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022 酷薄。

 





 パクルガが怒鳴る。


「よせ! 貴様ごときでは、神兵には歯が立たないぞ!」


 これが真の神兵だったら、パクルガなど瞬殺されているところだ。

 ラークは、用心棒らしくして言い返した。


「いいから、あんたは自分の仕事をしろ!」


 ラークは再度《粉砕拳インパクト・ブロー》を発動。偽神兵に叩き込んでおく。この程度の攻撃スキルなら外装が壊れることもなく、丁度よい。


 偽神兵が光線を発射。

 ラークはあえて回避せず、直撃を受けた。《防御膜》を削られながら、後方へと吹き飛ばされておく。


 すでに時間は稼いだので、脇役は舞台から退場したわけだ。


 パクルガが再度、跳躍する。「くらえ、《雷撃懺ライトニング・エンド》!」


 上位悪魔を倒すには及ばないが、かなりの攻撃力を持った一撃だ。そこはSランク騎士だけはある。


 《雷撃懺》直撃のタイミングで、クロエは上位悪魔を自壊させる。

 さらに演出的な大爆発。


 とたん偽神兵は跡形もなく吹き飛んだ。その大地にクレーターを作り、近くの樹木を根元から倒し、修道院にも大損害を与えて。


 ラークは倒れたまま、舌打ちした。


(修道院は巻き込むな、と言ったのに。まぁ子供たちは避難させてあるし、いいか)


 しばらくして、パクルガが歩いて来た。

 倒れているラークへと、片手を差し出す。


「立てるか?」


「何とか」


 実際は無傷だが、それなりに痛がったほうがいいだろう。

 ラークは苦悶の表情を浮かべつつ、パクルガの手を取り、立ち上がる。


「あんた、たいした腕だな。いまの化け物を倒すとは。しかし、あれは何だったんだ? 魔物とは違うようだが」


「ここだけの話にしてもらいたいが、いまのは神兵だ。実は修道院の地下に眠っていたのだ。おそらく、何かのキッカケで起動し、外まで《空間転移(ワープ)》したのだろう」


 パクルガの説明は、ラークが望んだ通りのものだった。


 ラークはゾッとした表情を作った。


「神兵だって? 伝説には聞いたことがあるが、まさかこんなところで遭遇するなんて。あんたがいてくれて良かった」


「私の名は、パクルガ。王立騎士団に所属する騎士だ」


 自己紹介の流れになったので、ラークは名乗った。


「僕の名は、ラークだ。占い師をしているが、今だけはロガ修道院の用心棒をしている。昔とった杵柄だな」


 本名を名乗ったのは、すでにジェーンが知っているため。万が一、パクルガがジェーンに、ラークのことを聞いた場合、片方に偽名を名乗っていると逆に怪しまれる。ついでに、傭兵ギルドにいたことを匂わせておいた。


 パクルガはうなずいた。


「君は勇敢だった。時間を稼いでくれたからこそ、私は暴走した神兵を倒すことができたのだ」


 現実は酷だ。

 本物の神兵だったならば、パクルガの実力では善戦することもできなかっただろう。もちろん、ラークは真実を教えるつもりはない。


 パクルガは続けた。


「もし新たな職を求めているのなら、王立騎士団に来るといい。私が推薦者になろう。君の能力と勇敢さをもってすれば、連隊長も夢ではない」


 ラークは感激したフリで答えた。


「ありがとう。しかし、少し考えさせてくれ」


「もちろんだ。では、私はこのことを上に報告しなければならない。また会おう」


 パクルガは立ち去った。

 ちなみにパクルガに同行していた男爵の配下は、とっくに姿を消していた。偽神兵が現れたときには、すでに逃げていたのだろう。


 アリアとクロエが修道院から、やって来る。


 クロエは自分の仕事に満足した様子だ。


「わたくしの作った神兵、リアルでしたでしょ? 一瞬、暴走したときは困りましたが、おかげで良いシナリオになりましたわ」


 アリアは、異なる意見らしい。


「良いシナリオ? 修道院が半壊したけど?」


「壊れたのでしたら、直せばよろしいのですわ。ダーリン、これで問題は解決ですわね?」


「ああ」


 孤児の一人が、村のほうから駆けて来た。


「助けて、ロムが!」


 ラークたちは駆けだした。ロムは村外れで倒れていた。手ひどく殴られたらしく、意識がない。右腕もへし折られている。


 アリアが憤る。


「いったい誰の仕業なの!」


 ロムと一緒にいた子供によると、またもバメル男爵の配下の仕業らしい。偽神兵が暴れまわっていたというのに、そいつらは男爵からの命令を遂行していた。

 つまり、村への嫌がらせだ。

 今日は家畜を殺していたところを、ロムが見つけ、止めに入ったという。

 だが返り討ちにあい、重傷を負わされてしまったのだ。


 ラークはかぶりを振った。


「……ロム、避難所にいるはずだろ。勝手に抜け出したのか」


 アリアが拳を握りしめる。


「お師匠様! あたし、もう許せないわ! 男爵を痛めつけて、二度と荒くれどもを送り込めないように──あら、お師匠様?」


 すでにラークの姿はなかった。


 それもそのはず、ラークは《加速ブースト》の高速移動によって、バメル男爵の配下たちを追いかけ──先回りをしたのだ。


 そこにいたのは、2人組。以前の『巨漢、チビ、のっぽ』の3人組とは、別の連中だ。


 この2人組は、悠々と街道を歩いていた。

 家畜を殺し、孤児を殴り倒したので、今日の仕事は終わりということか。


 だが、2人組は立ち止まる。


 前方にラークが現れたためだ。


 2人組の片方が口を開いた。何かを言おうとしたのだろう。

「邪魔だ」とか「どけ」とか。

 しかし、言葉が発されることはなかった。


 ラークの手刀によって、その首を刎ねられたためだ。


 残った男が、悲鳴を上げる。


「ま、まて! 助けてくれ!」


 ラークは手刀を、その男へと向けた。


「いや、無理だ」




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