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939/1174

939、クマのドラゴン、クマトス

ユリトス一行は、森の中の道を西へ向かった。

緩やかな下り坂だった。

五味は不安だった。

ミラル王妃がガランに攫われたことも衝撃だが、自分がそこに行き何ができるか、それが不安だった。

五味には九頭のような聖剣はないし、加須のような美声もない。まったく凡庸な、何の取り柄もない男で無力感が不安をさらに煽っていた。

「俺は何者なんだ?なぜ、この世界に来た?ただ、ラーニャとセックスをするためだけか?」

五味の気持ちはセックスだけには留まらなかった。

人間は生まれ、恋に落ち、セックスをして子供を作り、育てたら死ぬ。それだけか?

なんのために生まれてくるのか、自分はなんのために生きているのか?

五味にはまったくわからなかった。しかもここは異世界。この世界に来た意味は?

民主主義を広めるためではないと五味は考えていた。たしかにこの世界を去る前にラーニャとセックスをしたかった。それは強い希望だった。しかし、それだけか?

ぼんやりと五味が考えていると、ポルトスが言った。

「この辺で、昼食にしよう」

ベランは言った。

「お?いいな」

ネズミのドラゴンは言った。

「お、それは楽しみ」

しかし、ポルトスは言った。

「おまえたちの分があるわけないだろう?十人も仲間に加わっても食料はそんなにない。それにドラゴンの胃を満たすのは人間の食料とは桁が違うだろう?」

ベランは言う。

「ああ、わかっている。よし、おまえら、狩りに行くぞ」

ドラゴンたちは飛び立っていった。

しかし、ひとりだけ残った者がいる。

クマのドラゴンだ。

彼は言う。

「俺の予感ではここにクマが出る。俺はおまえたちの護衛のために残った」

アラミスは言う。

「クマくらいで俺たちがやられると思うか?こっちにはユリトス先生がいるんだぞ」

クマのドラゴンは言った。

「おまえたちはクマを敵と見做すのか?」

「?」

クマのドラゴンは言った。

「クマは食料を求めて人の前に現れる。人間を敵とみて襲うためではないんだ。俺はクマと交渉するために残った。ここはクマの生息域だ。人間が大きな顔をして自分たちの道だと勘違いするべきではない。ここはクマのテリトリーだ」

ポルトスは湯を沸かしコーヒーを淹れた。

食事はパンだった。

人間が食べているあいだ、クマのドラゴンは座ったまま周囲を窺っていた。

すると、森の中から一頭のクマが現れた。

五味と九頭と加須は震えた。ドラゴンたちとの戦いを経験してきたとは言っても、やはり、クマなどの猛獣はどの世界にいても怖いものだ。

クマのドラゴンは立ち上がった。そして、出てきたクマに話しかけた。

クマは大人しく、元来た、森の中に戻っていった。

クマのドラゴンは五味たちに言った。

「あいつはパパになったばかりで、近くに妻と子供がいるから、人間を警戒して出てきたそうだ」

五味はクマのドラゴンに訊いた。

「おまえ、名前はなんと言うんだ?」

クマのドラゴンは笑顔で答えた。

「クマトスだ」

五味はクマトスが平和的にクマと交渉したのを見て思った。

「俺には聖剣も歌声もない。ただ、平和を愛する気持ちなら負けない。それならば、俺にあるのはもしかしたら交渉術か?いや、そんなものはないか・・・」

そこへ空からベランたちが降りてきた。

「おー、牛だ牛肉が食えるぞー」

ベランたちは仕留めた牛を道の真ん中に降ろした。

ネズミのドラゴンは言った。

「さあ、解体ショウだ!」

ユリトスたちはすでに食事を済ませてあった。

馬に乗り、ベランたちに言った。

「我々は先に行く」

ユリトスたち人間は馬で先へ出発した。

ベランは言った。

「おいおい、待てよ。牛肉をやろうってのに」

ポルトスは背を向けながら言った。

「解体したら、飛んで追いかけてきてくれ。俺が料理する」

ベランは笑って牛の解体を始めた。


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