――俺の章の中には、異常種級のものがある。
アリスは黙り込んだ。
理解した。
なぜあの斬撃があれほど破壊的だったのか。
その時、覇者たちが戻ってきた。
魔獣の肉を持って。
――食べ物を見つけた、とマーカス。
洞窟の中で焚き火を起こし、
肉の匂いが広がった。
やがて皆が食べ始めた。
だが隅でセラフィーヌは座っていた。
腕を失い、食べられない。
だが空腹でもなさそうだった。
ただ地面を見つめていた。
――帰りたい…。
弱い声。
皆が黙った。
――ここにいたくない。
レインが静かに言った。
――落ち着け。
――まだ終わっていない。
彼は日記と地図を指した。
――これがある。
――地図にはいくつも「X」が記されている。
マーカスが微笑んだ。
――宝かもしれない。
だがアレンが即座に言った。
――あの怪物のような存在かもしれない。
空気が再び重くなる。
――まずはその場所を調べるべきだ。
――何があるか分からない。
――だが一つ確かなことがある。
皆が耳を傾けた。
――倒したあの怪物は、忘れられた大陸から来た。
誰も否定しなかった。
それが最も論理的な結論だった。
一行は休むことにした。
翌日、探索を続ける。
翌朝――洞窟を出た。
魔族領の空気はまだ重い。
アリスが先頭を歩き、地図を手にしていた。
レインはセラフィーヌを支え、
他の覇者たちが周囲を守る。
マーカスが笑みを浮かべた。
――魔獣が出ても、俺たち覇者が片付ける。
アレンは黙って歩いた。
腰の刀に手を添え、感覚を研ぎ澄ます。
知っていた。
地図の「X」は――
忘れられた大陸への鍵かもしれない。
あるいは――
もっと恐ろしいものへ導く印かもしれない。




