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浮遊

つくづく思うが浮遊の能力というのは、名前のインパクトに反してなかなか便利な能力だ。


この三日間で心からそう思うよになった。

例えばあそこを見てくれ、今にも前を歩く女子高校生が…転んだ。やはりな、仕方のない事だ。あんな滑り止め効果なんて微塵もなさそうなローファーではこの氷道は少々厳しいだろう。ブーツでも履いてくればいいものを、だがタイツを履いているという点は良い。頭のおかしいやつだと、こんな寒い中でタイツも履かずに登校するやからがいるのだから訳がわからない。それが『オシャレ』らしい。

ウチにはさっぱりわからない。それほど歳を取ったと言うことなのだろうか。


歩みが進むにつれ目の前に佇む母校がどんどんと大きくなっていく、それに比例するように周りを歩く学生の密度が大きくなる。この辺りに住む学生は皆、目の前の高校に通う。

数多の頭が一つの目的地に向かっていく光景はまるで軍事パレードだ。


瀬川(せかわ)ちゃんオハヨー」


ウチの娘と同じくらいの年齢の女子高校生の若々しく、勢いの良い朝のコミュニケーションが飛び交う。その中の一つがウチに飛んできた。

全く、毎日こんな軍事パレードさせられてる体のどこにそんな元気があるのだろうか。

ある歳になったあたりから、こんな光景を見てもそんな感想しか出てこなくなってしまった。

これだから歳を取るのは嫌いなんだ。


「おっはー!()()()()、今日木曜だよね?うわーっチョーだるいわ…」


歳のせいにしても仕方がない。ウチも精一杯に応じなければならない。こればっかりは浮遊ではどうにもならない。

それにしても、「オハヨー」とわざわざ声をかけてくれたから、会話がしやすいようにと思って隣に並んでやったが、ずっと隣でニコニコとアホヅラ下げてるこいつはどうにかならないものか。

犬でもまだ突くなり吠えるなり何かしてくるぞ。

こっちはそれなりにコミュニケーションを円滑に進めようとしているのに、こいつはいつまでしゃべらないでいる気だ、もう二分はこうして隣り合って歩いてる。

何かとっつきやっすそうな話題でも出すか、なにが良いだろう、そういえば朝、転んでるやつがいたな。


「ななりん聞いてよー、さっき道で転んでるやつがいてさぁ〜あんなローファーなんて履いてるからぁ〜ブーツとか、履けば、、良いのに、、、」


靴の話題をする時に、何気なく視線を彼女の下半身に向けるとスカートが濡れている。しかもローファーを履いてる。全てを察した。アホはツラだけじゃなかったか。


「それ私」


まったく、親として恥ずかしい。ここから面白おかしいお話を展開させていこうと思ったのに、苦笑いしかできなくなった。

女子高生らしい回答を模索した結果「ななりんの体型だったら転んでも胸の弾力でノーダメっしょ!」と一瞬、口走りそうになったが、実の娘にそんなことを言うのは流石にキモすぎる。と言うかそもそも女子高生はそんなこと言わないか。女子高校生という生き物は普段どうやって生きてるんだ。


「あっ!ハミちゃんだやっほー!」


こいつとつるむとどうも気が狂う、ちょうどよく目の前にハミちゃんことクラスの人気者の葉澄(はずみ)さんが目の前を通りかかったので、このアホから足を引くための口実になってもらう。

いかに自然な感じでこいつと離れハミちゃんの元へ行こうか考えたが、意外とすんなりとことは進んでくれた。


「瀬川さん、おはようございます。」


いつ見ても彼女の黒髪ロングは芸術的だ。特にブレザータイプの制服と合わさった時の破壊力は凄まじい、蝶ネクタイじゃなくダービータイなところも魅力的だ。一体どれだけの勘違い男子を生み出してるだろう。それにしてもどんな手入れをしてたらここまでサラサラになるのだろうか、一度聞いてみたことはあるが、知らない単語がバンバン出てきたため考えるのをやめて魔法だと思うことにしている。

癖っ毛気味な自分の髪を扱うようになり、髪の毛に気を配るようになってから、改めてハミちゃんの凄さが実感できる。学校に着いたときにハミちゃんの脱いだ靴を見ると自分の靴よりも滑りにくそうな靴を履いていて、これまた感心。


「良い靴だね」


「お父さんがこれを履いてけって、買って下さったの。冬はよく滑るからって。」


お父さんか…。

その言葉を聞いてななりんの顔が浮かぶ。ハミちゃんと何気ない会話をしながら教室に入る。

中にはもう見慣れたクラスメイトたちが半数ほど各々の好きなように行動している。教室の端では男子がなにやらスマホで面白そうなことをしているし、女子は女子で、ハミちゃんの周囲に群がってこれまた面白そうなことをしている。

窓際一番後ろにある自分の席に座ると、時間差でななりんが教室に入ってくる。

ななりんの席はウチの隣、縁の力というものか、神の力なのかはわからない。


本名、奈々狩(ななかり)。十五年と八ヶ月前にウチがつけた名前だ。訳あって今は娘と同じ高校に通って娘の隣の席で高校の授業を受けてる。


退屈な高校の授業を聞いているより、今までの出来事を振り返っていた方が面白い。


と言ってもウチが知っていることはほとんど無い。三日前の夢の中で、神を名乗る者が現れて、殺し合いをさせられるらしい。ただの殺し合いではなく。参加者には異能力を渡される。

異能力デスゲームってわけだ。

参加者は4、5名。

期限はない。

最後の一人になったからといって報酬があるわけでもなさそう。

ウチに渡された能力は浮遊。

その他の参加者の能力は不明。


そして一番厄介なのが、参加者の中身がシャッフルされていることだ。


どういう原理かはわからないが、例の変な夢を見る前までは。ななりんこと奈々狩の良いお父さんをしていたのだが起きたら、ななりんのクラスメイトの瀬川とかいう女子高校生の体になっていた。


神が言うには異能力とシャッフルの事実は他の一般人には知られてはならない。


つまるところ、今ななりんのお父さんはななりんのお父さんじゃない。

 

「神とやらは一体なにがしたいんだ…」


一番の謎はなんでウチが人を殺さなきゃいけないのかだ。

なんでも願いが叶うようになるだったり、元の体に戻れるとかならまだわかるが、そんな大事なことはちゃんと言っているはずだ。

わからん。


「瀬川、この問題わかるか?」


まあ、いつかぶっ殺せば良いんだったら、気長に殺していけばいい。


「はい、答えは4です。」


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