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番外編 (俊樹) トシ君は、がんばる 6

外のベンチに並んで座って、気づいたらあれこれ話してた。

結婚生活で自分が酷くのぞみを傷つけてしまったこと。

今、のぞみは昔からの思い人と一緒になれて最高に幸せそうだということ。

娘は可愛くて、俺は父親だから、のぞみも先生も俺を邪魔者にしない。

むしろ歓迎してくれる。

そのあったかさに甘えてずるずると一緒にいてしまうこと。

まるで牧師に懺悔をする人間のように、口から言葉が出て出て止まらなかった。


話し終えると、俺は息を吐いた。


悲しそうな顔をした彼女は、「それは悲しかったですね」と言い、・・・それから「でも」と、眉毛をキッと吊り上げ俺の目を見た。


「あなた、ちょっと甘え過ぎです! いい大人なんだから、もっとしっかりしてください!」


「!?」


「いつまでも、あちらのご家庭に入り浸っていたのでは、あなたが先に進めないですよ!

そりゃあ、あなたが訪れれば、あちらは邪険にはできないでしょう。

ちさちゃんのパパですし、三人共とても仲の良い関係に見えました。

・・・ですけど! いつまでもこのままでは駄目です!

むしろ、あなたも彼女を作ってですね! 俺もこいつと幸せになるからって言うくらいじゃないと!

・・・って、あっ、す、すみません! 私、なに偉そうに失礼なことを・・」



意気揚々と話していた彼女は、急にハッとして顔色を変え立ち上がると、俺に頭を下げた。

「す、すみません! よく、知りもしないくせにこんなこと言って」

「いや。構わない、よ」


彼女の手を引いてまた隣に座らせた。

さっきまでの勢いはどこに行ったのか、肩を竦めて居心地悪そうに小さくなってる。

俺はコロコロ変わる彼女の表情がおかしくて、笑いを堪えきれずに、ぶはっと吹き出した。


「あはは、君、おもしろいね」

「す、すみません」

「君、名前は? 俺は水谷 俊樹」

「は、はい。柏木(かしわぎ) 朋美です」

「ともみちゃんか」「・・はい」


じっと見つめると、顔を赤くして俯いた。

さっき俺に説教した時には睨みつける勢いで見てきたのに。すごい、おもしろい。




「ねえ、俺さ。先生に言ったんだ。のぞみ以外の女にも目を向けるようにするって。あ、先生ってのぞみの旦那ね」

さっきベンチに座らせる時に繋いだ手はわざとそのままにしている。

もちろん彼女はそれに気づいてて、赤い顔のまま目線を彷徨わせてるんだけど。

それがまた面白い。



「またこうやって会ってくれない? 朋美ちゃん」

「え、えええええええ!? わ、わ、わ、わたしとですかぁ!??」

飛び上がって驚かれた。


ヤバい。この子、可愛い。笑いが止まらないんだけど。




「いきなり彼女になってなんて言わないからさ。おトモダチでいいよ、まずは。

次の休みはいつ? デートしてよ、朋美ちゃん」


「・・・・・!」


真っ赤な顔で絶句してる彼女があまりにも可愛くて、手を引いて体を引き寄せて、やわらかそうなほっぺにちゅーをしてやった。


懐から自分の名刺を取り出して、裏に携帯の番号とアドレスを書き込む。




「はい。今夜、電話くれる?・・・待ってるから」

「は、はいっ! あ、いえ、ちょ・・」

「待ってるなー!」

バイバイ、と手を振ってそこを後にした。



しばらくしてまた振り返るとまだこっちを見てぼんやり突っ立っているようだったので、もう一度手を振ってやった。

彼女はあわあわと焦ってぺこりとお辞儀してきた。ぷ。なんだアレ、可愛い。





家への帰り道、一人ニヤける口元を抑えるのに苦労した。

今夜は電話、来るかな。

真面目そうだったし、俺に掛けるかどうするかで、彼女は今夜携帯の前でまた百面相をするんだろうなー。想像できて笑える。


どちらにせよ、仕事場は知ってるんだから、どうとでもアプローチできる。

どうやって攻めて行こうか。

押せ押せ、はダメだ。先生にこっぴどく言われた。

相手のペースを見ろって。自分の主張ばっかり押し付けちゃダメだって。





明日、のぞみんとこ行こう。

んで、のぞみと先生に、気になる女がいるって話してやろう。きっと驚く。

あいつにとって俺はもうとっくに過去のモノになってるから、「よかったね」なんて笑って言うんじゃないか?

それを想像しても、もう心はチクリと痛むこともない。

ゲンキンだな、俺も。


・・・こんな風に楽しい気分は久々だ。


これで完結です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!


明日は、『新人は、十八歳のワーカホリック!?』の番外編を出したいと思います。よろしければ、どうぞ( ´ ▽ ` )ノ

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