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異常調査部〜院内発砲事件〜【2】  作者: 月ノ羽ルナ


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12/24

城音高校

城音しろね高校にて


昨晩の穢佇えだち達の逮捕は、学校でも話題の的になっており、その事で教員達は朝から、保護者達の電話対応に追われた


近頃、中高生の犯罪が増えつつある中での今回の事件は、学校全体に多大な影響を与えていると言っても決して、大袈裟ではないだろう


その証拠に城音しろね高校の教員達は、全学年を自習にし、理事長も交えた緊急の職員会議を開いていた


理事長

「問題が起きてるのは、全て三年一組。担任の田沢先生…あなたのクラスは、一体何が起こってるんですか。是非ともご説明を」


名指しを受けた田沢たざわは顎髭を触りながら、気怠げに口を開いた


田沢たざわ

「影上、雨野、西川…あと、穢佇でしたっけ?とにかく、捕まった四人はいわゆる不良でして、他の先生方もご存知でしょう?私たち教師も素行を注意しては、睨まれ無視され、もう散々なんですよ」


田沢たざわの言う事に、心当たりのある何人かの教師達は頷く


田沢たざわ

「素行の悪い不良が問題を起こすのは、自然の摂理でしょう。それに、学校外のあいつらの行動まで責任持てませんよ」


理事長 

「彼らだけの話をしている訳ではありません。隅田さんも事故に巻き込まれてるんですよ、担任なのに君は何も知らないのか」


田沢たざわの態度が気に入らなかった理事長は、厳しい目つきを向ける


田沢たざわ

「隅田については、警察でも話しましたが、きっと父親に恨みを持った奴が、娘に復讐したんじゃないですか?」


いい加減な推理だが、他の教師達もそれくらいしか思いあたる節がないのだ。それぐらいに、隅田すみだの娘ーー隅田すみだ 冬葵ふゆきの交通事故は不可解な事で、同車していた青年との接点も、教師達は一切の心当たりがなかった


そんな中、一人の教師が何かを思い出し、そっと手を挙げた


「そういえば……影上って隅田さんと同じ生徒役員じゃ…雨野、西川も部活が同じ園芸部だったはず」


理事長

「それは本当かね」


生徒会顧問と園芸部顧問は、すぐに気づき頷いた


「確かに、影上は去年から補佐として生徒会へ入ってますね」


「園芸部にも三名の名前はあります。ですが、隅田さんは生徒会であまり顔を出してないですね。雨野くん達に関しても名前だけで、真面目に部活に来ているのは見た事ありませんよ」


「まさか、何か関連性があるんじゃないか」


「隅田と影上って妙に仲が良かったな。よく二人で話してたし、そもそも影上が生徒会に入ったのも、隅田の推薦だったんじゃ」


ざわざわと教師達が騒ぎ始めると、田沢たざわは鬱陶しそうに声を張り上げた


田沢たざわ

「先生方、無理に関連付けないで下さい。そもそもあいつらが逮捕されたのは、隅田とは関係ないでしょう。下手に推測して保護者から、監督不行き届きだのって言われるのは、こっちなんですよ」


田沢たざわは、担任と言うだけで生徒達の素行の悪さの全てが、自分のせいだと言われる事に、苛立ちを覚えていた


2ヶ月前の事故も、真っ先に怒りの矛先が向いたのは、担任である田沢たざわで、任意ではあったが警察の取り調べまで、受けさせられていた


田代たざわ

「理事長、この際だから代表して言いますが、いくら城音(うち)が慈善活動を掲げていると言っても、やはり前科持ちを受け入れるのは、リスクが高すぎませんかね」


城音しろね高校は、理事長の意向もあって、穢佇えだち達のような前科持ちや、訳ありの子達を受け入れている


そのやり方が、前々から気に食わなかった数名の教師達は、田沢たざわの言葉を皮切りに、口々とその事について話始めた


「今まで言えませんでしたが正直、あぁ言った生徒達との接し方には困ってます」


「それに、他の生徒達が可哀想で。不良生徒のせいで学校名だけが悪目立ちして、受験や就職に影響する事もあるんです」


「去年も一昨年も、面接であの城音高校なのかと聞かれたと、卒業生が言ってました。それを聞くだけで僕は鳥肌が……」


不良と分類される生徒達が居るのは、前々から問題視されており、保護者達からも似たような苦情は来ている


今回の逮捕についても、魚が水を得たかのように、それ見た事かと責め立てられた。朝から保護者の電話が鳴り止まない上に、一件一件の対応に、時間を取られたのも、まさしくそのせいだ


田沢たざわ

「あいつら税金で学校に通ってるくせに……施設も浮かばれませんね。逮捕者を四人も出したんです、存続は危うい筈ですよ。まっ、それに関しては城音(うち)もですが」


校長

「田沢先生、少々言葉が過ぎます。今は理事長もいらっしゃるんですよ」


田沢たざわ

「すみませんでした」


太々しく謝る田沢たざわと、理事長の顔色を伺う校長……おそらく、校長も影では田沢たざわと同じような事を言っているのだろうと、理事長は頭を痛めた


理事長も、慈善活動を優先している訳ではなく、たまたま施設と提供し、流れでそうなっただけだ


とは言え、罪を犯した子達の更生になれば良いと思っていたのも事実で、だがそのせいでこうも学校が振り回されてしまうのは、望まない所でもあった


理事長

「施設が潰れたら、受け入れも……潮時か」


学校存続に関わってしまえば、理事長もそう言わざる得ないだろう


いつの間にか話が、捕まった生徒達よりも学校の保身へと切り替わっている事に、わなわなと震えている者が居た


職員室の後ろの席で、誰も彼女に注目しておらず隣に座っている者しか気づいていない


「あ、あの…杉野千先生…どうかされました?」


名前を呼ばれたーー杉野千すぎのせ 杏果きょうかは質問には答えず、その代わり勢いよく立ち上がり口を開いた


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「今は!そんな話をしている場合じゃないんじゃないですかっ!!」


その場の全員が、杉野千すぎのせの方を見る


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「今回の逮捕で、一番不安なのは生徒達なんですよ。特に三年一組は呪われてるとか騒がれて、他のクラスから虐められる可能性もあります」


校長

「虐めなんて、そんな不謹慎極まりない。滅多な事は言わないように」


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「そんな事言ってる場合ですか!」


校長と杉野千すぎのせが睨み合うのを、職員室の入り口からこっそりと、覗く二名の生徒達が覗いていた


彼らは、三年一組の生徒で自習になっていた所を抜け出し、今の今まで職員会議の様子を盗み見していたのだ


蜂笑はちえ

「杏果っち、熱血〜。でもさヤバくね?校長怒ってんじゃん?」


山門やまと

「んな事より、アイツらの逮捕マジっぽいぜ」


蜂笑はちえ

「それな」


この二人の男子生徒は、本当に同じクラスの穢佇えだち達が、逮捕されたのかを確かめに来ており、会議の様子から事実なのだと察する


蜂笑はちえ

「やっぱさ、例の話言った方がよくない?」


山門やまと

「親に余計な事言うなって、言われてんだよオレ。校長とかにもさ、事件については関わるなって言われてるだろ」


蜂笑はちえ

「"警察が解決するからお前らは勉学に集中しろ"ってやつだろ?でもさ、杏果っちよく言ってね?警察は情報が頼りなんだって」


生徒達から慕われている杉野千すぎのせは、自分がかつて警察官だった事を話しており週に一度、護身術の講座も開いている


この二人の生徒も、講座に参加しており、そこで聞いた話を思い出す


蜂笑はちえ

「それにさ、あいつらには虐められてたところを、助けてもらったし」


山門やまと

「何回も聞いたって。それって、穢佇がやらしたってやつだろ?」


穢佇えだちが、雨野あめの西川さいかわ影上かげうえを裏で操っているのは、クラス中の噂にもなっており、実際別の学校の不良達を力で黙らせている場面も、目撃されていた


山門やまと

「正直、何考えてるか分かんねーし、怖ぇーよ」


山門やまとは三年間、穢佇えだちと同じクラスだが、いつも教室の隅で一人で座ってる穢佇えだちに、近寄りがたさを感じていた


山門やまと

「そう言えば穢佇って、クラスでも冬葵さんと何回か揉めてたよな」


隅田すみだの娘である、冬葵ふゆきは真面目な性格ゆえに、誰とも打ち解けようとしない穢佇えだちと、たびたび意見がぶつかっていた


ふと思い出した山門やまとは、職員室に居る教師達のように、冬葵ふゆきの交通事故と穢佇えだち達の逮捕には、何か繋がりがあるのかもと考える


蜂笑はちえ

「大袈裟過ぎじゃん?いつも、穢佇が二、三喋って、冬葵っちが呆れて終わりだったしさ」


山門やまとが何を言いたいのか察していたが、その考えにはのれないのか蜂笑はちえは否定する


蜂笑はちえ

「俺だって二人が話してるの見た事あるけど、揉めてるってのとは違う気がすんだよなー」


山門やまと

「いや、まぁ、そうだけどよ…」


歯切れが悪そうにする山門やまとに、蜂笑はちえはふと、真剣な顔で言った


蜂笑はちえ

「多分だけど、穢佇はそこまで悪い奴じゃないよ。俺の勘だけど」


山門やまと

「なんだそれ」


ははっと笑う蜂笑はちえに、山門やまとはため息をついたーーその時だった


ガラン


杉野千すぎのせ

「話し声がすると思えば、脱走犯発見」


山門やまと

「げっ」


蜂笑はちえ

「ヤバッ」


すっかり、話に夢中になって居た二人は、近づく杉野千すぎのせに気づかず慌てる


校長

「誰か居るのか」


杉野千すぎのせ

「え?あ、えっと…」


もし、盗み聞きしていた事がバレれば、怒られた挙句、反省文は確実に書かされてしまうだろう。その事が頭をよぎり杉野千すぎのせは、本当の事を言おうかどうか、迷った


山門やまと蜂笑はちえは、ジェスチャーと口パクで、謝りながら「見逃して」と伝える。きっと不安から、会議の様子を気にかけていたのだと思うと、杉野千すぎのせは自然と頷いていた


杉野千すぎのせ

「見つかる前に、早く行って」


蜂笑はちえ

「杏果っち、マジ最高」


山門やまと

「いいから、行くぞ」


慌ただしくその場を去る、二人の足音が、静かな廊下に響き渡る


校長

「杉野千先生、生徒が居るんですか!」


杉野千すぎのせ

「足音立てないでよ〜」


どうやって誤魔化そうかと、頭を悩ませていると蜂笑はちえ達が逃げた逆の廊下から、別の人物達が歩いて来る


背中越しの人影に、全く気づかない杉野千すぎのせ。彼女の態度に沸を切らした校長は、入り口まで歩き、ちょっとしか開いていなかったドアを、ガラリと開ける


逃げた蜂笑はちえ達は、廊下の角を曲がる前だ。ギリギリ見えてしまう、校長の怒鳴り声を覚悟した杉野千すぎのせだったが、それは意外な形で裏切られた


校長

「これはこれは、皐月さん」


反対側の廊下から、歩いて来た人物ーー皐月さつきめぐるに気づいた校長は、厳しい顔つきから笑顔に変え、穏やかな声で言った


皐月さつきは、学校と連携をとり活動しているので、城音しろね高校の校長とは既に顔見知りでもあり、めぐると共に冬葵ふゆきについて訪ねに来たのだ


皐月さつき

「急に訪ねてしまい、すみません」


杉野千すぎのせ

「へ?そっち?」


背後から聞こえてくる声に、杉野千すぎのせは唖然とし、反射的に振り返りめぐると目が合う


蔡茌さいし めぐる

「すぎ…のせ、どうして…」


まさか、会うとは思って居なかっためぐるは、自然と彼女の名前を口にしていた。杉野千すぎのせは質問には答えず、廊下に響き渡るぐらいの驚き声を上げた


杉野千すぎのせ杏果きょうか

「せ、せ、先輩?!!!!」


校長

「杉野千先生。お静かに、知り合いなんですか」


本来なら、もっと厳しめに叱るのだが、皐月さつき達の手前、校長はたしなめる程度に抑える


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「知り合いも何も、警察時代にお世話になった先輩です」


暇さえあれば、めぐるの事を話しているので、それだけの説明でも、校長は納得した


校長

「あぁ、成る程」


皐月さつきも、明らかに動揺しているめぐるに、杉野千すぎのせについて聞いている


そうこうしているうちに、完全に曲がり角を曲がり逃げ切れた蜂笑はちえ山門やまと


蜂笑はちえ

(今の声、杏果っち?先輩って……いつも言ってる?って事は…警察??)


杉野千すぎのせの大声がしっかり聞こえた蜂笑はちえは、階段を登っている足を止めた


山門やまと

「馬鹿。何してんだよ、行くぞ」


急に止まった蜂笑はちえを不審に思いながらも、山門やまとは声を掛ける…が、蜂笑はちえは首を横に振った


蜂笑はちえ

「悪い。俺、今日早退するわ」


山門やまと

「は?」


戸惑う山門やまとに構わず、それだけ言うと蜂笑はちえは、登った階段を降りて校門へと向かった


蜂笑はちえ

(やっぱし、警察に言わないとダメな気がすんだよな)


生徒達は、極力事件に関わらないよう教師達に言われている。ただでさえ学校は、揉め事に関しては常に受け身だ


何か分かってからでは遅い。だから、あえて何も分からない振りをする……はやい話が、埃がある所は絶対に叩かない。そう言った考え方で、学校を守ってきている


だから、冬葵ふゆきの交通事故についても生徒達は言えないし、どこか自分とは関係ないと、思っているのだろう


よほどの正義感でもなければ、高校生なんてそういうもので、良くも悪くも無関心だ


蜂笑はちえもそのうちの一人で、仕方ない事なんだと、どうせ頑張った所で、未成年の証言はそこまで重要視される事はないのだと、他の生徒達と同じように考えていた


だが、穢佇えだち達が逮捕された事で、なんとなく言わなければならないと…そんな気持ちになった


そして、チャンスとでも言うように杉野千すぎのせの"先輩"が現れた


蜂笑はちえ

(きっと、杏果っちの先輩さんなら、俺の話を聞いてくれる)


顔も見た事がなかったが、蜂笑はちえは不思議と杉野千すぎのせの先輩なら、純粋に信用できると思った



ーー


ーーー


まさか、蜂笑はちえが脱走しているとは知らない杉野千すぎのせは、誰も居ない食堂の机の上で項垂うなだれていた


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「ほんっっとーーに、すみません」


蔡茌さいし めぐる

「俺の方こそ、タイミングが悪かった。すまない」


苦笑いをしながら謝るめぐる。その隣に座り皐月さつきは唸っている


皐月さつき しゅう

「でも、隅田さんの娘さんと風十くん達、全員が同じクラスとは驚きました」


蔡茌さいし めぐる

「あぁ」


皐月さつきめぐるは、もしかすると何か関連があるのではと、考えを巡らせる


隅田すみだ 冬葵ふゆきと言う女子生徒について、訪ねに行った二人だったが「今は職員会議中なので」と校長に突っ張ねられてしまった


態度からするに、真面目に取り合うつもりはなさそうなのは誰が見ても分かった


後から訪ねられても面倒だと思ったのか校長は、杉野千すぎのせ皐月さつき達の対応を任せ、素知らぬ顔で会議へと戻ったのだった


仕方なく、三人は人気のない食堂で話をする事になった


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「さっきの会議でも、冬葵さんの事故と関連してるかもって、言われてました」


杉野千すぎのせは、前に勤めていた学校の推薦により、5ヶ月ぐらい前に移動して来ており、しかも一年生クラスの副担任


元警察官という事もあり週に一度、護身術の講座を開いていて、そこに参加する生徒達とは触れ合っているが、参加していない生徒に関しては、完全に管轄外だった


杉野千すぎのせの話を聞くに、冬葵ふゆきは生徒会長で毎日挨拶をし、いつも周りに人が居た明るい子


影上かげうえは、生徒会の仕事でよく冬葵ふゆきと一緒に居るのを見かけた事があり、雨野あめの西川さいかわともよく一緒に居た


この三人の素行は、確かにあまり良くはなく悪い意味で目立ったが、杉野千すぎのせからすれば"不良"ではなかった


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「どちらかと言えば、影上くんは普段は大人しいんですけど、生徒会の仕事をしてる時は生き生きしてるし、雨野くんと西川くんは常に一緒で、ガタイ良いしツリ目だから怖がられてるけど、挨拶運動の時は必ず挨拶してくれるし、一年生の間では数人の女子達から人気もあるんですよ」


素行の悪さは目立つが、彼らは穢佇えだちと出会った事で、前のままじゃいけないと思ったのかもしれない


杉野千すぎのせの話を聞いて、資料のままじゃない彼らを、皐月さつきめぐるも感じとれた


皐月さつき しゅう

「あの、かざ…穢佇くんについては、何か知りませんか?」


その質問に対し杉野千すぎのせは、むむむっと唸る


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「私もさっきから、記憶を呼び起こしてるんですけど…名前と顔が出て来ないんですよね。とは言っても、私もほとんど一年クラスに居るので、他の学年の生徒と会うのは、中庭とか校門…食堂ぐらいなんですけどね」


皐月さつき しゅう

「そう、ですか」


どうやら、穢佇えだちは学校内ではあまり人と関わらず過ごしているようだった


皐月さつき しゅう

「せめて、担任の先生か同じクラスの生徒に話を聞ければ、何か分かるかもしれないですね」


校長に厄介払いされてしまい、情報が得られない今、突破口があるとすればそれしかないだろう


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「ダメです!」


蔡茌さいし めぐる

「ダメって、またどうして」


間髪入れずに、拒絶されてしまいめぐるは驚くが、察していたのか皐月さつきは「やっぱり」と言った


皐月さつき しゅう

「さっきの校長先生の態度といい、恐らく事件に関して学校は、知らぬ存ぜぬで通すつもりでしょう。令状や任意の取り調べとなれば別ですが、どちらにしても割いてる時間がありません」


こうしている今も、穢佇えだちの取り調べ終了の時間が迫っている


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「それだけじゃないです、生徒達もかなり動揺してて…特に親御さんからも、事件には関わらせるなって。それに関しては、私も教師として見過ごせません!」


キッパリと言い切られてしまうと、皐月さつきめぐるも無理に言えなかった


確かに手当たり次第、生徒達に話を聞き回った所で、不安を煽ってしまうだろう。杉野千すぎのせが見過ごせないと言った理由も、生徒達を思っての事だ


それに、今は自習中で、そんな時に警察が割り込んで話を聞き回ったとなれば、朝のニュースの話題になってしまうのは確実だった


蔡茌さいし めぐる

「何か手掛かりが掴めればと、思ったんだけど…」


空振りの結果に、めぐるは頭を悩ませる


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「先輩!こう言う時は、一度事件を洗い直したら、どうでしょうか!」


皐月さつき しゅう

「確かに、それも良いかもしれませんね」


二人に言われ、めぐるも頷く


杉野千すぎのせも居るので、隅田一課長と穢佇えだちの関係性については、黙ったままで三人は事件を振り返る


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「2ヶ月前に、隅田さんが別の学校の生徒と車に乗ってて、交通事故に遭ったんですよね…噂によれば無理矢理乗せられたんじゃって、だから抵抗して、その拍子に交通事故に遭った可能性があるって、新聞とかにも書いてありました」


自分の学校の生徒が巻き込まれた事故を、杉野千すぎのせは気にかけており、新聞やニュースなどはチェックしていた


だが、不自然な事に事故についてはどこも憶測ばかりで、真実は明かされていない


もちろん、他校の男子生徒については警察で調べれば分かるが、捜査一課が情報を提供してくれないせいで、今のめぐる達では分からないだろう


皐月さつき しゅう

「僕も、何度かニュースを見てましたが、杉野千先生の言う通り、事故の時間帯が深夜だった事もあって、そういう風に報道されてましたね。相手は男で未成年者…普段の素行が悪いと言う事もあって、元不良学生と言われてました」


蔡茌さいし めぐる

「元不良学生?」


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「確か、半年ぐらい前に問題を起こして、退学になったって…週刊誌とかも買ったんですけど、退学理由は特に載ってなかったんですよね」


不良学生が退学になった理由。いかにも記者が飛びつきそうなネタだが、誰もそこには突っ込んでいない事に、杉野千すぎのせは少し引っかかっていた


皐月さつき しゅう

「言われてみれば!何か、載せられない理由があるんでしょうか?」


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「週刊誌やニュースで取り上げない理由って、なんなのー」


これに関しては、めぐるに心当たりがあった


廃校舎での事件で、警察も記者も肝心なのは事件の真実ではなく、未成年者誤認逮捕について、どう世の中に発表するかだった…


警察は都合が悪い事は、証拠不十分だと言って公にせず、あくまで誤認逮捕についてだけ触れた


対して、ニュースや週刊誌では、今まで悲惨な未成年犯罪だと発表していたにも関わらず、誤認逮捕だと分かれば、警察が悪いと叩きだした


結局は、警察も記者達も、都合の悪い事は全て触れずにいた…そんな世間の動きを見ていためぐるには、杉野千すぎのせの疑問が嫌と言うほど、理解できていた


蔡茌さいし めぐる

「誰も退学理由に触れないのは、都合が悪いからだと思う」


めぐるの言葉の意味に気づいた皐月さつきは、だんだんと顔を青くさせていく


皐月さつき しゅう

「……だとすれば、根底から裏返ってしまう気が…」


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「??それって、どう言う事ですか?」


いまだに、分からず眉間に皺を寄せる杉野千すぎのせに、めぐるは言いにくそうに口を開いた


蔡茌さいし めぐる

「恐らくだが、ニュースで取り上げられているような人物じゃ、ないかもしれない…つまり……深夜に女の子を連れ去る事は…ないんじゃないかと…」


めぐるは、さっき教師としての杉野千すぎのせを知ったばかりだが、彼女が生徒思いで良い教師なんだと分かっていた


だからこそ、事件について掘り返すような話をするのは、心苦しかった。もし、めぐるの言う通りなんだとすれば、少なくとも隅田すみだ 冬葵ふゆきは、同車した男と顔見知りな可能性がある


たまたま深夜に歩いていて、帰るのにヒッチハイクしたとは、考えにくい…


蔡茌さいし めぐる

「深夜に彼女が歩いていたのも、辻褄が合う気が…するんだ」


そもそも()()()()()のかすら怪しい、もしかすると()()()()()()のかもしれない


めぐるの話を黙って聞いていた杉野千すぎのせは、しばらく何かを考えると、真っ直ぐにめぐるを見た


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「蔡茌先輩……なんとなく、私も…そんな気がするんです。生徒って、学校で見せる顔と家の中で見せる顔が違うんです。スクールカーストとも言うんですけど、私達教師は、学校での生徒しか知らないから……でも、だとしても、生徒達の真意は分かるつもりです」


蔡茌さいし めぐる

「あぁ」


真っ直ぐに見る彼女の瞳は、先程会った茂望しげもちのように、自分の職業を通していくつもの、人間を見てきた瞳と似ていた


ただ、一つ違うところは…


杉野千すぎのせ 杏果きょうか

「隅田さんは、絶対に間違った事はしない子です……だから、私が生徒達から話を聞いてみます」


彼女は、生徒(にんげん)を信じられる教師(にんげん)だと言う事だ

杉野千すぎのせ 杏果きょうかプロフィール〜


性別/女 年齢/26歳  誕生日/3月28日  血液型/O型

好きな食べ物/パンケーキ  嫌いな食べ物/アボカド

好きな飲み物/豆乳  お気に入りスポット/喫茶店はんなり


経歴/元は警察官だったが、20歳の時に起きた事件により退職。自分が体験した事件から、子供達に寄り添いたいと考え教師になる


性格/明るく元気な性格だが、思い悩む事もしばしば…。生徒達からは慕われてはいるが、若干熱血な所がたまにキズらしい…

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