魔法陣の中から
とある高校の放課後。
帰りのホームルーム中の教室。
教室のドアの前に吊り下げられた板には、1-4と、書かれている。
と、ホームルームが終わったようだ。
ひとりの少年が教室のドアを開け、早々とドアを抜けていった。
それについで、別の少年がその後を追い教室を出た。
最初に出た少年は、早足で、廊下をどんどん進んでいく。
それを追いかける少年もまた、早足で追いかける。
「一体何をしているんだ・・・?」
後ろで、追う少年が呟いた。
制服の名札には、《三永》という性がついたその、追う少年。
顔は中の上といったところだろうか、
短めの茶髪に、黒縁のメガネ。
優等生という感じの見た目どうり、成績は常に10位以内をキープしている優等生だ。
そして、優等生の彼には気になることがあった。
そう、今追っている少年、箱野の放課後の行方である。
女子から圧倒的な人気を誇るルックスに、
少し、長めの、焦げ茶色の髪が特徴的だ。
彼はいつも放課後になるとすぐに教室を後にする。
最初は早く家に帰りたい事でもあるのだろうと思っていた。
しかし、ある日、委員会でかなり帰りが遅くなった三永は校門を出ようとして驚いた。
校門に箱野がいたのである。
しかも見かけたのは一度では無い。
委員会活動をしている三永が委員会を終え、帰ろうとしたとき、
だいたい、いつも同じ時間に帰宅しているのだ。
なぜこんな時間にいるのか、色々考えても分からない。
そこで彼はこの日、箱野の後をつけてみることにしたのだった。
と、不意に、箱野が一つの教室に入った。
ここは空き部屋のはずだが、そう思いながら三永はそっと、中を覗き込んだ。
やはり中は空き部屋の様で、
箱野意外には、どの教室でも同じ場所にある、教室前方についた黒板に、
その、黒板側の窓の脇に置かれた机しか、目立ったものは無い。
その空き部屋の中央に立った箱野は、おもむろに持っていた学生鞄から折られた紙を取り出した。
箱野はそれを広げ教室の中央へと敷く。
こうしてみると、かなりの大きさの紙だ。
よく見ると何か図形のようなものが描かれている。
あれは・・・
《魔方陣!?》
三永は思わず心の中で叫んだ。
二十丸の中に複雑な絵と、
中央に星の描かれた魔方陣だ。
それを前に、カバンを放り投げ、両手を合わせた箱野は何かを唱え始めた。
しかしその声は小さくなんと言っているかは分からない。
「なんて言ってるんだろ・・・」
三永は耳をすませ、その声を聞いた。
すると、
「三角定規を生け贄に捧げます...」
「三角定規・・・!?」
意味のわからない生け贄に思わず、声が出た。
しかし、箱野は集中しているのだろうか、
聞こえていなかったようだ。
しかし何故、三角定規なのか。
それに釣られて、召喚される物などあるのだろうか。
しかし、そんな三永の考えを裏切るように、なんと魔方陣が光りだした。
《・・・・っ!?》
光りだした魔方陣に三永は動揺が隠せない。
しかし箱野は落ち着いたように、右手と合わせていた左手を大きく開き天へと振り上げた。
すると、
『我を呼んだのは貴様か?』
魔法陣の中から、マントを羽織り、
頭からは左右に二本の角が生えた恐ろしい形相の大男が現れた。
出ているのは上半身だけだが頭がすでに箱野の頭より上のところにある。
《!!!!!!??????》
三永の精神状態はもう錯乱状態である。
まさかの召喚成功だ。驚かない方が無理だというものである。
しかし箱野はまだ落ち着いた様子で大男を見上げている。
『三角定規を生け贄にとは、面白い事を言う。わしが三角定規コレクターだと知っての事か?』
《まさかの三角定規コレクター!?》
本当にまさかの事態だ。
三永の足が痙攣してきた。
顔にも発汗が見られる。
しかし、まだ冷静な箱野は首を前に倒し、
ひとつの三角定規をポケットからだし、差し出した。
『ふむ、見事な三角定規だ。
いいだろう!お前の望みを聞いてやろう!』
大男は三角定規を見ると、そう叫んだ。
その言葉を聞いた箱野は少し考え、
「あなたの、三角定規コレクションを全てください」
そう、大男に言い放った。
『・・・・・・・・・!?』
この驚きは大男のものである。
《まさかのコレクション押収かよ!!》
三永も思わず、心の中で叫ぶ。
そこから大男はあからさまに動揺し始めた。
『い、いやお前にそんなものは必要ないだろう・・・?』
「欲しいのでください」
『別の願いでもいいんだぞ?』
「いえ、これでお願いします」
『永遠の命でも、巨大な富でも、ハーレム形成でも!』
「いえ、あなたの三角定規コレクションください」
『それ以外の願いは!?』
「ないです」
『それ以外にしてくれ!』
「え?でもさっきなんでもって』
『いや、でもそれは』
「なので下さい、三角定規」
『お願いします・・・!どうか、どうかそれだけは・・・!』
「嫌です」
『命より大事なんですよ!』
「そうなんですか」
『そうなんです!!丹精込めて集めて、毎日磨いたものなんです!』
「じゃあ、下さい」
『どうか・・・!どうか、それ以外で・・・!』
もう見いていられない...。
三永はそっとその場を後にした。
その日、大量の三角定規の入った袋を持って帰宅する箱野が学校の生徒の何名かに目撃されたが、
それはまた別の話である。




