閑話休題 今日も愉快なギルドの一日
「……今日、予約ゼロなんですけど?」
カウンターに書類を並べながら、ミーナがやや不満げな声を漏らす。
「うん、俺もさっき見た。つまり今日は“何もない日”ってことだ」
ゴルザンは椅子の背にもたれ、マグを傾けながらのんびり答える。
「いやいや、“何もない日”にしてはみんな出勤してません?」
奥の机では猫背の事務員さんが資料を広げ、背の高い人が書類を持って歩いている。……が、確かに会話はない。
「事務処理とか月末精算とか。ギルドの裏側は“日常業務の塊”だからなあ」
「でも、なんか静かですね。張り合いがないというか……」
「そりゃあ、いつもが“濃すぎる”んだよ。ちょうどいいんだって、これくらいが」
「そういえば、私、この前の求人票、後日談あったんです」
「お、どれだ? まさか、ドラゴンの……」
「いえ、あの、匿名掲示板の……」
「ああー、あれ。読んだ読んだ。どれも地味にいい話だったな」
なんて、取り留めもない話をしていたら──
「ミーナさん、伝話石の通信、対応お願いしていいですかー?」
奥の方から声がかかる。
「はーい!」
ぴょん、と立ち上がるミーナ。ゴルザンがマグを振る。
「頼んだぞ、新人──じゃなかった、
……ミーナ」
「……はい!」
今日もラストリーフ支部は、何も起きないようでいて、きっと何かが起きている。
そんなギルドの、いつもの一日。




