流行病(2)
その薬草は山の日陰に生えているらしく、この町では妖森の入り口近くにたくさん生えているという。
行ってみると、確かにたくさん生えていた。
「これでいくらかでも薬ができればいいけどねえ」
「すぐに届けに行った方がいいだろうね」
「そうねえ。ある程度集めたら行きましょうかあ」
私たちは薬草を根こそぎにならない程度に集め、隣町を目指した。
馬車で半日ほど、徒歩なら朝に出て夕方に着く程度らしいが、私たちの足なら造作もない。昼過ぎに出ても夕方には着いた。
他領に入るには門で審査を受けなければいけないらしく、町を囲んだ塀に作られた門には、兵士が立っていた。
「ふうん。入国審査みたいなものね」
「ああ、入国目的とか、滞在日数とか訊かれるあれだね」
「持ち込み禁止のものとか大丈夫かしらあ。それにパスポートはあ?」
不安になったが、行くしかないと腹をくくり、近づいて列に並んだ。
並んでいるのは二十人程度で、冒険者や商人らしい人ばかりだった。
「はあ。いつも長えな」
冒険者の一人がそう愚痴を漏らのを、仲間がなだめる。
「まあ、王都よりましよ」
「あそこは長すぎるっつうの。半日ってひどいだろ。朝一に並んで昼過ぎって何だよ」
聞いていて、私たちも内心で同意した。酷い。酷すぎる。
「まあ、危ない犯罪者を入れないように警戒するんだから仕方ないし」
中の一人が言うが、最初に愚痴った冒険者が嘆息する。
「その分、危ないやつが外で旅人を襲うんじゃな。まあ、その警備や犯罪者の捕獲で俺たち冒険者の仕事もあるんだけどさ」
私たちは、この世界の旅は命がけらしいことを知った。
まあ、日本だって昔の旅行は大変だった。途中で行き倒れることもあり、電車や飛行機で安全に遠いところまで行くことができるようになったのはありがたいことだ。
彼らの話を聞いていると、この町で病が流行っていることは知っており、薬の材料を集める依頼で冒険者は動き回り、薬師と呼ばれる薬剤師のような人が、薬の製造でてんてこ舞いという現状らしい。
それでも薬が足りないというのだ。よほど、薬草があまり生えていないか、薬師が少ないかなのだろうか。
考えているうちに順番がきて、私たちは巡検士の制服とドッグタグのような身分証明書を見せるだけで中に入ることができた。
「これは便利だねえ」
タグを見ながら感心して言う。
「まあ、試験のときに散々調べたんだから、お墨付きってわけだね」
「偽造も難しいのかしらねえ」
しみじみと言い合っていたが、我に返って目的を思い出した。年寄りは脱線してだめだねえ。やれやれ。
私たちは早速、この町の冒険者ギルドへと向かった。すぐ近くにいた別の冒険者グループが、冒険者ギルドへ納品するのだと言っていたのを聞いたのだ。
場所はわからないが、その冒険者グループの後に付いていけば問題はない。
そうして、数メートル先を歩く彼らの後に続いて、目的の建物へとたどり着いた。
「うわあ。凄い人だね」
たくさんの冒険者が外まで列を作っていた。その大抵が共通して、薬草を手にしている。
そして裏口からは、薬草の入ったかごを抱えた人が急ぎ足で出てきて、小走りでどこかへ向かっていく。
「ああ、薬師ギルドへ納品か。毎日大変だな」
「この様子じゃ薬草は大分集まっただろうし、じきに終息宣言が出るんじゃねえか」
「その割に、薬が足りないのよねえ。薬師が足りなくて作れないのかしら?」
前に並んだグループはそう言いながら、首を傾げていた。
そうこうしているうちにどんどんとカウンターへと近づいていき、ようやく私たちの番が来た。
ほかの人たちがしているように、タグと薬草をカウンターに出す。
「まあ、巡検士様でしたか」
カウンターにいた目に下にクマを作った女性が目を見張った。
「はい。よろしくお願いしますね」
「よろしくう」
「頼むよ」
女性もよろしくと返すと、薬草を見て間違いがないか確認し、数を数えて、三千ラルをトレーに乗せて差し出した。
「ありがとう。早く良くなりますように」
私たちはそう言いながらそのお金を受け取り、軽く頭を下げてカウンターを離れた。
「ついでに、薬師ギルドとやらも見にいってみようかね」
「そうだね。どういう作り方をしているのかわからないけど、そんなに時間がかかるような作り方なのかね?」
「本当に人が少ないのかもしれないわねえ」
私たちはなんとなく、薬師ギルドへと足を向けた。
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