棘と朝陽
最新エピソード掲載日:2026/06/20
82歳の清次は、毎朝老いによる身体の鈍い痛みに苛まれながら目を覚ます。三年前に癌の激痛に苦しみながら先立った妻・静子の遺影は、今は痛みのない「凪」の世界で静かに微笑んでいる。
終わりの見えない身体の軋みを抱え、病院通いや他人の親切に自分の無力さを突きつけられる日々。ある日、清次は妻が愛した庭の薔薇の根元にある雑草を抜こうとして、隠れていた鋭い棘に指を深く刺されてしまう。
指先から滲む鮮やかな赤い血と、トクンと脈打つ鋭く生々しい痛み。それは、老いによる鈍い痛みとも、死者の穏やかな静寂とも全く異なる感覚だった。痛みとは不快で煩わしいものだが、同時に自分が今この瞬間に生きて、脈打ち、泥臭く世界と繋がっている確かな証拠なのだと清次は気づく。
死者の世界の静寂を背に、清次は腹の虫を鳴らしながら、面倒で騒がしい「生」の一日を再び歩み始める。
終わりの見えない身体の軋みを抱え、病院通いや他人の親切に自分の無力さを突きつけられる日々。ある日、清次は妻が愛した庭の薔薇の根元にある雑草を抜こうとして、隠れていた鋭い棘に指を深く刺されてしまう。
指先から滲む鮮やかな赤い血と、トクンと脈打つ鋭く生々しい痛み。それは、老いによる鈍い痛みとも、死者の穏やかな静寂とも全く異なる感覚だった。痛みとは不快で煩わしいものだが、同時に自分が今この瞬間に生きて、脈打ち、泥臭く世界と繋がっている確かな証拠なのだと清次は気づく。
死者の世界の静寂を背に、清次は腹の虫を鳴らしながら、面倒で騒がしい「生」の一日を再び歩み始める。
棘と朝陽
2026/06/20 22:40