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ランキングの上位ランカーの義務

「まったくもう」


「ごめん、つい」


「見られる方は結構恥ずかしいんだからねっ」


「はい」


下着姿を見てしまったことで、ルティアは不機嫌そうに顔を膨らませていた。


ちなみに、ハヤトは曲げた膝の上に座るという、ハヤトの国近辺に代々伝わる謝罪の態度を示す土下座の形を取っていた。


ルティアは母を赤らめながら、リエラに制服を着させられている。



「これでいいですわ、でも当分の間は魔力を使ってはいけませんわよ、医療機関の許可が出るまでは」


「ってことは、学科とかでポイント稼ぐの? 」


「そうなりますわね、気を抜いていると追い抜きますわよ?」


リエラは少しだけいたずらっぽく笑ってルティアをからかった。


「ハヤトさんもですわ、その様子だと魔力を使い切ったか、使えない理由があるのでしょうし、ハヤトさんは苦手な学科でがんばりなさいな」


「………マジでか」


ハヤトは決して勉強ができないわけではない。師匠であるセーラや厳しかった父親にどんな国でも生きていけるように多くのことを学ばされた。


しかし、魔法学科の講義項目にある魔力の性質と武器の相性という学科実技の同時講義は大の苦手だった。


ハヤトは幼少の頃からナイフや短剣、刀にどの鋭利な刃物を扱う機会が多く、銃や斧、または槍を使うとなると違和感に襲われうまく扱えないのだ。


それ以外の講義であればハヤトは成績的には問題はない。しかし、模擬戦でポイントを稼げないとなると学科以外にも教員から特別課題を出されるという話をハヤトは耳にしていた。


「ハヤトなんてまだいいわよ、私なんて学科受けるのすら許可されるか」


「学園長は生徒の体調管理にはとてもうるさい人ですし、しばらくは課題を山盛り渡されると思いますわ」


「………まぁ、家にいた時よりはマシかな」


「ルティア?」


ルティアの言葉の意味が気になり、ハヤトはルティアを見た。


嫌な思い出を思い出しているのだろうか、ルティアはぐっと自分の唇を強く噛んでいた。


そこまでしないと我慢できないような経験がルティアにはあるのか。


「さ、馬車を用意してますわ、ハヤトさんはルティアのことを馬車まで背負っていただけますか」


「わかった、ルティアちょっとの間我慢してくれよ」


「えっ?」


きょとんしているルティアをハヤトは軽々とお姫様抱っこした。


「ちょっ、ちょっと!?」


「おんぶよりもこっちの方が俺の場合は動きやすいんだ、許してくれよ」


「………今回だけだから」


「ハヤトさんはこうやってサラに気に入られたのですのね」


リエラは歩き出したハヤトを後ろから見ながらふとそんなことを呟いたのだった。






「ちょっと!? 速い、速いからあ!!!」


「ハヤトさん、森を抜けますわ!」


「わかった!」


ハヤトは両手が使えないため、勢いを弱めるために目の前に生えていた巨木に斜めの状態でぶつかり勢いを弱めた。


「ハヤト、あんた私を殺す気なの!?」


「いやあ、ごめん、つい」


「ついじゃないわよ、怖いのよ、初めて乗馬した時の比じゃないくらいの恐怖よ!」


ルティアは体がまだうまく動かせないので、言葉でハヤトを責めた。


「しかし、ハヤトさんはルティアも抱えてよくそんな走りが出来ますわね、王国の騎士団みたいですわ」


「親父に色々仕込まれたからな、これくらいはなんでもないよ」


「ハヤト、聞いてもいい?」


「ん?」


ハヤトはルティアを馬車の荷台に寝かせ毛布を掛けた。


ルティアは少し痺れが取れて来たのか、毛布を掛けたハヤトの手を掴もうとした。


「ハヤトの昔のこと教えて」


「……………………聞いていたのか」


「ごめん、意識だけはなんとかあったから、ハヤトたちの会話が聞こえて来て」


「………なんのことですの?」


状況が飲み込めていないリエラは不思議そうに2人の顔を見つめるが、思いつめたような表情のハヤトを見て、リエラは薄々ながらもただ事ではないと感じ取った。


「わかった、話すよ。 リエラにもな」


「ええ、学園に戻ったら聞かせてくださいな。さ、帰還しますわよ」


リエラは三人の支度を待っていたランキング下位の2人の女子学生に声をかけた。


「あっ、もしかして、ハヤトさんですか?」


「あのセーラさんって一体どんな人なんですか?」


「え、えっと…………」


その様子を見ていたリエラはくすっと小さく笑った。


「2人ともあなたのファンなのですわ、大目に見てあげてください」


「申し遅れました! 私はボストニア学園ランキング55位 ニッチェ・マキーナです 」


「私はボストニア学園 ランキング71位 フェルト・ニコルスです!」


2人の女子学生は元気一杯という活発さを見せながら、ゆっくりと武器を手に取った。


「ニッチェ、君は利き手が左なんだろうけど、左に力が入りすぎてバランスが悪い、右も練習しような、なんなら付き合うからさ」


「は、はい!」


「フェルトは少し武器を怖がりすぎかな、自分の相棒なんだから、少しだけでいいから克服していこうな」


「はい!頑張ります」


「ハヤトがまた女を落としたわ」


「ほら、ルティアを早く病院に連れて行かないといけないのですから、急ぎますわよ」


いつの間にか、馬の手綱を握っていたリエラが4人に声をかけた。


馬は嬉しそうにブルルブルルと鳴き続けている。


リエラはそれに応えるように、首や頭を優しく撫でていた。


「おう、ルティア、体はどうだ?」


「なんとか右手の指の感覚は戻ってきたけど、歩けそうにはないわね」


「良かった、ルティアが無事で」


「っ/////////////////ば、バカじゃないの!」


「なんでだ!?」


ルティアの言葉にハヤトは理解が追いつかず、フェルトとニッチェの2人を見たが、2人はじゃれ合っている動物を見るかのような優しい人を瞳をしていた。


「そういえば、君達2人はどうしてリエラに帯同していたんだ? 」


「ハヤト、授業で言ってたでしょ、今回のような原因不明の任務や危険な場合はランキング上位のメンバーを組ませるって。 逆に難易度が高くないっていう任務なら下位の学生もポイントを稼げるからランキング上位のメンバー1人が、何人かの下位の学生を連れて任務に向かうのよ」


「やべえ、記憶がない…………………………」


寝落ちでもしていたのだろうか、頭の中の記憶を探り出そうとするものの、ルティアが話した内容の講義を聞いた記憶がなかった。


「サラが隣に居たのに、あの子起こさなかった?」


「記憶がないってことは………おっと、無いんじゃないかな」


路面の整備されていない荒地を馬車が進むたび、馬車は大きく上下に激しく揺れるを繰り返している。


馬に乗り慣れている人間であったとしても、あまり乗り心地の良いものではない。


「あの子は本当にハヤトには甘いわね」


「サラは確かに優しいな」


「あんたねえ………で、ハヤト。 あんたの刀は大丈夫なの?」


「…………一本はだいぶ発動してないから、戻ってくるまでに時間はかかるし、ニオの方は自分の魔力使ってくれたからなあ」


ハヤトが腰の刀鞘ごと抜いて、ルティアの前に置いた。


「ありがとう、ニオ」


なんとか動くようになった右手で刀の姿のニオを撫でた。


もし彼女が具現化していた時ならば、撫でられて幸せそうにぴょんぴょんと飛び跳ねていたに違いない。


「ニオと出会った時は俺が師匠と旅をしていた時だったっけな」


ハヤトは布の隙間から見える青い空を眺めながら目を細めた。





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