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契約精霊


「おい、ババア! こんなに持てねえよ!」


「私に拾って貰った命なのに、文句言えるの?」


「ぐっ…………」


ハヤトは家を破門にされ、彷徨っていた時に、不思議な女性と出会い服がボロボロに擦り切れ、やせ細り空腹で倒れていたハヤトの命を救った。


「何が一緒に来ますか? だよ、こんなんじゃ強くなるとかじゃなくてただの荷物持ちだ」


「ふふっ、ここまで生意気な話せるようになったならもう大丈夫ね」


「話聞けよ!」


セーラは重たい荷物を引きずるように運ぶハヤトを置いてどんどんと進んでいってしまう。


「くそ、いつか殴ってやる」


「へえ、やってみる?」


「おわっ!?」


ハヤトよりもはるかに先を歩いていたはずのセーラはいつの間にか目の前に立って居た。


瞬間移動でもして来たのか、それとも姿を消してても居たのだろうか。


「ふふふ、このレベルで驚くだなんて、まだまだ子供ね」


「いつか殴ってやるからな!」


「ハヤトがそれくらい強くなれるように私も協力するわね」


「なめやがって」


セーラが強いのはよくわかっている、いつだったか、父親に各大陸で最も最強になった六人がいたという話を聞いたのだ。


その六人はランキング制度が設立されてから、史上初のランキングの順位を一度も落とさなかった六人で、それぞれ記憶に残るような2つ名を持ち合わせていた。


「西欧の業魔 セーラ・バーチュリー」


ハヤトは再び歩き出したセーラのなびく長髪を眺めながらぽつりと呟いた。


「業魔って、人間に付けられる名前じゃねえよな」


セーラが実際に戦っているのは見たことがない。 セーラと共に立ち寄った、港町では何度もギャングに絡まれたが、セーラの名前に気付いたとき、セーラの視線に何かを感じ取った時、ギャングたちは武器を捨て命乞いをしてきくる。


中には、武器を捨てずに襲いかかるものたちもいたのは確かではあるのだが、セーラは襲いかかられてた場合は「ハヤト、お願いね」

とハヤトに戦いを任せて後ろへ下がってしまった。


おかげで、かなり戦いの勘は戻ってきたが、それにしても、他に自分を鍛える方法はあっただろ!と何度も殴り掛かったことはあるが、ハヤトの猛攻は当たる気配もなく、ひらひらと避けられてしまった。


「さ、今日はここに泊まろうか、ハヤト」


「すげえ、年季入ってんな、ここ」


「ここは指名手配犯や身を追われる者たちの隠れ蓑になることが多いから、外観はわざとこうしているのよ」


「大丈夫なのかよ、そんなところで」


ハヤトが心配そうにボロボロの看板を見上げると、セーラはハヤトの頭の上にポンっと手を置いた。


「ハヤト覚えておきなさい、悪人が好きで悪人になったばかりではないってことをね。 ハヤトだって仕方なく人を殺めていた。 それと同じことよ」


「………わかった、悪人にだって家族がいたりするんだもんな」


「うん、物分かりのいい子は私好きよ、後でデザート買ってあげる」


「そんなのはいいから、修行させてくれよ!」


セーラの上手いかわし方で、またも修行の話を忘れるところだった。


ハヤトはセーラと共にいるのは、セーラへの恩を返したいからでも、荷物持ちでもない。強くなるために、ここまで彼女についてきたのだ。


「そんなに修行したいの? 君も男の子ねハヤト」


「いつになったら、こいつとの契約の仕方を教えてくれるんだよ」


「精霊になってもその子が好きなの? 今時珍しい子よね。 まぁ、教えないというより今の君には無理といった方がいいのかな」


「どういうことだ」


「君はその歳にしては、魔力も高いし、戦闘意識や武器の扱いにも慣れていて眼を見張るものはある。 問題はその刀になった女の子の方よ。 まっ、話は部屋の中でしましょう」


セーラは不満そうな態度のハヤトと共に宿への宿泊手続きを行い、受付から部屋の鍵を受け取り戻ってきた。


「先に部屋に行っててくれる? 私は軽く用事を済ませてくるから」


「用事? 別にいいけどよ」


「助かるよ、鞄も持って行ってくれるかい?」


二人の持ち物は、ハヤトの荷物とハヤトがヘトヘトになりながら持ってきていた革のバッグだけだったが、その皮のバッグが信じられないほど重かった。


何が入っているのかとセーラに問い詰めたものの、話を誤魔化すばかりで教えてくれなかっただけでなく、開けることも禁じていたのだ。


しかし、そのセーラは出かけるという。 軽い用事とはいえ、バッグの中身を軽く見ることくらいはできるだろうとハヤトはセーラにバレないようにニヤリと笑みを浮かべた。


「部屋で腕立て伏せでもしてるよ」


「うんうん、男の子は鍛えてなんぼよ、頑張りなさい」


満足したようにセーラはホテルを出て行った。 入り口のドアの陰からセーラがある程度歩いて行ったのを確認してからハヤトはアサシンの得意技である無音歩行で素早く部屋へと入室し、カバンをベットの上に置いた。


「盗むわけじゃないし、見るくらいなら平気だよな」


小さい頃から何度も何度も鍵開けの技術は教わっている。


一見見たところでは、大掛かりな仕掛けはないように見える。これくらいならばセーラが戻るまでに開けることができるだろう。


「ふぅ………………………集中」


魔力を鍵穴に注入していく、ここで魔力の注入を間違えてしまうと鍵穴を破壊してしまうこともある。


鍵穴の大きさ、難しさによって魔力を加減しつつゆっくりと注入する。


カチャッと響きのいい金属音が鳴ったと同時に、ハヤトはバックの中身を覗いた。


「あれ?」


ハヤトはアサシンの訓練として様々な筋力トレーニングや重石を着けた修行を行ってきた。


力も自信はあるつもりではあったのだが、セーラにバックを持たされた時はその重さに驚きを隠せなかった。


「なんだよ、これ。 何にも入ってない」


しかし、バックの重さよりも驚くことが、ハヤトの目の前で起きた。


『空』だったのだ。 バックの中には、重たい鉄製の何かが入っているわけでもなく、ハヤトやセーラの食料や水、衣服が入っているというわけでもなかった。


言葉通り、中身は空であの重さはなんだったのかと考えが脳裏をよぎった。


「いや、もしかしたらこのバックが重かっただけなのかも、それなら」


ハヤトはいつもよりも勢いよく体の勢いを使ってバックを持ちあげようとしたが「えっ、軽い?」


拍子抜けしたハヤトは思わずカバンから手を離してしまい、バックは勢いそのままに、ドアにぶつかってしまった。


「やべっ!?」


そろそろセーラも戻って来る頃だろう。 開けるなと散々言われていたバックを開けたとなれば、ハヤトにはいつも以上の雷が落ちるに違いない。



「あら、ハヤト何してるの?」


「えっ」


「あっ、もしかして〜〜開けちゃった?」


「こ、これは!」


「いやあ、意外だったな、まさか君がそのバックを開けられるくらいの魔力操作のセンスがあったとはね。 少し君のことを侮っていたかもしれない」


「怒らないのか?」


てっきり鉄拳が襲ってくると軽く身構えていたハヤトは防御の姿勢を崩してセーラの顔を見た。


「そのバックはね、魔力を使うのが下手な子が練習するための魔道具なんだよ、私も師匠の時にやられたんだよ」


「これが魔道具?」


「うん、しかし本当に驚いたよ、魔力操作を習っていたんだね、それなら訓練を少し早めようかな」


「やっとかよ、これで俺も精霊と契約できるのか」


「うん、ただね」


セーラは少し悩んだように腰に手を当てつつ、首を傾けた。


「君に合うんじゃないかと思ってる精霊はとある町の守り神なんだ」


「守り神? そういうのと契約するのってあんまり良くないんじゃないのか」


「うん、罰則とかあるわけではないけれど、あまり快くは思われないかな、それに基本的にはリスクも高いから」


精霊には基本的には見えない姿になり空中を浮遊しているいわゆる野良精霊と呼ばれる物、町や神殿を守護するランクの高いS、またはAランクの精霊が存在している。


そのようなランクの高い精霊と契約する人間がいないことはないし、契約したとしても罰則があるわけでもないが、ランクの高い精霊は気まぐれな精霊が多く、なかなか契約に漕ぎ着けることが出来ない場合、契約者の体が耐えきれない場合がある。


「それにこれから行く予定の村はかなりの信仰心の強い村でね、契約したいと言っても簡単にはいとは言ってくれないと思う」


「それならどうする」


「私を誰だと思ってるの?六武神よ? 任せなさいな」


何を考えているかは分からなかったが、不敵な笑みを浮かべるセーラからは嫌な予感しかしなかった。


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