第24話:歓迎の宴がはじまりました。
――俺はセラティアとともに風のエルフの族長から伝承を聞いた。
『トネリコの樹が立っていた。
それは世界樹と呼ばれ
高い樹、輝く土壌、露が垂れ、
谷に流れ落ち、ウルズの泉に永遠の新緑』
まさに俺達が居た世界樹の事だろう
『彼女は最初の戦争を止めようとした。
彼女は光りし槍によって突き刺され、
彼女は三度焼かれ、
彼女は三度生き返り、
彼女は今も生きている。』
これは誰の事だ……?
唯一思い当たるのは船で一緒になった女性か?
『美しき者は予言する巫女だった。
彼女は口寄せを知り、
彼女は魔法がよくでき、
魔法を用いた。』
口寄せと言う言葉がどうも自分とリンクしているように感じるが、予言する巫女がハッキリと誰か絞れない。
人々の間へと槍を放った。
それが戦争であった
世界で初めての
樹の壁は破れた。
光の子の街に戦争の魔法を紡ぎ、
それは地を歩いた。
怒りに膨れあがり
□□□は撃って出た』
まさにヴァルキューレによる攻撃の事に思えるが、□□□とは何だ……
『誓いには誓い
言葉と誓い
誓言の全てに重み
彼女は知っている
輝く樹の下
聖なる樹の下
彼女は見ている
一筋の流れ
豊かな流れ』
誓い、聖なる樹、彼女……
果たして何を指しているのか解らない事だらけだな。
「これが風に伝わる伝承じゃ」
「族長様ありがとうございます。ウチにはえらい何の事か分からんけども……」
「そちらさんの方は考え込んで何か思い当たる節がありそうじゃのぉ」
「えっえぇ……実は俺は、空虚な裂け目『ギンヌンガガプ』を越えアールヴヘイムに来た別の世界の人間なのです。」
「ふむ、それは真かのぉ」
「あなた、そんな事今まで一言も言ってなかったじゃない」
「この事は今まで数人しか知らないので。ですが、先程の伝承を聞いて口寄せされた者が俺かもしれないと……」
「なるほどのぉ、しかし異世界から来たとされる者はお主だけではないのじゃ」
たしかにシャルさんも以前、ミズドガルドの商船で異世界人を助けたと言ってたしな。
そう言う人が他にいてもおかしくは無いか……
「とりあえず、話の続きは宴の時にするのじゃ」
「宴ですか?」
「久しぶりの客人じゃからの」
そう言って風の族長が手を叩くと、多数の風のエルフの女衆が入ってきて準備しだした。
里の入り口での事があったので警戒されていると思っていたが、どうやら歓迎されているらしい。
それから、そう経たないうちに歓迎の宴がはじまった。
族長の間である四十畳程のこの大広間に良い香りの料理が用意され、上座の族長の隣に俺とセラティアさんは薦められ座
っている。
他の風のエルフ達は三十人ぐらいだろうか、輪になって料理を囲むように座っており、女衆達が上座に色々と運んできてくれる。そんな中……
「ほっほっほ、セラティアと言ったか、巫女なら舞えるのじゃろ? 見てみたいのぉ」
「ウチの舞踊なんてまだまだで……」
「俺もセラティアさんの踊り見てみたいな」
「あなたまでそんな事言って…………少しだけなら」
セラティアさんは顔を赤らめながらも前に進み出て舞踊をはじめた。




