第20話:新たな旅立ちの準備をしました。
――俺はヴァルキューレの襲来に遭い、船に乗せられ、ミズドガルドの港に着いてしまった。
そして、今目の前には薄水色のクロークを羽織った、セラティアと言う名のエルフがアクアマリンの瞳で俺を覗き込んでいる。
ヴァルキューレから隠れる為か、他の人の目が気になるからか、ゆったりしたクロークの中がどうなっているのか分からないが訳ありなようだ。
できる事なら関わりたくなりところだが……
「……で、微動だにせず座っていたセラティアさんが何か用かな?」
「えぇっと…………ウチ、風のエルフの族長に会いたいんやけど、頼れる人が誰もいなくて……はじめて会った人に言うんのもおかしいんやけど、できれば同行しれくれると嬉しいんやわぁ」
「折角だけど、俺は近くの街に着いたら一度ミズドガルドからアールヴヘイムに戻る予定だから」
「いやいやいやいや、アールヴヘイムはまだ危ないやない!? 少し寄り道した方が……何かこうヴァルキューレも戻って行くかもしれないやろ、そこでウチと一緒に風のエルフのところになっ」
「…………やっぱりなぁ」
何かセラティアさんを適当にあしらってたら涙目になってきてる?
最初はクールそうに見えたが、結構ポンコツなのだろうか……
段々手伝わないといけない罪悪感も出て来るが、そうは言ってもあまり付き合いたくないんだよな。
「やはり一緒には……」
「……グスンッ」
セラティアさんの瞳に大粒の涙が溜って決壊しそうになっている。
今ここで泣かれたら俺すごい悪者!?
これはアレか、人見知りで頑張って声掛けたけど拒絶されて泣いちゃったとかなのかな?
しょうがないか……頭にポンッと手を置き
「分かりました。風のエルフのところに着いて行きますから」
「本当に一緒に着いてきてくれるん?」
「はいはい、だからねっ」
「えへっ」
満面の笑みを俺に向け、ギュッと腕に抱き着いて来た。
腕に柔らかい感触があたり、少し師匠の事を思い出してしまった……
早く風のエルフまでの同行を終わらせてみんなを探しに行きたい。
◇◆◇◆
――船から降り少し話を聞いてまわると、ここは”オリエンスポルトゥス”(東の港)と呼ばれいている港で、ここから南東に行くと”モーベ砂漠”があり、更に南に行くと荒野の丘に地のエルフが住む”レルギオン”と言う都市、”オリエンスポルトゥス”の北東の高原地帯の少し先に”ウェントゥスウィークス”と言う風のエルフの村があるそうだ。
次の目的地となったウェントゥスウィークスまでは歩きだと一週間程掛かるらしい、通常は馬車などに乗って行くだろうけど馬はまずいよな。
モフモフなタラクサカム・テリコミスも居ないようだしどうしたものか……などと考えていると
「おうアンちゃん、移動の足を探してるのかい、それならトロルンがお勧めだぞ」
「トロルンですか?」
「何だい知らないのかい、ほら、あそこでモシャモシャ草食べてるヤツだよ」
高原に行くならトロルン(鹿のような角の生えた牛)が足に使えると言うかトロルンが安くて良いそうだ。
赤角炎駒(赤竜の顔の馬)何てのもいるそうだが高いらしい。
セラティアさん横で少しビクビクしながらトロルンを見つめている。
興味はあるが怖いのかな?
あとは水と食料の調達だが、水は最悪魔法で食料は狩りをすれば大丈夫だろうか?
こうして俺とセラティアさんのウェントゥスウィークスに向けての旅が始まった。




