第三十五話 箱入り娘のインターン
「今日から、うちにもインターンが来るらしいぞ」
「えっ、そんな話ありましたっけ!?」
ミーナが慌てて帳簿を開く。
「本部からの“世間勉強の場”として、だとよ。多分また“うちでいいや”的なやつだな」
「……うわ、既視感がすごいです」
カララン、と扉の鈴が鳴る。
「おはようございます! 本日よりこちらでお世話になります、カミーユ=フロリネッタと申しますっ」
高らかに響く挨拶。
現れたのは、見事な金の巻き髪にフリルのたっぷりついたワンピース。
──どう見ても、貴族のお嬢様である。
「えっ、えっ、私が案内係……? えっと、えっと、えっと……!」
「落ち着け”新人ちゃん”。大丈夫、今日くらいは静かにしてるから」
「嘘だ!」
***
カミーユは──驚くほど純粋だった。
「わぁ……書類の匂いって本当に“業務感”がするんですわね!」
「この帳簿って、“伝説の帳簿”って呼ばれているものでしょうか?」
(それ……誰も呼んでませんよね?)
ミーナの中で、あっという間にテンポが崩れていく。
「えっと、じゃあ次は案件ファイルの整理を──」
「はいっ、やってみますわ!」
「えっ、これで合ってますか!? もしかして私、すごく事務員っぽくないですか!? 素敵ですわ〜〜!」
「合ってます! 合ってますけど、テンションがすごいです!」
ふと、カミーユが言った。
「ミーナさまって、すごいですね……お一人で全部回していらっしゃるんですね」
「えっ……いや、私、まだ新人で……」
「それでも、お仕事を“普通”にこなしているだけで、私から見たらすごいことなんです」
「……ありがとうございます」
──その日の帰り道。
「お疲れさまーっと……って、お、箱入り娘は無事だったか?」
「……ゴルザンさん、教えるのってこんなに大変だったんですね……」
「ははは、だろ? 人に教えるって、自分のこと見直すいい機会なんだよ」
「……先輩、すごいっすね」
「どうした急に」
「なんか、やっとわかりました」
カミーユは──インターン期間を無事に終え、帰っていった。
最後に玄関で振り返り、彼女はこう言った。
「ここ、意外と気に入りましたわ!」
「……あの子、再配属とかされそうな気がします」
「え、また増えるの……?」




