にやけ顔
(ピンポン)
麻央
「天音ー、入るよー」
天音
「どうぞーー」
洗濯物を干していた天音がベランダから返事をした
麻央
「なんか暑くなってきたねー」
(季節も…君たちも笑)
洗濯物を干し終わった天音が部屋に戻ってきた
天音
「ほんとだよー
暑いったらない…
ね、お昼食べた?ってその紙袋なに?」
ふふんっ笑
麻央は自慢げに笑った
麻央
「これはねー
私からのお祝いだよ
なんと…
あの、『Hot Climb』のサンドウィッチ!」
『Hot Climb』といえば
今超人気のサンドウィッチ屋さんで
長蛇の列ができている
1時間以上待つと噂だ
天音
「えええーー、まさか並んでくれたの?
この暑い中…一人で」
麻央
「そーだよー、ずっと食べたかったしさ
なんか、今日はいつもと違う、スペシャルなのが食べたいなって思って笑
ごめん… お茶もらっていい??」
天音
「あ、ごめん…すぐ持ってくるから
座ってて」
。
。
。
『Hot Climb』のサンドウィッチは
結構スパイスとチリが効いたパンチのあるサンドウィッチだったが、ツンっと鼻に抜ける刺激が
食欲をそそった
天音
「おいしー笑 麻央が並んでまで買ってきてくれたと思ったら倍美味しく感じる笑」
麻央は満足げに笑いながら
麻央
「ねっ?そういうのじゃなくてさ
私が聞きたいのは、昨日のことなんだけど?
あのシチュエーションから、どうして付き合うところまで行ったのか…」
麻央は伊達メガネの縁をくいっと押し上げ
探偵風に天音を覗き込んだ
天音はこれまでのことをゆっくり思い出しながら話した
買い物袋事件はすでに話したので
その後の出来事から丁寧に…
コーヒーカップに頑張ったねって書いてくれたこと
見た目でクールだと思ってた人がとても優しかったと知ったこと
忘れかけていたが、麻央と聞いた喧嘩の男女は彼とそのお姉さんだったこと
朝のエレベーターでのやりとりが実は楽しみで
会えない日は少しがっかりするような気持ちになっていたこと
そして、コーヒーショップからの誕生日ケーキ
ほっぺにキス
ケーキ入刀…
麻央はにやけ顔が止まらない
麻央
「ていうかさぁ、ひとつ言って良い?
嬉しいのはわかるけど、ほっぺとはいえ、
そこでキスする人なかなかいないかも笑
天音のさ、ほんと無自覚に大胆なとこってもう武器だよ笑」
(…武器?)
麻央
「いや…まあいいんだけど、一応褒め言葉だよ笑」
「でも本当私、嬉しいんだぁ
私も彼氏作ろうかなあ笑
まず先に好きな人ができないとだけど…」
「天音、さっきの話聞いてて思ったけど
水瀬さんには、ちゃんと自分の気持ちを素直に言わなきゃだめだよ
嬉しいこととかだけじゃなくて
悲しいこととか辛いこととか怒ったりしてることとかも…
昨日見てて思ったけど
水瀬さん、そういうの多分隠してほしくない人だと思う
天音には…ね笑
だって天音を見る目がもう愛おしすぎたもん…」
そう言うと麻央はベランダに目をやった
その目は少し遠くを見ていた
冷茶の氷がカランと音を立てた




