表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関係性オタクによる短編集  作者: 森ノ宮はくと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

2.物騒な友人は今日も変わらない


ふっと、視界が陰る。

ルクフォードは、咄嗟にその場を飛び退いた。

次の瞬間、ルクフォードのいた場所に剣が突き刺さる。


「へぇ、一応避けられるんだ」


降ってきた男は、剣を振って、土埃を払い落とす。

細身の剣士は、涼やかな顔で立っている。


「おま……リュカ!」


見覚えのある顔に、ルクフォードは目を見開く。


「久しぶりだね、ルクフォード。まだ死んでなかったんだ」

「今、死にそうだったろ!」

「はは、この程度で死んでたら、冒険者として生き残れないよ?」


*


冒険者育成の学園。

ルクフォードとリュカは、そこで出会った。


学園を卒業した後は、ギルドに所属し、パーティを組んで、冒険をするのが慣例だ。

でも。


「リュカ、相変わらず一人で好き勝手やってるらしいな」

「仕方ないだろ。弱いやつらばかりで、すぐに逃げ出すんだから」

「いや、お前が暴れるって聞いたけど……」

「どんな噂だよ、それ。前衛らしく、魔物を切り刻んでやってるだけだろ」


ふんっと、リュカがそっぽを向く。


「お前こそ、卒業後死亡率下げる気ないだろ……」


学園卒業後、パーティを組む。

それは、卒業後3年以内の冒険者死亡率が、高いからだ。


「僕が簡単に死ぬわけないだろ。他の奴らは、知ったこっちゃない」

「魔術、剣術共にトップで卒業したやつがこれだもんな……ギルドが頭抱えてるのも、納得だよ」

「何それ」

「リュカに面倒見て欲しいのに、全然協力してくれないって嘆いてたぞ」

「鍛えてやってるのに、ついて来れない方が悪い」

「……どんな鍛錬してんだよ」

「知りたい?」


リュカが、ニヤリと口角を上げる。


「お前用の特別メニュー、作ってあげるけど?」

「……遠慮しとく。夜も眠れなそうだ」

「よくわかったね」

「マジかよ!」

「寝てる間に奇襲を受けて、パーティ崩壊なんて、最低の全滅の仕方だろ」

「それは、そうだな」

「だから、鍛えてやっただけ」

「実践済みなのかよ!」


ルクフォードの後ろで、パーティメンバーがこそこそと話をする。


「やっぱり、天才様の考えってよくわからないわ……」

「そりゃ逃げ出したくもなるよな」

「ルクフォードと組んでて、よかったわ」

「リュカ、学園の頃から、浮いてたからな……」


リュカにも、その声は聞こえていただろう。

しかし、顔色ひとつ変えない。


「ルクフォード、手合わせしてあげる」

「最初から、そう言って出て来いよ」


ルクフォードが、剣に手をかける。


「そうしたら俺だって、喜んで乗るんだから、さっ!」


ルクフォードが、駆け出す。

ダンッと、空へ飛び上がった。


「はぁああああっ!」


大きく振りかぶった剣を、リュカへ振り下ろす。

リュカは、立ち方を変えないまま、それを見ている。

静かに剣を持ち上げると、ルクフォードの剣筋の向きを変える。


「おわっ!」


流れを変えられたルクフォードが、体勢を崩す。

その鳩尾に、リュカが肘を撃ち込む。


「相変わらず、無駄な動きが好きだね」

「いてて……だが、まだ、勝負はついてない!」


しゅんっと、ルクフォードが距離を詰める。

リュカは、剣で受け止めるしかなかった。


「……っ、おも」


体格で言えば、圧倒的にルクフォードの有利だ。

リュカが、少しずつ押されていく。


このまま押し負ける。


誰もが、そう思っただろう。


リュカの体が、深く下へ抜ける。

そして、回転の力を利用して鋭く切り上げた。


ルクフォードは、とっさに後ろへ飛び退いた。


パラリと、ルクフォードの髪が散った。


「あっぶねー……」

「この程度で狼狽えて、どうするの」


リュカが、足払いをして、土煙を上げる。

小狡い戦法だ。

しかし、大抵のものは、こういうものに怯む。

生き残るという点では、正しい戦法である。


しかし、ルクフォードは構わずに、突っ込んできた。


ルクフォードの意外な行動に、リュカの反応が一瞬だけ遅れた。

その一瞬の隙を逃さない。

ルクフォードが、リュカの剣を弾き飛ばす。

そのまま、ピタリと喉元に剣先を当てた。


「……降参」


不満そうに、リュカが終わりの合図を出した。


「っしゃ!」


ルクフォードが、嬉しそうに拳を握る。


「これで、勝敗同じくらいになったんじゃないか?」

「そんなわけないでしょ。僕が36勝、君が27勝」

「よく覚えてるな……」

「君が鳥頭なんだよ」


リュカが、剣を取りに行く。

軽く埃を振るい落としてから、鞘に納めた。


そのちょっとした動きすら、洗練されている。


「お前って、本当、綺麗に動くよな」

「は?」

「さっきの剣筋も、正確で綺麗だったし!」


はくり、とリュカが一瞬言葉に詰まる。


「君が、力任せすぎるんだよ」

「そうかな、そうかも?」

「君は、感覚で動きすぎ。無駄な振りも多いから、隙だらけ。力だけで押すのやめろよ」

「お前が筋肉足りないんだよ。ほら、こんなに腕細い。ちゃんと肉食ってるか?」

「おい、気安く触るな。気色悪い」


ルクフォードの手を、振りほどく。


「絶対、魔術師の方が向いてるのになぁ」

「それは、僕よりも強くなってから言ってくれる?」

「そしたら、一緒にパーティ組めたのに」


リュカの顔が、心底嫌そうに歪む。


「絶対、嫌」


「……そんなに嫌か」

「死にたくなる」

「お前、本当に俺のこと嫌いだよな……」


ルクフォードが、少し落ち込む。


「俺、なんか怒らせたか?」

「そんなの、自分でよく考えろよ」

「え、やっぱり怒らせたのか?」

「……別に、怒ってはないけど」


その言葉に、ルクフォードの顔が明るくなる。


「そうか、良かった!」

「単純。だから、いつまでも弱いんだよ」

「でも、今日は俺が勝った!」

「……まあ、そうだね」


リュカが、少しだけ笑った。


「土煙に怯まずに突撃してきたのは、偉かったんじゃない?」

「おお、お前でも人を褒められるんだな!」

「僕を、なんだと思ってるんだよ」


リュカが、呆れたように肩を下げる。


「相応の努力をしてたら、ちゃんと褒めるよ」

「え、なんか言ったか?」

「何も言ってない!」


リュカの小さすぎる声は、ルクフォードに聞こえなかった。


「それじゃあ、僕は依頼に戻るから」

「お前、依頼の途中なのかよ」

「たまたま君が見えたから、腕が鈍ってないか見に来てあげただけ」


リュカが、持ち前の綺麗な顔で笑う。


「僕以外に殺されるなよ。そしたら、一生殺してやるからな」


「いや、それ、俺もう死んでるじゃん……」

「口答えするな」

「えぇ……」


ルクフォードが、戸惑いの声をあげる。


「とにかく、これ以上、弱くなるなよ」

「勝ったの俺なのに、おかしくないか?」


リュカが、ははっと笑う。


「だから、僕よりも強くなってから言えよな」


リュカの髪が、キラキラと光を反射して、綺麗だった。


「お前、普通にしてれば綺麗なのになぁ……」

「殺されたいの?」

「そういうところだよ!」


リュカが、シッシッと手を払う。


「お前らも、どうせ依頼中だろ」

「よくわかったな!」

「見ればわかるだろ……」


リュカが、くるりと、向きを変える。


「死んだら、八つ裂きにするからね」


そう残して、去っていった。


「なんか、嵐みたいだったな……」

「やっと行ったね……」

「でも、リュカ相手に一本取るなんて、すげぇじゃんか!」

「ほんとだよ、流石ルクフォード!」

「え、ああ……」


でも、リュカの言葉が、刺さっている。


「もっと、強くならないとな」


ぎゅっと、手を握る。

リュカが何をしたかったのか、よくわからないけれど。

あいつの期待に応えられないのは、なんとなく、嫌だった。


「俺たちは俺たちの、できることを積み重ねよう」


まずは、依頼を終わらせなくては。

そうして、ルクフォード一行も、目指す道を歩き出した。


*


『お前の剣筋、綺麗だな!』


何年も、忘れられない言葉があった。


「ほんと、何も変わってないんだから」


その声音には、嬉しそうな色が滲んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ