04話
自殺考察
他人の自殺したい気持ちというのがこれで正しいのかは僕には分からないが、自分のそうしたい気持ちは分かった気がする。
何をしようとしても無駄で
何をしてもうまくいかなくて
そんな自分が情けなくて
悔しくて、不安で、ひどく億劫で
もう何もかもが手遅れで
だから死ぬしかないのかな
「なんだい、これは」
「僕にとっての自殺についての考察です。なかなかの自信作ですよ」
「いつもこんなこと考えてるの?」
「はい。あ、でも抽象的なのばかりではなくて具体的な自殺方法も考えてますよ」
僕の答えに先生は「はぁ」と溜め息をついた。
「先生、溜め息をつくと幸せが逃げるらしいですよ」
「そうだね、知ってるよ」
なんだか適当に返答された感があるが、まあいいか。
「それで先生、どうですか?」
「どうですかと言われてもね。君、治る気ないだろ」
「いえいえ、そんなことないですよ。ただ、治りたいと思うより治りたくないと思うことが多いだけです」
「その状態を治る気がないというんだよ。というか、自ら悪化させようとしている節もあるみたいだし」
どうしたもんかねぇ、と考え込む先生。
「先生、逆に考えてみてはどうでしょうか。この状態が平常、普通であるとすればなんの問題も「あるに決まっているだろうが」………ですよねー」
とはいえ僕としてはこれが正常というか、普通なわけなんで、自分ではどうしようもない。
「しょうがない。とりあえずエビリファイの量はMAXにしておくのでキチンと飲むように」
「えー」
「もう慣れてきたでしょう、我慢しなさい」
「まあ、増量したところでこの思考がどうにかなるとは思えないんですけどね」
「それでも飲まないよりは良いはずだから」
「はいはい、分かりましたよ。飲みますよ」
「分かれば良いのさ。だけど君のその自殺願望というか破滅主義というか、とにかくそれをどうにかしない限り薬を飲んでも一時的な解決にしかならないからね」
「………分かってますよ、そんなことは。でもどうにもならないんですよ」
分かっている、自分が危うい思想を持っていることなんて。
でも、それはもう自分のアイデンティティのようなもので。
心に癒着してしまっている。
だから………
「だから、僕は苦しむことしかできないんです」