931、結界師・カイテル
結界師・カイテルは言う。
「どのような、結界を?」
ドーミ王は言う。
「どのようなとは?」
カイテルは言う。
「結界には種類があります。その結界内である魔法を使えなくさせることが結界の大きな特徴です。それから申し上げておきますが、私の結界はこの国全体を覆うほどの力はありません。この王城を覆うくらいが精一杯でございます。ですから、この王城内でどのような魔法を禁じるか、それを指定してください」
ドーミ王は、「むう」と言って考えた。
「変身魔法だ」
「わかりました。変身魔法を禁じる結界をこの王城に張ればよいのですね?」
「左様だ」
「では、魔方陣を描いてきます」
「魔方陣?」
「この城の周囲に、魔法の石を五つ置くのです。すると、この城は五芒星の魔方陣に囲まれることになり、私の結界魔法の有効な場所となるのです」
「うむ、わかった。では、行ってこい」
「はっ」
結界師・カイテルは王城の外へ出た。
そして、暗い道に両手でなんとか持てる程度の大きさの石を置いていった。
カイテルが石を置いて、その周りに文様を描いていると、街の悪ガキたちが来た。
「おい、おっさん。何やってんだ?」
「私は結界師・カイテルだ。今、魔方陣の文様を描いてる」
すると、悪ガキたちは爆笑した。
「ははははは、カイテルが描いてる。つまんねー!」
「バカにするな、ガキども!これは王の命令で描いてるのだぞ」
ガキどもは笑いながら逃げて行った。
そうして、結界師・カイテルは五芒星の頂点に位置する石を置いて文様を描き終えた。
カイテルは城に入った。
それを見届けた悪ガキたちは、また現れて、カイテルが置いた石の周りに集まった。
「おい、なんだこれ?おっさん、こんな石と絵でなんかするのかよ?」
「おい、動かしちまおうぜ」
「はははは、それは面白い」
「せーの」
「よいしょ」
「それ、逃げろー」
「わーーーーっ」
そんなこととはつゆ知らず、王座の間に戻ったカイテルはその床にも五芒星を描いた。
「天よ、地よ、ドラゴンよ、汝らの気高く強き心を我が身に貸したまえ、汝らは、この五芒星の中に変身魔法を使う者の術を解かれるべし・・・やぁっ!」
ドーミ王と宰相ハント、その他の家臣たちは、カイテルの描いた五芒星を覗き込んだ。
ドーミは言った。
「何も起きないな?」
カイテルは言った。
「あれ?おかしいな?なぜだろう?」
ドーミ王は言った。
「それで、結界が張れたのか?」
カイテルは答えた。
「いや、できてない。おかしい、原因があるとしたら・・・石を誰かが動かしたとか?」
カイテルは王座の間を出て王城を出た。
王城の周囲に置いた魔法の石を見た。そのひとつが描かれた絵の外に動かされてあった。
「あーーーーっ!誰だ、こんなことする奴は!」
すると、王城を囲む街の暗がりから声がした。
「やーい、ハゲ坊主―!ざまあみろー!」
カイテルはその暗闇を見て怒鳴った。
「こらー!ガキどもー!」
闇の中は静かになった。
カイテルは兵士に五つの石を見張らせ、もう一度王座の間に戻った。
そして、先ほど描いた五芒星の前の床に座り、眼を閉じて手を合わせた。
「天よ、地よ、ドラゴンよ、汝らの気高く強き心を我が身に貸したまえ、汝らは、この五芒星の中に変身魔法を使う者の術を解かれるべし・・・やぁっ!」
すると、床の五芒星が光った。
外では置かれた石たちが光り、そこから、上空へ光の柱が立った。それは上から見ると五芒星を描いていた。
結界師・カイテルは言った。
「これで、この王城の中では変身魔法は使えません」
すると、城内のあちこちから声が聞こえた。
「ドラゴンだー!ドラゴンが出たぞー!」




