城音高校
城音高校にて
昨晩の穢佇達の逮捕は、学校でも話題の的になっており、その事で教員達は朝から、保護者達の電話対応に追われた
近頃、中高生の犯罪が増えつつある中での今回の事件は、学校全体に多大な影響を与えていると言っても決して、大袈裟ではないだろう
その証拠に城音高校の教員達は、全学年を自習にし、理事長も交えた緊急の職員会議を開いていた
理事長
「問題が起きてるのは、全て三年一組。担任の田沢先生…あなたのクラスは、一体何が起こってるんですか。是非ともご説明を」
名指しを受けた田沢は顎髭を触りながら、気怠げに口を開いた
田沢
「影上、雨野、西川…あと、穢佇でしたっけ?とにかく、捕まった四人はいわゆる不良でして、他の先生方もご存知でしょう?私たち教師も素行を注意しては、睨まれ無視され、もう散々なんですよ」
田沢の言う事に、心当たりのある何人かの教師達は頷く
田沢
「素行の悪い不良が問題を起こすのは、自然の摂理でしょう。それに、学校外のあいつらの行動まで責任持てませんよ」
理事長
「彼らだけの話をしている訳ではありません。隅田さんも事故に巻き込まれてるんですよ、担任なのに君は何も知らないのか」
田沢の態度が気に入らなかった理事長は、厳しい目つきを向ける
田沢
「隅田については、警察でも話しましたが、きっと父親に恨みを持った奴が、娘に復讐したんじゃないですか?」
いい加減な推理だが、他の教師達もそれくらいしか思いあたる節がないのだ。それぐらいに、隅田の娘ーー隅田 冬葵の交通事故は不可解な事で、同車していた青年との接点も、教師達は一切の心当たりがなかった
そんな中、一人の教師が何かを思い出し、そっと手を挙げた
「そういえば……影上って隅田さんと同じ生徒役員じゃ…雨野、西川も部活が同じ園芸部だったはず」
理事長
「それは本当かね」
生徒会顧問と園芸部顧問は、すぐに気づき頷いた
「確かに、影上は去年から補佐として生徒会へ入ってますね」
「園芸部にも三名の名前はあります。ですが、隅田さんは生徒会であまり顔を出してないですね。雨野くん達に関しても名前だけで、真面目に部活に来ているのは見た事ありませんよ」
「まさか、何か関連性があるんじゃないか」
「隅田と影上って妙に仲が良かったな。よく二人で話してたし、そもそも影上が生徒会に入ったのも、隅田の推薦だったんじゃ」
ざわざわと教師達が騒ぎ始めると、田沢は鬱陶しそうに声を張り上げた
田沢
「先生方、無理に関連付けないで下さい。そもそもあいつらが逮捕されたのは、隅田とは関係ないでしょう。下手に推測して保護者から、監督不行き届きだのって言われるのは、こっちなんですよ」
田沢は、担任と言うだけで生徒達の素行の悪さの全てが、自分のせいだと言われる事に、苛立ちを覚えていた
2ヶ月前の事故も、真っ先に怒りの矛先が向いたのは、担任である田沢で、任意ではあったが警察の取り調べまで、受けさせられていた
田代
「理事長、この際だから代表して言いますが、いくら城音が慈善活動を掲げていると言っても、やはり前科持ちを受け入れるのは、リスクが高すぎませんかね」
城音高校は、理事長の意向もあって、穢佇達のような前科持ちや、訳ありの子達を受け入れている
そのやり方が、前々から気に食わなかった数名の教師達は、田沢の言葉を皮切りに、口々とその事について話始めた
「今まで言えませんでしたが正直、あぁ言った生徒達との接し方には困ってます」
「それに、他の生徒達が可哀想で。不良生徒のせいで学校名だけが悪目立ちして、受験や就職に影響する事もあるんです」
「去年も一昨年も、面接であの城音高校なのかと聞かれたと、卒業生が言ってました。それを聞くだけで僕は鳥肌が……」
不良と分類される生徒達が居るのは、前々から問題視されており、保護者達からも似たような苦情は来ている
今回の逮捕についても、魚が水を得たかのように、それ見た事かと責め立てられた。朝から保護者の電話が鳴り止まない上に、一件一件の対応に、時間を取られたのも、まさしくそのせいだ
田沢
「あいつら税金で学校に通ってるくせに……施設も浮かばれませんね。逮捕者を四人も出したんです、存続は危うい筈ですよ。まっ、それに関しては城音もですが」
校長
「田沢先生、少々言葉が過ぎます。今は理事長もいらっしゃるんですよ」
田沢
「すみませんでした」
太々しく謝る田沢と、理事長の顔色を伺う校長……おそらく、校長も影では田沢と同じような事を言っているのだろうと、理事長は頭を痛めた
理事長も、慈善活動を優先している訳ではなく、たまたま施設と提供し、流れでそうなっただけだ
とは言え、罪を犯した子達の更生になれば良いと思っていたのも事実で、だがそのせいでこうも学校が振り回されてしまうのは、望まない所でもあった
理事長
「施設が潰れたら、受け入れも……潮時か」
学校存続に関わってしまえば、理事長もそう言わざる得ないだろう
いつの間にか話が、捕まった生徒達よりも学校の保身へと切り替わっている事に、わなわなと震えている者が居た
職員室の後ろの席で、誰も彼女に注目しておらず隣に座っている者しか気づいていない
「あ、あの…杉野千先生…どうかされました?」
名前を呼ばれたーー杉野千 杏果は質問には答えず、その代わり勢いよく立ち上がり口を開いた
杉野千 杏果
「今は!そんな話をしている場合じゃないんじゃないですかっ!!」
その場の全員が、杉野千の方を見る
杉野千 杏果
「今回の逮捕で、一番不安なのは生徒達なんですよ。特に三年一組は呪われてるとか騒がれて、他のクラスから虐められる可能性もあります」
校長
「虐めなんて、そんな不謹慎極まりない。滅多な事は言わないように」
杉野千 杏果
「そんな事言ってる場合ですか!」
校長と杉野千が睨み合うのを、職員室の入り口からこっそりと、覗く二名の生徒達が覗いていた
彼らは、三年一組の生徒で自習になっていた所を抜け出し、今の今まで職員会議の様子を盗み見していたのだ
蜂笑
「杏果っち、熱血〜。でもさヤバくね?校長怒ってんじゃん?」
山門
「んな事より、アイツらの逮捕マジっぽいぜ」
蜂笑
「それな」
この二人の男子生徒は、本当に同じクラスの穢佇達が、逮捕されたのかを確かめに来ており、会議の様子から事実なのだと察する
蜂笑
「やっぱさ、例の話言った方がよくない?」
山門
「親に余計な事言うなって、言われてんだよオレ。校長とかにもさ、事件については関わるなって言われてるだろ」
蜂笑
「"警察が解決するからお前らは勉学に集中しろ"ってやつだろ?でもさ、杏果っちよく言ってね?警察は情報が頼りなんだって」
生徒達から慕われている杉野千は、自分がかつて警察官だった事を話しており週に一度、護身術の講座も開いている
この二人の生徒も、講座に参加しており、そこで聞いた話を思い出す
蜂笑
「それにさ、あいつらには虐められてたところを、助けてもらったし」
山門
「何回も聞いたって。それって、穢佇がやらしたってやつだろ?」
穢佇が、雨野と西川と影上を裏で操っているのは、クラス中の噂にもなっており、実際別の学校の不良達を力で黙らせている場面も、目撃されていた
山門
「正直、何考えてるか分かんねーし、怖ぇーよ」
山門は三年間、穢佇と同じクラスだが、いつも教室の隅で一人で座ってる穢佇に、近寄りがたさを感じていた
山門
「そう言えば穢佇って、クラスでも冬葵さんと何回か揉めてたよな」
隅田の娘である、冬葵は真面目な性格ゆえに、誰とも打ち解けようとしない穢佇と、たびたび意見がぶつかっていた
ふと思い出した山門は、職員室に居る教師達のように、冬葵の交通事故と穢佇達の逮捕には、何か繋がりがあるのかもと考える
蜂笑
「大袈裟過ぎじゃん?いつも、穢佇が二、三喋って、冬葵っちが呆れて終わりだったしさ」
山門が何を言いたいのか察していたが、その考えにはのれないのか蜂笑は否定する
蜂笑
「俺だって二人が話してるの見た事あるけど、揉めてるってのとは違う気がすんだよなー」
山門
「いや、まぁ、そうだけどよ…」
歯切れが悪そうにする山門に、蜂笑はふと、真剣な顔で言った
蜂笑
「多分だけど、穢佇はそこまで悪い奴じゃないよ。俺の勘だけど」
山門
「なんだそれ」
ははっと笑う蜂笑に、山門はため息をついたーーその時だった
ガラン
杉野千
「話し声がすると思えば、脱走犯発見」
山門
「げっ」
蜂笑
「ヤバッ」
すっかり、話に夢中になって居た二人は、近づく杉野千に気づかず慌てる
校長
「誰か居るのか」
杉野千
「え?あ、えっと…」
もし、盗み聞きしていた事がバレれば、怒られた挙句、反省文は確実に書かされてしまうだろう。その事が頭をよぎり杉野千は、本当の事を言おうかどうか、迷った
山門と蜂笑は、ジェスチャーと口パクで、謝りながら「見逃して」と伝える。きっと不安から、会議の様子を気にかけていたのだと思うと、杉野千は自然と頷いていた
杉野千
「見つかる前に、早く行って」
蜂笑
「杏果っち、マジ最高」
山門
「いいから、行くぞ」
慌ただしくその場を去る、二人の足音が、静かな廊下に響き渡る
校長
「杉野千先生、生徒が居るんですか!」
杉野千
「足音立てないでよ〜」
どうやって誤魔化そうかと、頭を悩ませていると蜂笑達が逃げた逆の廊下から、別の人物達が歩いて来る
背中越しの人影に、全く気づかない杉野千。彼女の態度に沸を切らした校長は、入り口まで歩き、ちょっとしか開いていなかったドアを、ガラリと開ける
逃げた蜂笑達は、廊下の角を曲がる前だ。ギリギリ見えてしまう、校長の怒鳴り声を覚悟した杉野千だったが、それは意外な形で裏切られた
校長
「これはこれは、皐月さん」
反対側の廊下から、歩いて来た人物ーー皐月と紾に気づいた校長は、厳しい顔つきから笑顔に変え、穏やかな声で言った
皐月は、学校と連携をとり活動しているので、城音高校の校長とは既に顔見知りでもあり、紾と共に冬葵について訪ねに来たのだ
皐月
「急に訪ねてしまい、すみません」
杉野千
「へ?そっち?」
背後から聞こえてくる声に、杉野千は唖然とし、反射的に振り返り紾と目が合う
蔡茌 紾
「すぎ…のせ、どうして…」
まさか、会うとは思って居なかった紾は、自然と彼女の名前を口にしていた。杉野千は質問には答えず、廊下に響き渡るぐらいの驚き声を上げた
杉野千杏果
「せ、せ、先輩?!!!!」
校長
「杉野千先生。お静かに、知り合いなんですか」
本来なら、もっと厳しめに叱るのだが、皐月達の手前、校長は嗜める程度に抑える
杉野千 杏果
「知り合いも何も、警察時代にお世話になった先輩です」
暇さえあれば、紾の事を話しているので、それだけの説明でも、校長は納得した
校長
「あぁ、成る程」
皐月も、明らかに動揺している紾に、杉野千について聞いている
そうこうしているうちに、完全に曲がり角を曲がり逃げ切れた蜂笑と山門
蜂笑
(今の声、杏果っち?先輩って……いつも言ってる?って事は…警察??)
杉野千の大声がしっかり聞こえた蜂笑は、階段を登っている足を止めた
山門
「馬鹿。何してんだよ、行くぞ」
急に止まった蜂笑を不審に思いながらも、山門は声を掛ける…が、蜂笑は首を横に振った
蜂笑
「悪い。俺、今日早退するわ」
山門
「は?」
戸惑う山門に構わず、それだけ言うと蜂笑は、登った階段を降りて校門へと向かった
蜂笑
(やっぱし、警察に言わないとダメな気がすんだよな)
生徒達は、極力事件に関わらないよう教師達に言われている。ただでさえ学校は、揉め事に関しては常に受け身だ
何か分かってからでは遅い。だから、あえて何も分からない振りをする……はやい話が、埃がある所は絶対に叩かない。そう言った考え方で、学校を守ってきている
だから、冬葵の交通事故についても生徒達は言えないし、どこか自分とは関係ないと、思っているのだろう
よほどの正義感でもなければ、高校生なんてそういうもので、良くも悪くも無関心だ
蜂笑もそのうちの一人で、仕方ない事なんだと、どうせ頑張った所で、未成年の証言はそこまで重要視される事はないのだと、他の生徒達と同じように考えていた
だが、穢佇達が逮捕された事で、なんとなく言わなければならないと…そんな気持ちになった
そして、チャンスとでも言うように杉野千の"先輩"が現れた
蜂笑
(きっと、杏果っちの先輩さんなら、俺の話を聞いてくれる)
顔も見た事がなかったが、蜂笑は不思議と杉野千の先輩なら、純粋に信用できると思った
ー
ーー
ーーー
まさか、蜂笑が脱走しているとは知らない杉野千は、誰も居ない食堂の机の上で項垂れていた
杉野千 杏果
「ほんっっとーーに、すみません」
蔡茌 紾
「俺の方こそ、タイミングが悪かった。すまない」
苦笑いをしながら謝る紾。その隣に座り皐月は唸っている
皐月 周
「でも、隅田さんの娘さんと風十くん達、全員が同じクラスとは驚きました」
蔡茌 紾
「あぁ」
皐月と紾は、もしかすると何か関連があるのではと、考えを巡らせる
隅田 冬葵と言う女子生徒について、訪ねに行った二人だったが「今は職員会議中なので」と校長に突っ張ねられてしまった
態度からするに、真面目に取り合うつもりはなさそうなのは誰が見ても分かった
後から訪ねられても面倒だと思ったのか校長は、杉野千に皐月達の対応を任せ、素知らぬ顔で会議へと戻ったのだった
仕方なく、三人は人気のない食堂で話をする事になった
杉野千 杏果
「さっきの会議でも、冬葵さんの事故と関連してるかもって、言われてました」
杉野千は、前に勤めていた学校の推薦により、5ヶ月ぐらい前に移動して来ており、しかも一年生クラスの副担任
元警察官という事もあり週に一度、護身術の講座を開いていて、そこに参加する生徒達とは触れ合っているが、参加していない生徒に関しては、完全に管轄外だった
杉野千の話を聞くに、冬葵は生徒会長で毎日挨拶をし、いつも周りに人が居た明るい子
影上は、生徒会の仕事でよく冬葵と一緒に居るのを見かけた事があり、雨野や西川ともよく一緒に居た
この三人の素行は、確かにあまり良くはなく悪い意味で目立ったが、杉野千からすれば"不良"ではなかった
杉野千 杏果
「どちらかと言えば、影上くんは普段は大人しいんですけど、生徒会の仕事をしてる時は生き生きしてるし、雨野くんと西川くんは常に一緒で、ガタイ良いしツリ目だから怖がられてるけど、挨拶運動の時は必ず挨拶してくれるし、一年生の間では数人の女子達から人気もあるんですよ」
素行の悪さは目立つが、彼らは穢佇と出会った事で、前のままじゃいけないと思ったのかもしれない
杉野千の話を聞いて、資料のままじゃない彼らを、皐月も紾も感じとれた
皐月 周
「あの、かざ…穢佇くんについては、何か知りませんか?」
その質問に対し杉野千は、むむむっと唸る
杉野千 杏果
「私もさっきから、記憶を呼び起こしてるんですけど…名前と顔が出て来ないんですよね。とは言っても、私もほとんど一年クラスに居るので、他の学年の生徒と会うのは、中庭とか校門…食堂ぐらいなんですけどね」
皐月 周
「そう、ですか」
どうやら、穢佇は学校内ではあまり人と関わらず過ごしているようだった
皐月 周
「せめて、担任の先生か同じクラスの生徒に話を聞ければ、何か分かるかもしれないですね」
校長に厄介払いされてしまい、情報が得られない今、突破口があるとすればそれしかないだろう
杉野千 杏果
「ダメです!」
蔡茌 紾
「ダメって、またどうして」
間髪入れずに、拒絶されてしまい紾は驚くが、察していたのか皐月は「やっぱり」と言った
皐月 周
「さっきの校長先生の態度といい、恐らく事件に関して学校は、知らぬ存ぜぬで通すつもりでしょう。令状や任意の取り調べとなれば別ですが、どちらにしても割いてる時間がありません」
こうしている今も、穢佇の取り調べ終了の時間が迫っている
杉野千 杏果
「それだけじゃないです、生徒達もかなり動揺してて…特に親御さんからも、事件には関わらせるなって。それに関しては、私も教師として見過ごせません!」
キッパリと言い切られてしまうと、皐月も紾も無理に言えなかった
確かに手当たり次第、生徒達に話を聞き回った所で、不安を煽ってしまうだろう。杉野千が見過ごせないと言った理由も、生徒達を思っての事だ
それに、今は自習中で、そんな時に警察が割り込んで話を聞き回ったとなれば、朝のニュースの話題になってしまうのは確実だった
蔡茌 紾
「何か手掛かりが掴めればと、思ったんだけど…」
空振りの結果に、紾は頭を悩ませる
杉野千 杏果
「先輩!こう言う時は、一度事件を洗い直したら、どうでしょうか!」
皐月 周
「確かに、それも良いかもしれませんね」
二人に言われ、紾も頷く
杉野千も居るので、隅田一課長と穢佇の関係性については、黙ったままで三人は事件を振り返る
杉野千 杏果
「2ヶ月前に、隅田さんが別の学校の生徒と車に乗ってて、交通事故に遭ったんですよね…噂によれば無理矢理乗せられたんじゃって、だから抵抗して、その拍子に交通事故に遭った可能性があるって、新聞とかにも書いてありました」
自分の学校の生徒が巻き込まれた事故を、杉野千は気にかけており、新聞やニュースなどはチェックしていた
だが、不自然な事に事故についてはどこも憶測ばかりで、真実は明かされていない
もちろん、他校の男子生徒については警察で調べれば分かるが、捜査一課が情報を提供してくれないせいで、今の紾達では分からないだろう
皐月 周
「僕も、何度かニュースを見てましたが、杉野千先生の言う通り、事故の時間帯が深夜だった事もあって、そういう風に報道されてましたね。相手は男で未成年者…普段の素行が悪いと言う事もあって、元不良学生と言われてました」
蔡茌 紾
「元不良学生?」
杉野千 杏果
「確か、半年ぐらい前に問題を起こして、退学になったって…週刊誌とかも買ったんですけど、退学理由は特に載ってなかったんですよね」
不良学生が退学になった理由。いかにも記者が飛びつきそうなネタだが、誰もそこには突っ込んでいない事に、杉野千は少し引っかかっていた
皐月 周
「言われてみれば!何か、載せられない理由があるんでしょうか?」
杉野千 杏果
「週刊誌やニュースで取り上げない理由って、なんなのー」
これに関しては、紾に心当たりがあった
廃校舎での事件で、警察も記者も肝心なのは事件の真実ではなく、未成年者誤認逮捕について、どう世の中に発表するかだった…
警察は都合が悪い事は、証拠不十分だと言って公にせず、あくまで誤認逮捕についてだけ触れた
対して、ニュースや週刊誌では、今まで悲惨な未成年犯罪だと発表していたにも関わらず、誤認逮捕だと分かれば、警察が悪いと叩きだした
結局は、警察も記者達も、都合の悪い事は全て触れずにいた…そんな世間の動きを見ていた紾には、杉野千の疑問が嫌と言うほど、理解できていた
蔡茌 紾
「誰も退学理由に触れないのは、都合が悪いからだと思う」
紾の言葉の意味に気づいた皐月は、だんだんと顔を青くさせていく
皐月 周
「……だとすれば、根底から裏返ってしまう気が…」
杉野千 杏果
「??それって、どう言う事ですか?」
いまだに、分からず眉間に皺を寄せる杉野千に、紾は言いにくそうに口を開いた
蔡茌 紾
「恐らくだが、ニュースで取り上げられているような人物じゃ、ないかもしれない…つまり……深夜に女の子を連れ去る事は…ないんじゃないかと…」
紾は、さっき教師としての杉野千を知ったばかりだが、彼女が生徒思いで良い教師なんだと分かっていた
だからこそ、事件について掘り返すような話をするのは、心苦しかった。もし、紾の言う通りなんだとすれば、少なくとも隅田 冬葵は、同車した男と顔見知りな可能性がある
たまたま深夜に歩いていて、帰るのにヒッチハイクしたとは、考えにくい…
蔡茌 紾
「深夜に彼女が歩いていたのも、辻褄が合う気が…するんだ」
そもそも歩いていたのかすら怪しい、もしかすると出掛けていたのかもしれない
紾の話を黙って聞いていた杉野千は、しばらく何かを考えると、真っ直ぐに紾を見た
杉野千 杏果
「蔡茌先輩……なんとなく、私も…そんな気がするんです。生徒って、学校で見せる顔と家の中で見せる顔が違うんです。スクールカーストとも言うんですけど、私達教師は、学校での生徒しか知らないから……でも、だとしても、生徒達の真意は分かるつもりです」
蔡茌 紾
「あぁ」
真っ直ぐに見る彼女の瞳は、先程会った茂望のように、自分の職業を通していくつもの、人間を見てきた瞳と似ていた
ただ、一つ違うところは…
杉野千 杏果
「隅田さんは、絶対に間違った事はしない子です……だから、私が生徒達から話を聞いてみます」
彼女は、生徒を信じられる教師だと言う事だ
〜杉野千 杏果プロフィール〜
性別/女 年齢/26歳 誕生日/3月28日 血液型/O型
好きな食べ物/パンケーキ 嫌いな食べ物/アボカド
好きな飲み物/豆乳 お気に入りスポット/喫茶店はんなり
経歴/元は警察官だったが、20歳の時に起きた事件により退職。自分が体験した事件から、子供達に寄り添いたいと考え教師になる
性格/明るく元気な性格だが、思い悩む事もしばしば…。生徒達からは慕われてはいるが、若干熱血な所がたまにキズらしい…




