53 それぞれの明日
ドラマ『TOKUTAI』は金吾と魔沙鬼の実写戦闘シーンが使われたことで、近年に見ないヒット作となった。
「いやあ、施設内での撮影もリアリティに一役買いましたよぉ! いやいや、ヘリのこと、声かけていただいてほ〜んと篠島隊長には感謝してますぅ!」
佐々木山がほくほく顔で、篠島に言った。
「隊長じゃない。課長だ。」
篠島は渋い顔だ。
結局ヘリはほぼ役に立たず、中学生の紗枝内金吾を危険にさらしてしまった。
あのあと、木蓮は泣きながら金吾に抱きついていた。
医療班が金吾の体からPMの死骸を抜き取って金吾自身の筋肉だけの姿に戻っても、木蓮は金吾の体をなで続けた。
「も、もう大丈夫。いないと思うから‥‥‥。いないでしょ?」
金吾が少し顔を赤らめながら木蓮に言う。
そんな金吾の唇を、木蓮の唇がふさぐ。
「‥‥‥‥!」
金吾の顔がみるみる真っ赤になった。
「もう、やだから! こんな無茶したら、やだから!」
その後の長森先生の診断でも、金吾の中にPMは残っていなかった。相変わらず異質なRNAは検出されはしたが‥‥‥。
魔沙鬼は助からなかった。すでに内臓がボロボロになっていたのだ。
「魔沙鬼」と名乗るその男はどこの誰だったのか、なぜ他人の腕まで取り込むことができたのか、なぜこんなにも長くPMと共存していたのか? 結局すべては謎のままになってしまった。
入院したヒーロー患者のところには、助けられたシングルマザーの女性が子ども2人を連れて毎日のように見舞いに来ている。
PMがいなくなってみればその患者は少し頼りなげな優しい顔をした人で、子どもたちに懐かれていた。
あの4人、もしかしたら家族になるかもしれないな‥‥。
光太郎はそんな目でリハビリに励むそのヒーローを見ている。
「中学生は一度自宅に帰すことになった。政府もようやく人員の補強に動いてくれたし——」
篠島あかりがKチームの面々を前にしてそう言った。
「あれがもう一回起こったら、今度は始末書じゃ済まなくなるからな。Kチームは解散して新たな組織編成になる予定だ。」
「俺は‥‥‥」
金吾が何かを言いかかった。
「あの中学には戻りたくない——か?」
光太郎がそうたずねると、金吾は少し口ごもった。
「ん‥‥‥それもあるけど‥‥‥、ここ、今のフリースクールに近い。仲間もいるし——」
本当は‥‥木蓮さんがここにいる‥‥から。
吊り橋効果っていうのは聞いたことあるけど、後になって考えても‥‥‥俺はやっぱり木蓮さんに惹かれてる。
はちゃめちゃでぶっ飛んでるように見えて、その実、情に厚くて優しくて、行動力があって‥‥。
木蓮さんもまんざらでもなさそうだし‥‥‥。どうなるかはわからないけど、俺はもう少し木蓮さんのそばにいたい。
そんな木蓮が小学生みたいに手を上げた。
「はーい、はい! バイトでいいから2人には手伝いに来てほしいでぇ〜っす!」
2人、と言いながら、ちらと金吾の方を見る。
「まあ、そこらへんは考えておく。たしかに2人ともいい戦力だし、何よりRNAの件がある。経過観察も続けないと——。」
「俺は、今の中学でサッカー部に入ろうと思います。‥‥なので顔出せる回数が減るかもしれませんが‥‥‥」
「うん。新体制に移行してもまだまだ試行錯誤だ。何しろAMPSについてはまだわからないことだらけだ。」
篠島あかりはそう言ってミーティングを解散した。
それからふと思い出したみたいに光太郎に声をかけた。
「少し患者数も落ち着いてきたし、樋山くん今日一緒に夕食でもどうだ? 美味しい店を見つけたんだ。」
「あ、美味しい店! あたしも行きたいなぁ!」
木蓮が目を輝かせると、あかりの頬が少しだけ引きつった。
ひく‥‥‥
了
最後までお読みいただき、ありがとうございましたぁ!
ラストで笑顔になっていただけたら嬉しいなぁ。。




