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対戦成績

「なんでこんなことに」




ハヤトは普段はクローゼットにしまい込んでいるそれなりに値の張る衣装に身を包んでいた。



セーラと旅をしている時、一着くらいはこういう衣服を持っていなければいけないこともあると言われ嫌々購入したのだが、まさかほんとうに役立つことがあるとは。




「タキシード着てるからか、通行人が何事かとチラチラ見てくるし……………居づらいけど

、ルティアがまだ来てないし待ち合わせ場所から離れるのは良くないよな」




「なーに、一人でボソボソ言ってるのよ、側から見たら危ない人なんだけど?」




「やっと来たのか………………っ!」




「な、何よ……………………あんまりジロジロ見ないでよ…………………もしかして、どこか変?」




ルティアは学生なため普段はもちろん学生服を着ているわけなのだが、今日は違った。待ち合わせ場所に現れたのは青いドレスに身を包み、普段はツインテールの髪型を首の後ろで1つにするポニーテールに髪型を変えていた。

そして、いつもと違う化粧に普段でさえ意識しすぎないようにじっくり見ないようにしているのだが、今回ばかりはあまりの美しさに目が離せなくなってしまっていた。




「……………もしかして似合ってないかな、リエラみたい大きくないし、リズみたいにスタイル良くないから。 えへへ、なんかごめんね。 こんな幼女体型のドレス姿なんか見せて、男の子は大きいのが好きなんだもんね」




「いや、ごめん。 あまりに綺麗だったからさ…………………見惚れてたんだよ、普段のルティアよりもさらに大人っぽいからさ」




「………………ば、ばか………………へへっ」




ルティアはドレスの裾を掴み、全身をモジモジさせている。通行人たちはタキシードとドレスの組み合わせに王族か何かが買い物中とでも思っているのか、2人に対して話しかけてみようという勇者はいないようだった。



「で、なんでここで待ち合わせなんだ? しかもこんな大通りで待ち合わせなんてさ。 今からどこか行くんだろ? 俺はともかくルティアはその格好だと動きにくくないか?」




ハヤトは革靴とはいえ、本国にいた時のトレーニングで鉄の下駄、裸足で雪の上でランニングするなどのトレーニングは行ってきた。革靴で走ることなど普段履いている靴と大きな差はない。




「別に歩いて行くわけじゃないから、ほら来たわよ」




「ん?」




ルティアの指差す方向から、二台の馬車がゆっくりとやってきた。 黒く光る肌に筋肉質な馬がブルルと鳴きながら動きを止めた。

運転士が馬車から降り、ルティアの前に立つと帽子を取ってからゆっくりと膝をついた。




「おまたせいたしました、お嬢様。 そちらがお嬢様の話にあったお方でしょうか」




「ええ、か、彼が………………………私の恋人のハヤトよ」




「お父上様、お母上様がお待ちでございます。 どうぞお乗りくださいませ、荷物は後ろの馬車の者にお預けください」




2人は運転士が言うように、もう1つの馬車の運転士に荷物を預け、ルティアに続いてハヤトも馬車に乗り込んだ。




「で、詳しく聞かせてくれよ。 俺がここに呼び出されたわけと俺のことを『恋人』って言ってた意味をさ」




「そ、その………………私こんなガサツでも一応は貴族の出というか、自分で言うのも変なんだけどお嬢様だからさ、お見合いとか婚約をさせられそうなことが最近になって増えてきたから、恋人でもいるって言えば家も諦めるかなぁ…………なんて」




「……………つまり、俺はルティアに利用されたってわけね」




「ご、ごめん。 こんなことお願いできる異性なんてハヤトしかいなかったから、サラには怒られるかもだけど 」




「なんでそこでサラの名前が出てくるんだよ、それに女の子に頼られちまったら男としては女の子のために頑張るしか無いだろ」




ハヤトはルティアの頭を優しく、ルティアを安心させるように頭のラインに沿って撫でた。 撫でるたびにふわっとルティアのポニーテールが反応するかのように揺れている。




「……………なんか、前々から思ってたんだけど、ハヤトって女の子の扱いに慣れてるって言うか、少しだけチャラい気がする」




「………………俺、チャラい?」




ルティアのように同年代の女の子にチャラいと言われると、少しだけショックを受けてしまった。




「付き合ってるわけでもないのに女の子の頭を簡単に撫でる男が居たら普通は驚くと思うんだけど………………私は嫌じゃないけど」




「ん?」




ルティアの呟いた一言の後半が上手く聞き取れなかったが、少なくとも今後は簡単に女の子の頭を撫でるようにすることはやめた方がよさそうだった。 ハヤトも年頃の男子として、同年代の女の子にチャラいとこれ以上言われたくはない。




「………………やめちゃうの?」




「いや、だって嫌なんだろ? ルティアの嫌ことはしたくないしさ、せっかく綺麗におめかししてるんだし、その髪型が乱れるのも嫌だろ?」




「……………チャラいって言わなきゃ良かった」




ルティアが小さく呟いた一言はハヤトの耳に入ることはなかったようで、ハヤトはルティアのことを一瞬見た後に窓の外を眺めた。

いつの間にか街から離れていたようで、景色は緑豊かな平野のど真ん中を馬車が走っているようだった。



「そういえば、なんで馬車で向かうんだ? 転送鉱石とか使えばすぐだろ?」




「……………私が馬車が好きなのよ、馬車にいると一人で居られるから」




「…………お前にはサラがいるだろ? 俺もいるし、ネリーやリエラ、リズベットだって」




「………………ハヤト、私がリズベットに何回対戦を挑んで何回負けたのかわかる?」




ルティアは窓の外を覗いたまま、ハヤトの方に顔を向けずにハヤトに対して話を振った。

ルティアは度々見せる孤独と嫉妬の入り混じった顔だった。




「えっと…………20戦10勝10敗とかか? 2位と1位なんだし、実力的にはそんなに大きな差はないだろ? 属性や能力の相性とかはあるかもしれないけどさ」




「……………………正解はね、126戦126敗で私の惨敗なのよ」




「は?」




ハヤトはかつてないほど気の抜けた声が出てしまった。 ルティアとリズベットの戦いを何度も見たことがあるわけではないが、先日の依頼で魔物を倒したルティアの戦い方、弓使いという火力はあまりないとされる魔導具を使いながらも凄まじい一撃を放っていたし、模擬戦でもルティアはランキングの近いサラ、ネリー、リエラなどの面々とは良い勝負をしていたと記憶をしていたので、ルティアの回答は予想の斜め上を向く回答だった。




「私は入学する前から、リズベットとは知り合いで何度か戦いを挑んだの、それから学園に入学してからも何度も戦いを挑んだけど、私はあの子に勝てそうになったことすらない。 私の攻撃はあの子に当たらないから」




「当たらない?」




ルティアの言っていることがハヤトにはよくわからなかったのだ。 ルティアの矢を射抜く技術は素晴らしいし、あそこまでの弓使いはボストニアどころか大陸全土を探してもそうそう会えるものではないはずだ。 そのルティアが当たらないと文字通り匙を投げるような言い方をしているということは、リズベットは相当動きの速い戦闘スタイルをするのだろうか、ザルドとリエラの倒したドジャーという男たちもかなりの使い手で動きの素早い2人だったが、あの2人よりも速いのだろうか。




「それってどういうことだ? 前にも聞いたけどさ、あいつの能力って一体なんなんだ」





「彼女の魔法は重力操作………………のはずよ」




「………………………はず?」



「あの子の力は謎が多すぎるわよ、矢がリズベットに当たる直前に地面に落ちるのよ、何かの力に操られているように」



「なるほど、それは重量操作の可能性は否定できないってことか」


ハヤトは学園に通った経験はほとんどないし、ランキングという制度自体ほとんど馴染みはない。


だからこそ、こうして改めて2位と1位の差を感じずにはいられなかった。



「俺が戦っても負けるかな」



「わからない、そもそも私以外にあの子に試合を申し込んだ人を見たことないし、新入生だった時も先輩達はリズベットに新人イビリみたいなことしてなかったから」



「そっか、やっぱり凄いんだな」


ハヤトの一言を最後に、2人の会話が続くことはなかった。 ハヤトはなんとなくだが、ルティアに話しかけることができずにいた。いや、話しかけない方がいいと思っていたのかもしれない。





「…………起きなさい、ついたわよ」



「…………んっ? 寝てたのか、俺」



ルティアに起こされ目を覚ますと目を擦りながら、馬車のから降りる。


「こいつはすごいな…………」



そこには小説に出てくるであろう、大豪邸がその場所に広がっていた。

「なんでこんなことに」




ハヤトは普段はクローゼットにしまい込んでいるそれなりに値の張る衣装に身を包んでいた。



セーラと旅をしている時、一着くらいはこういう衣服を持っていなければいけないこともあると言われ嫌々購入したのだが、まさかほんとうに役立つことがあるとは。




「タキシード着てるからか、通行人が何事かとチラチラ見てくるし……………居づらいけど

、ルティアがまだ来てないし待ち合わせ場所から離れるのは良くないよな」




「なーに、一人でボソボソ言ってるのよ、側から見たら危ない人なんだけど?」




「やっと来たのか………………っ!」




「な、何よ……………………あんまりジロジロ見ないでよ…………………もしかして、どこか変?」




ルティアは学生なため普段はもちろん学生服を着ているわけなのだが、今日は違った。待ち合わせ場所に現れたのは青いドレスに身を包み、普段はツインテールの髪型を首の後ろで1つにするポニーテールに髪型を変えていた。

そして、いつもと違う化粧に普段でさえ意識しすぎないようにじっくり見ないようにしているのだが、今回ばかりはあまりの美しさに目が離せなくなってしまっていた。




「……………もしかして似合ってないかな、リエラみたい大きくないし、リズみたいにスタイル良くないから。 えへへ、なんかごめんね。 こんな幼女体型のドレス姿なんか見せて、男の子は大きいのが好きなんだもんね」




「いや、ごめん。 あまりに綺麗だったからさ…………………見惚れてたんだよ、普段のルティアよりもさらに大人っぽいからさ」




「………………ば、ばか………………へへっ」




ルティアはドレスの裾を掴み、全身をモジモジさせている。通行人たちはタキシードとドレスの組み合わせに王族か何かが買い物中とでも思っているのか、2人に対して話しかけてみようという勇者はいないようだった。



「で、なんでここで待ち合わせなんだ? しかもこんな大通りで待ち合わせなんてさ。 今からどこか行くんだろ? 俺はともかくルティアはその格好だと動きにくくないか?」




ハヤトは革靴とはいえ、本国にいた時のトレーニングで鉄の下駄、裸足で雪の上でランニングするなどのトレーニングは行ってきた。革靴で走ることなど普段履いている靴と大きな差はない。




「別に歩いて行くわけじゃないから、ほら来たわよ」




「ん?」




ルティアの指差す方向から、二台の馬車がゆっくりとやってきた。 黒く光る肌に筋肉質な馬がブルルと鳴きながら動きを止めた。

運転士が馬車から降り、ルティアの前に立つと帽子を取ってからゆっくりと膝をついた。




「おまたせいたしました、お嬢様。 そちらがお嬢様の話にあったお方でしょうか」




「ええ、か、彼が………………………私の恋人のハヤトよ」




「お父上様、お母上様がお待ちでございます。 どうぞお乗りくださいませ、荷物は後ろの馬車の者にお預けください」




2人は運転士が言うように、もう1つの馬車の運転士に荷物を預け、ルティアに続いてハヤトも馬車に乗り込んだ。




「で、詳しく聞かせてくれよ。 俺がここに呼び出されたわけと俺のことを『恋人』って言ってた意味をさ」




「そ、その………………私こんなガサツでも一応は貴族の出というか、自分で言うのも変なんだけどお嬢様だからさ、お見合いとか婚約をさせられそうなことが最近になって増えてきたから、恋人でもいるって言えば家も諦めるかなぁ…………なんて」




「……………つまり、俺はルティアに利用されたってわけね」




「ご、ごめん。 こんなことお願いできる異性なんてハヤトしかいなかったから、サラには怒られるかもだけど 」




「なんでそこでサラの名前が出てくるんだよ、それに女の子に頼られちまったら男としては女の子のために頑張るしか無いだろ」




ハヤトはルティアの頭を優しく、ルティアを安心させるように頭のラインに沿って撫でた。 撫でるたびにふわっとルティアのポニーテールが反応するかのように揺れている。




「……………なんか、前々から思ってたんだけど、ハヤトって女の子の扱いに慣れてるって言うか、少しだけチャラい気がする」




「………………俺、チャラい?」




ルティアのように同年代の女の子にチャラいと言われると、少しだけショックを受けてしまった。




「付き合ってるわけでもないのに女の子の頭を簡単に撫でる男が居たら普通は驚くと思うんだけど………………私は嫌じゃないけど」




「ん?」




ルティアの呟いた一言の後半が上手く聞き取れなかったが、少なくとも今後は簡単に女の子の頭を撫でるようにすることはやめた方がよさそうだった。 ハヤトも年頃の男子として、同年代の女の子にチャラいとこれ以上言われたくはない。




「………………やめちゃうの?」




「いや、だって嫌なんだろ? ルティアの嫌ことはしたくないしさ、せっかく綺麗におめかししてるんだし、その髪型が乱れるのも嫌だろ?」




「……………チャラいって言わなきゃ良かった」




ルティアが小さく呟いた一言はハヤトの耳に入ることはなかったようで、ハヤトはルティアのことを一瞬見た後に窓の外を眺めた。

いつの間にか街から離れていたようで、景色は緑豊かな平野のど真ん中を馬車が走っているようだった。



「そういえば、なんで馬車で向かうんだ? 転送鉱石とか使えばすぐだろ?」




「……………私が馬車が好きなのよ、馬車にいると一人で居られるから」




「…………お前にはサラがいるだろ? 俺もいるし、ネリーやリエラ、リズベットだって」




「………………ハヤト、私がリズベットに何回対戦を挑んで何回負けたのかわかる?」




ルティアは窓の外を覗いたまま、ハヤトの方に顔を向けずにハヤトに対して話を振った。

ルティアは度々見せる孤独と嫉妬の入り混じった顔だった。




「えっと…………20戦10勝10敗とかか? 2位と1位なんだし、実力的にはそんなに大きな差はないだろ? 属性や能力の相性とかはあるかもしれないけどさ」




「……………………正解はね、126戦126敗で私の惨敗なのよ」




「は?」




ハヤトはかつてないほど気の抜けた声が出てしまった。 ルティアとリズベットの戦いを何度も見たことがあるわけではないが、先日の依頼で魔物を倒したルティアの戦い方、弓使いという火力はあまりないとされる魔導具を使いながらも凄まじい一撃を放っていたし、模擬戦でもルティアはランキングの近いサラ、ネリー、リエラなどの面々とは良い勝負をしていたと記憶をしていたので、ルティアの回答は予想の斜め上を向く回答だった。




「私は入学する前から、リズベットとは知り合いで何度か戦いを挑んだの、それから学園に入学してからも何度も戦いを挑んだけど、私はあの子に勝てそうになったことすらない。 私の攻撃はあの子に当たらないから」




「当たらない?」




ルティアの言っていることがハヤトにはよくわからなかったのだ。 ルティアの矢を射抜く技術は素晴らしいし、あそこまでの弓使いはボストニアどころか大陸全土を探してもそうそう会えるものではないはずだ。 そのルティアが当たらないと文字通り匙を投げるような言い方をしているということは、リズベットは相当動きの速い戦闘スタイルをするのだろうか、ザルドとリエラの倒したドジャーという男たちもかなりの使い手で動きの素早い2人だったが、あの2人よりも速いのだろうか。




「それってどういうことだ? 前にも聞いたけどさ、あいつの能力って一体なんなんだ」





「彼女の魔法は重力操作………………のはずよ」




「………………………はず?」



「あの子の力は謎が多すぎるわよ、矢がリズベットに当たる直前に地面に落ちるのよ、何かの力に操られているように」



「なるほど、それは重量操作の可能性は否定できないってことか」


ハヤトは学園に通った経験はほとんどないし、ランキングという制度自体ほとんど馴染みはない。


だからこそ、こうして改めて2位と1位の差を感じずにはいられなかった。



「俺が戦っても負けるかな」



「わからない、そもそも私以外にあの子に試合を申し込んだ人を見たことないし、新入生だった時も先輩達はリズベットに新人イビリみたいなことしてなかったから」



「そっか、やっぱり凄いんだな」


ハヤトの一言を最後に、2人の会話が続くことはなかった。 ハヤトはなんとなくだが、ルティアに話しかけることができずにいた。いや、話しかけない方がいいと思っていたのかもしれない。





「…………起きなさい、ついたわよ」



「…………んっ? 寝てたのか、俺」



ルティアに起こされ目を覚ますと目を擦りながら、馬車のから降りる。


「こいつはすごいな…………」



そこには小説に出てくるであろう、大豪邸がその場所に広がっていた。

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