諍いの果て (7)
「……テオドール、ちょっとした質問をしていいだろうか……?」
「はい、なんでしょう?」
「私はこの軽い拷問を、あとどのくらい受け続けたら許してもらえるのかな……?」
「まともに立って歩けるようなったら、考えてあげます」
ベッドへ半身を起こし、用意されたスズタケのスープを呆然と見つめたままのアモンに、テオドールがそっけなく答える。
テオドールの職場放棄……もしくは家出から、彼女が城に戻って三日が経つ。
アモンは日頃の不摂生に加え、長らくまともな食事を取らなかった……というか、取れなかったため完全な栄養失調状態となっており、アルセイデスにテオドールともどもエントに乗せられて城に辿り着いてからも、ほぼ寝たきりのような状態が続いている。
といって、普段からほとんど寝たきりと表現してもいいほどの不規則な生活を送っていたアモンを思えば、実際は普段とほとんど変わらないと言ってもいい。
「もういい加減、床上げしてもいいと私は思うんだが……」
「そういう台詞は自分の顔見てから言ってください」
スズタケのスープから逃れたい一心のアモンの言葉を、テオドールが手鏡一つでばっさりと両断した。
映し出された顔は元から細いところに頬のこけた影響でなお弱って見える。
とはいえ、血色は三日前に比べれば随分と回復した。
目の下を覆う隈も多少薄らぎ、蒼白だった顔も元々色白だったことを考えればだいぶ血が通ってきている。
「ちゃんと残さずに食べてくださいよ。でないと、いつまで経ってもこのメニューのままですからね」
観念してか、手鏡に映る自分の顔から目を逸らすと、アモンは膝の上に置かれたスズタケのスープをちびちびと口にし始める。
ベッドの横でそんな様子を見続けるテオドールは、普段と変わらず愛想の無い無表情な顔をしていたが、不思議と口元にかすかな笑みが浮かんでいるようにも見えた。




