イベント二日目 昼3
「あ、サルマンは見張りよろしくな」
「うむ。期待して待っているぞ。主よ」
「ぼ、く…もいく」
「ん、そうか。じゃ、出発だ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「グル(ここです)」
「「おぉぉ…」」
「?お、ぉ?」
クマ吉について森を進むと、透き通った水の湖についた。そしていつも見ている以上に魔力が濃く、キラキラしている。
「グル、グルル(ここの魚、美味い)」
「なるほど」
「綺麗なところですねぇ…」
「みず、うみ…」
魚か…確かにそこそこの数がいるな…。う~む、ライラとサルマンの分……足りるかなぁ?これにクマ吉とボマーゼ分だろ?…………足りなそう。
「はぁ…」
「ど、どうしたんですか?」
「お前がもう少し少食だったらなぁ…。太るぞ?」
「ちょっ?!乙女に向かってなんですかそれはぁ!!?」
「あ」
「あ!」
「ドボンッ」
確かに失礼なことは言ったと思うけど押さなくてもいいじゃないか。濡れたぞ?
「深くないところで助かったな」
「あ、えと、ごめんなさい…」
「いや、いいよ。俺も悪いし」
乾かす魔法って出来るかな…?いや、どっちかって言うと水を取り出す魔法か…?
「…ん?あれ、グレスさんそれって…スラ「!!??」…え?」
くそっ!!スライムだと?!なぜこんなところにやつが!いや、そんなことはいい!早く脱がないと!
「よし!『ファイア』!!!」
今まで出した中で一番威力が高いハズだ。これで死ななかったらマジで化けもんだぞ…?………よし、完全に消滅したな。あー…、でも防具がドロドロに溶けちゃったな……。勿体ねえ…。
「はぁ……。まあ、死ぬよりかはましだよなぁ…」
「あ、あの、グレスさん…?」
「ん?何?凶悪生物は死滅したよ?」
「凶悪生物…?スライムですよね?」
「スライムは凶悪生物だろ。物理攻撃が効かなくてそれでいて体は流動的。顔に張り付かれたら息できなくて死ぬんだぞ?」
「そんなモンスターでしたっけ?私の知ってるスライムは打撃系の攻撃に強くて斬撃や刺突には弱いハズなんですけど…」
「…」
……なるほど。やっぱりあの森のモンスターは異常なんだな…。
「って、そんなことよりも!…グレスさんって女の子だったんですか?!」
「…ん?ああ、そうだよ」
「なんで、言ってくれなかったんですか?!」
「ん~………聞かれなかったから?」
「~!こ、こんな人に、私……」
「どうした?」
「なんでもないです。はぁ…、夜身構えてたのがバカみたいですね…」
「夜?なんで?」
「……もういいです。クマ吉さん、魚獲りましょう」
「グル…(はい…)」
「???」
まあ、よくわかんないけど、魚獲るかぁ。っと、その前に、『ドライ』…うん、乾いた。これで大丈夫そうだな。んじゃ、靴脱いで、裾捲ってと……ん?
「グレス、ぼく、は…?」
「んー…、裾捲って」
「う、うん」
「一緒にやろうか」
「っ…うん!」
……。
「魚、どう、獲るの?」
「ん?まあ見てな」
えーと、お、こいつにするか。…近くに泳いで来た所を…、手で、掴む!!!
「おー」
「やってみな」
…あ、でもステータスで筋力の数値0だったような…。
「グレス、獲れない…よ?」
「…あ~、じゃあ水辺に囲いを作っておいてくれないか?」
「わかった」
「ありがとう」
さて、俺はどんどん獲りますか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「戻りましたよーって、あれ?まーちゃん、グレスさんは?」
グレスらから離れ、クマ吉と一緒に魚を獲っていたライラが戻ってくる。しかし、そこにはボマーゼが一人で魚がいる囲いを見ているだけだった。
「……ぼく、ボマーゼ、だよ?…グレス、は、あっち」
まーちゃんと呼ばれ疑問に思いながらも質問に答えるボマーゼ。指差す先には、湖。見れば、ボマーゼの近くには折り畳まれた衣服が置いてあった。
「まさか潜りにいったんですか?」
「うん。なんかいる、って、言ってた」
「何か、って…。はぁ……」
「グル…」
ライラ、クマ吉共に呆れている様だ。短い付き合いだが、何となくどうしようもないとわかるのだろう。と、そんな時、湖から突然大きな水柱が上がった。
「グル!?グルルア!!」
真っ先に動いたのはクマ吉、素早くボマーゼとライラを掴まえ、離れる。次いで、ライラ。
「な、なんですか?!あのデッカイ魚みたいの?!」
水柱が上がった更に上、強い何かによって打ち上げられたからなのか、全く微動だにしない魚に似たモンスターがいた。
「あー…」
一人、ボマーゼだけは、グレスに頼まれて作った囲いが壊れ、中にいた魚達が逃げ出してしまい残念がっていた。
そして、打ち上がったモンスターが落ちて軽い地響きをたてると、湖の中からさらしを巻きパンツを穿いて手に剣を持った人が上がってきた。
「あー、結構上がったなぁ…ん?あれ?俺の服どこ行った?」
さっきの水柱が収まる時の波に全て持ってかれている。
「はあ?ったく、面白そうなのいると思って潜れば一撃で終わる弱いやつだし、服は流されるし、さんざんじゃねえか。せっかく捕まえた魚もいないし…」
自業自得である。
しばらく落ち込んでいると、グレスのもとにクマ吉達が戻ってくる。
「グル!グルルア!グルゥ?」
「…ごめん」
クマ吉に何かを言われ、素直に謝るが、あまり反省していないようだ。
「グレスさん、その魚は…?」
「湖の底にいたやつ。強そうだったからちょっかいかけたんだけど…この様よ」
「はぁ…」
呆れられた。
「グレス、魚…逃げられちゃった…」
「いや、いいって。俺が悪い。そんなに落ち込むな」
魚を逃がしたことで落ち込むボマーゼ、それを慰めるグレス。
「ところで、この魚どうするんですか?」
「食べる」
「即答ですか…」
「いや、これでも足りないかもしれないくらい食べるの…誰だっけ?」
「うっ」
言葉の刃で的確に攻撃するグレス。ライラも自覚があるので押し黙る。
「まあ、とりあえずそっちも魚は集めたんだろ?」
「…あ、はい」
「じゃあ戻るか。腹減ってんだろ?」
「それはそうなんですけど…、グレスさん服は?」
「あー…」
湖に浮いていたグレスの衣服は、いつの間にか姿を消していた。実はグレスが起こした騒ぎで地底付近にいた大型の魚が水上まで上がってきて服を飲み込んでしまったのである。どうしようもない。
「…どこいったんだろうな?まあ、しょうがない。これを着てるよ。着てるっつうかつけるっつうか…、まあ、あれだ」
「どれです?」
「まあ見とけって」
そう言った途端、グレスの体、否周りが光だし、次の瞬間には、剣を腰に提げた黒銀の全身鎧を見に纏ったグレスがいた。
『どうだ?』
「…その、なんと言うか……もう少し見た目どうにかなりませんか?」
龍の頭部を模した兜は威圧感が強い、くぐもった声からは感情が読み取り難く、全身の刺々しい印象を与える装飾のせいで更に恐ろしい。
『じゃあ、こういうのは?」
龍の兜が突然無くなり、全身にあった鎧が胸、前腕、足腰を残し全て消える。そうして出来たグレスの格好は拳闘士のようで、腰の後ろに剣を下げている。ちなみに消えた鎧部分は他の部分に統合され、強度が増している。
「どうだ?」
「まあ、さっきのよりかはいいですけど…」
「んじゃ、いいだろ。行くぞ」
「グル」
「うん」
「はい」
巨大な魚を持つと一行は拠点への帰路についた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
はぁ…。初期装備・改気に入ってたんだけどなぁ…。どうにか呼び出せないかなぁ…。う~ん…。
「…ぬ。主達か、どうであった?」
「ああ、これ見ろよ。収穫はあったぜ」
「ほう…」
「他にも魚を獲ってきてるので、お昼もお夕飯も大丈夫ですよ!」
「…どうだか」
このデカイのだけで一食分だろうに…。
「ところで主よ。その格好は?」
「ん?これか?いやーそれがさぁ、元の服なくなっちゃったみたいでよ。仕方ないからこれ着てんだわ」
「なるほど」
「そんなこと気にしてないで、早くご飯にしましょうよ!」
「あー、はいはい…。はぁ…自分でやればいいのになぁ…」
『ファイア』。よし、んで、このデカイのを、んーとりあえず解体して、軽く焼くか。
「少し待ってろよ」
「はい!」
「うむ。出来るだけ早くな、主」
「グルゥ(楽しみです)」
「…?」
はぁぁぁ……。午後はどうすっかなぁ……。
誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。では。




