第25話:舞ったら降神しました。
――今は薄水色のクロークを脱いで前に進み出た。
滑らかな肩が綺麗に見える紺色のノースリーブで、タートルネックな為に首や胸は隠れているが、背中は瑞々しい肌が露わとなって周囲の目を惹く。
その背中に目を奪われていると薄い水色の髪をかき上げ、艶々と舞踊がはじまった。
右足の踵を上げ、つま先を後ろに滑らせ、左、右と交互につま先を後ろに滑らせる。
右足は膝まで布で隠れているが、左の太ももは布の間から覗き、アシンメトリーマーメイドラインのスカートと相まって金魚のような華やかさがある。
上体を弓なりに軽く後ろに反り、服の上からでもわかる胸の双丘が豊かで滑らかなプリンのように優しく揺れ、右足で踏み切って低く海燕のように軽やかに跳び、左足を軸として回転する。
音無くはじまった舞踊に見る者全てが魅了され、自然と横笛や手拍子が重なって行く。
舞っている本人も何かに憑りつかれたように動きが増し、次の瞬間ガクッと膝から崩れ落ちた。
両手を床につき、膝を揃え横座りになり、頭がダランッと垂れ下る。
それから、体のまわりがぼんやりと光り、生気のない青い目をこちらに向け一言発せられた。
「探し人は生きている」
◇◆◇◆
セラティアさんがガクッと気を失って倒れてしまったので、風のエルフに案内されながら、細身だが出る所は出ていて女性らしい柔らかな体を抱きかかえ寝床へ運んだ。
俺の横には族長と若い女衆が一人付き添ってセラティアさんを見てくれている。
「先程の舞踊は降神に成功してしまったのじゃろぅ」
「あれが……セラティアさんは大丈夫なのでしょうか?」
「呼吸は安定しておるし、しばらく横になっていれば問題ないじゃろぉ」
「そうですか、ありがとうございます。」
しかし、”探し人は生きている”とは師匠やリリーナ達が無事だと言う事だろうか?
今すぐにでも探しに行きたいが、セラティアさん置いて行くわけにもいかないしな……
「うっ。う~ん……」
先程まで青白くなっていたセラティアさんの顔に赤みが戻って来て目を覚ましたが、降神の影響だろう、体に力が入らず思うように起き上がれないようだだったので、背中にそっと手を添えて上半身を起こしてあげる。
ボーッと焦点が定まっていなそうな目で俺を見つめつつ、手の甲で瞼を擦り意識をハッキリさせようとしている。
「セラティアさん、焦らずゆっくりでいいですよ」
「だっ、大丈夫……ここは……舞っていて途中までは覚えているんやけど……途中からフワッと意識が……」
「そうなんですね、もう大丈夫です、さっきはとても綺麗でしたよ」
俺がそう言うと恥ずかしそうに顔を赤らめ、それが耳まで染まって行き、左手で顔を隠しながら右手で俺の事を叩いて来た。
なんとも可愛らしくてついつい意地悪したくなってしまう。
ポンッと手を頭にのせ優しく撫でてみた。
「もう……っ」
今度は顔と耳を赤らめたまま頬っぺたを膨らませてプイッと横を向いてしまった。
「仲がよろしい事で(クスッ」
族長とともに付き添ってくれている若い女衆に笑われた……




