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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第六章 水神の巫女 
60/60

第伍拾捌話 疑念

今日見た劇が凄くよかったのでテンションのあがっている作者です。


でも、行くまでに道に迷って歩き回ったことと、何故かバラシを手伝ったこともあってだいぶ疲れました。

都会って怖い。


(追記)

話数としては58話ですが、酒呑童子奇譚の投稿としてはこれで60個目です。

嬉しいね!!(死んだ魚の目)






枝を紐で纏めてそれっぽい形にし、布を巻いて太く見せる。これをそれっぽい布で包み、サイズの同じ木箱に入れて、紐で縛ればあら不思議。

鬼の腕のような物が完成。





高杉さんと玉さんは先程崩した棚を突貫で立て直し、偽物を置くと、やりきった。という風に笑った。

「いやー、良い物ができたね」

「だな。」

本当にこれでいいのだろうか…と、二人を見るが高杉さんも玉さんもその視線には気付かず、話を進めていた。

「お陰様で助かったよ。茨木はいっつも手伝ってくれないし、僕一人じゃ毎度毎度大変だったからさ。本当にありがとう」

「いいさ。また、何かあったら連絡してくれや。」

「あ、じゃあまた京に来ることがあったら手紙書いてよ。…偽物って気付いた時の狸の様子教えて欲しいし。」

「あぁ、任せとけ。」

何をどうしたらこんなに仲良くなるのか、と黒い空気を出している高杉さんと玉さんを見て思う。

多分これが前に原田さんに教えてもらった『悪友』ってやつなんだろう。

そう俺が思う程、仲が良かった。

「そう言えば、玉さんって酒呑童子の部下だったんですよね。酒呑童子ってどんな鬼なんですか?」

にこにこと屈託なく笑い、優しい口調の玉さんを見てきて、ふと思ったことを口にした。

自分のではなく、茨木さんの腕を探してわざわざこんな所までやって来て、柔らかい印象を持つような玉さんの主が、乙夜さんの故郷を燃やしたとは想像できなかった。

「酒呑?」

玉さんは俺の問いにきょとんと一瞬すると、顎に手を当てて考え込んだ。

「人によるだろうけど、結構優しかったよ?僕も茨木も酒呑に拾われて、旅した結果、大江山に屋敷に住まわせてもらうことになったし、気に入らないことは絶対しなくて…あ、『酒呑童子』って名乗って京で暴れてた鬼の首わざわざ狩って義経くんに投げ渡してたな。」

「おう、人に伝わってない義経の鬼退治の話か。」

「うん。酒呑は面倒事が嫌いでさ。日々を何となく自由に過ごせたらいいなぁって。でもあの時はさぁ、陰陽師には睨まれるわ、周りの妖怪からはからかわれるわで、あんま大江山から出られなくなってたのが耐えられなかったんだって。あれだね、堪忍袋の尾が切れた。って感じ?」

「へぇ…」

「そんな感じだよ。酒呑は。」

「とてもじゃねぇが、悪鬼とは思えねぇな。……いや、でもお前もう300年くらい酒呑童子と会ってねぇんだよな。」

「うん。」

「じゃあ、その間に悪鬼になったとか」

ぎょっとして高杉さんを見上げれば、ありえる話だ。といった表情をしていた。

だが、玉さんは静かに首を振った。

「それは無いと思うなぁ」

「何でだ?」

「えー…だって、酒呑は300年前に死んだし。悪鬼に変わるなんてありえ無いよ。」

玉さんの言葉に僕と高杉さんは一瞬固まった。

「…死んだ?」

高杉さんがおずおずと声を出した。

「うん。あ、正確には消えた。かな?…色々あって、酒呑の器が保たなくなってね。」

肩をすくめて玉さんはそう言った。

じゃあ、今、僕らが追いかけている酒呑童子とは一体何なのだろう。

高杉さんも何か考えているらしく互いに黙り込む。

「……えっと…で、でも最近時々、酒呑の気配というか、妖気は感じる時あるよ…?」

「……最近?」

玉さんの言葉に首を傾げた。

「死んだんじゃねぇのか。」

「うん。……でも、酒呑の気配がする気がするんだ。今日は、似た人を見たし…」

「え。」

一瞬、玉さんの言葉の意味が解らなくなった。

固まっていると横にいた高杉さんが食い気味に玉さんに寄った。

玉さんの体がビクッと跳ねた。

「何処でだ?」

「え?…ひ、昼に此処に来たとき……あ、でも似てたって言っても気配だけだよ。ふと、酒呑を思い出した感じの似方で…。」

そう言うと玉さんはごにょごにょと言葉を濁し出した。

「此処に、酒呑童子がいたのか。」

気配にも他人の空似ってあるよ?と何故か焦りだした玉さんを尻目に俺は昼のことを思い返していた。

昼、百鬼さんと見回りをしている時、変てこな匂いの中に人の匂いは沢山あったが、玉さんのような独特の匂いはあっただろうか……

いや、まず昼に玉さんが来ていたことを覚えてないと思うと、居たとしても恐らく俺は気付けなかっただろう。

無力!と少し悔しく思う。

「……君達が酒呑童子を追ってるのって、13年前に人の村で起こった大火が原因?」

先程まで気圧されていた玉さんがおずおずと僕らを覗き込んでそう聞いてきた。

「大元はな。」

高杉さんが玉さんを見ながら言った。

「…高杉と竹田くんは、酒呑が嫌い?」

嫌い…?

俺は玉さんの言葉に再び首を傾げた。

「隊士ん中にゃ、嫌いな奴もいるが……俺は別に嫌いじゃねぇよ。酒呑童子からしたらついでだろうが、結果的にこの前は助けられたしな。」

そう。俺や高杉さん達が化け猫に襲われた際、俺は百鬼さんと、その後、酒呑童子さんに助けられた。

「俺も……」

嫌いじゃない。

玉さんに思ったように悪い人とは思わない。

なら、俺は何で酒呑童子さんを「悪い人。」として追ってるんだろう。

そう考えていると玉さんが軽く笑った。

顔を上げると玉さんは優しげな表情をしている。

「良かった。」

大切な人を見るような、誇らしく思っているような笑みだと思った。

思わず見とれる。

「……大火の話は妖怪達の間でも有名なんだ。『人はまた・・責をお館様に押し付けるのか。』って憤る妖怪も多くいる。」

くすくすと笑う玉さん。

何かが引っかかった。

「つまり?」

高杉さんが玉さんをじっと見て尋ねる。

「あれは酒呑がやったことじゃない。ってこと。」

それは、『えんざい』という物じゃないのだろうか。

俺は息を詰めた。

「『人が責を押し付けている』っていうのはあんまり僕は思わないけど、ただ、そもそもがおかしいんだよ。死んだはずっていうのもあるけど…、人は大火も、悪鬼が増えたのも酒呑が原因って言うだろう?でも、人の村を理由も無く燃やすなんて、酒呑は自分が一番気に入らないって言うだろうから、するはずないし、悪鬼に関しても、妖怪達がどうこうして増えるものじゃない。というか仮に出来たとしても、面倒くさがりな酒呑が僕らに何も言わず、手伝わせず、そんな面白くもない面倒なことするわけないんだ。」

凄い信頼だと思う。

玉さんは箱を抱えたまま肩をすくめた。

「でも…それじゃあ、村を焼いたっていう大火は一体誰が?」

ぽつりと漏れた自然な疑問だった。

「乙夜によると大火を起こした鬼ってのは、俺達が前に見た酒呑童子と同じ容姿。んで、玉によると最近、本物の酒呑童子に似た気配がして、しかも今日はそいつが昼に此処に来てたかもしんねぇのか……」

「うん。」

玉さんの肯定に高杉さんは頭をかいた。

「ますます訳わかんねぇな。」

俺も頭が混乱して軽く目が回っていた。

一体、何なのだろうこれは。

大火を起こして乙夜さんの村も焼いた酒呑童子と、玉さんの言う酒呑童子さん。

そして似た気配だという誰か。

もしかしたら俺達は、何か思い違いをしているんじゃないか、と思った。

俺達の追っている鬼と、大火を起こした鬼は実は別人なのではないか。という疑念。

それを、近藤さんや土方さんや桂さんは知っているんだろうか。


目の回るような思考。

それ故に俺は異様な気配と匂いには気づかなかった。

しかし勘は正常に働き、次の一瞬で足を止めることをしてくれたおかげで、中庭を歩いていた俺達は無傷で『目の前の壁が激しい音を立てて巨大な黒く長い何かに突き破られる。』という現象を回避することが出来た。


一瞬の間に、高杉さんが後方反対側の影へと回避し、玉さんが俺を抱え上げて後ろ飛びで中庭の中程へと飛んでくる破片から避ける。

壁を突き破っても止まることの無い激しい音と飛び散る破片の中、玉さんに抱えられたまま俺はその視界に赤い鬼の姿を写していた。


「お館様!」


玉さんの声が響きわたり、抱えられた際に俺の手から飛んだ提灯がどさりと地面に落ちた。








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