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作者の言葉

挿絵(By みてみん)


わが二人の主人公バートルビーおよびヘルミーネの伝記を書き起すにあたって、わたしはいささかとまどいを覚えている。ほかでもない。バートルビー、ならびにヘルミーネをわが主人公と名づけはしたものの、人間として二人が決して偉大でないことは、私自身よく承知しているし、そのために、こんな種類の質問を避けられぬのが予見できるからである。「君は自作の主人公に選んだけれど、そのバートルビーそしてヘルミーネとやらは、どんな点がすぐれているんだね? どんなことをやってのけたんだい? だれに、どういうことで知られているのかね? 読者たる私が、なぜその男/女の生涯のさまざまな出来事の詮索に時間を費やさにゃならないんだい?」そして「まるで大長編を書く前触れのようにあなたは作者として首を突っ込んでいる。あなたはドストエフスキーが書く作品のように前置きを置いてから話をする。そのところはどんな戦略があるんだい?」

一つ目の質問に私は「それはおそらく読んでみるとおのずとわかるはずです」とだけ答えることにしたい。じじつ、そう答えるよりほかはないのだから。二つ目の質問には次のように答える。すなわち「この物語ははじめから小説としては書かれていないし、この物語を叙述するうえで小説が唯一の望ましい形式であるともはじめから考えていない」──話はこうだ。この物語、つまりバートルビーとヘルミーネとの対話は、読者を思索の敬虔さへと誘うことを目的としている。ある種の小説は当然、読者に思索を促したり、読む人の姿勢を倫理的に宙吊りにしたり、彼らが思考の海に沈潜することを可能にする。

「なら小説で書けばいいじゃないか。いったい閣下は何が不満でありますかい?」という声が聞こえる。小説への不満なのではなくて、この物語をそれが望まれる仕方で表現するためには、構造として何かが決定的に欠けているのだ。私は作者として読者を二人の対話に居合わせたい。だから私はゲームとして言葉を編ませたい。ノベルゲームという形式であれば、読者は登場人物たちの会話に参加することができる。とはいえ何の下書きもなしに長大なシナリオ、対話内容を、重層的な引用の構造を挟んだ上で提示することなど困難だろう。私が読者諸君にあらかじめ言っておきたいことは、以下につづる物語は現時点での私の構想の域を出ないこと、ノベルゲームとしてのシナリオの実現に役立てるうえで、下書きとして考えているものにすぎないということ、このことである。もっとも、わたしはこんなおよそ興味のない、要領を得ぬ説明になどかからず、前置きなしに、ごくあっさりとはじめればよかったのかもしれない。

それでは、本題に移ろう。

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