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017 侵入。

 





 翌朝。

 朝食の席で、ラークはクロエから報告を聞いた。

 ロガ修道院の地下に眠る神兵についてだ。


「神兵に詳しい方がいるのですわ。神兵の封印にも一役買っている殿方です。とても優れた方。けれど、ご安心ください。わたくしが一途に思い続けているのは、ダーリンだけですわ」


 ラークは蛇足は無視した。


「神兵の封印か。それが手っ取り早いかもしれないな」


「そう簡単な話ではないようですわ。と言いますのも、すでに何らかの封印がなされている場合、別種の封印を重ねることで、神兵の暴走を引き起こしてしまうかもしれませんもの」


 すでに封印がなされていた場合、それが感知できない可能性もある。あまりに古い封印スキルだと、構成が違いすぎて、見落とすかもしれないのだ。ラークやクロエほどの実力者でもあり得る話。


 ラークはうなずいた。


「確かに、寝た子は起こすな、と言うし」


 隣でトーストを齧っていたアリアが、呟いた。


「その言い方だと、凄く軽く感じるわね」


「とにかく、神兵に刺激を与えるのはNGとしておこう。他に、情報源から分かったことは?」


「まず、この地に神兵が眠っていること自体は、意外ではないようですわね。古代文献によりますと、この地方は激戦地として記録されているようですので。またこの修道院の教派は南方聖教会ですが、教義としては、神兵を否定はしないが、崇め奉りもしない。発見した神兵を隠すようにして修道院を建てたとしても、おかしくはありませんわ」


「ジェーンによると、この修道院は560年も昔に建造されたそうだ。長い年月を経るうちに、禁域という教えだけが残った。誰も足を踏み入れない場所に、神兵は眠り続けたわけだな」


「ですが、バメル男爵は知るに至ったのですわよね」


「それだが、どうもしっくり来ないな。神兵は、地方貴族ごときがどうこうできる代物ではない。もちろんバメル男爵の自惚れが病的というのなら分かるが──」


 クロエが目を光らせる。


「男爵の背後に、何者かがいると言うのですわね?」


「修道院の売買記録は公式に残るからね。そこに自分の名を出したくない者が、子分のバメル男爵を使っている。構図としては、こっちのほうがしっくり来る」


 ラークは一考した。

 となると、やはりバメル男爵への探りが必要になってくる。拉致して尋問の流れだと、黒幕に雲隠れされてしまうだろう。


「男爵邸に忍び込んでみるか」


 ラークの場合、敵地潜入も散策の気軽さで行ける。


 まずは男爵邸の近くまで向かう。《空間転移(ワープ)》は使えないが、かわりに身体強化スキルがある。


 邸宅はそれなりに大きく、巡回中の私兵もいた。

 《存在減滅ディサピア・タイム》スキルを使いつつ、敷地内を移動。裏口から内部へと入った。


 ここのレベルの私兵では、いまのラークは透明人間と同じだ。標的の邸宅に忍び込むのに、これほど適したスキルもない。

 少し進んでから、見つけたメイドに後ろから声をかけつつ、《存在減滅》を切る。


「やぁ、どうも。僕のことは知っているね? 男爵の友人だが──」


 メイドは驚いた様子だったが、すぐに愛想笑いを浮かべた。邸宅内で堂々としている人物が、男爵の友達だ、と言う。よほど疑り深くなければ、信じるだろう。

 メイドは信じた。


「男爵はどちらにいらっしゃる?」


「この時間は執務室でございます」


 行き方を教わってから、メイドの迷走神経に刺激して、気絶させる。それから、先ほど見つけた空き室に寝かせておく。

 《存在減滅》を再発動してから、執務室に向かった。


 メイドの言葉に偽りはないが、知らぬ間に移動している可能性はある。だがツイていたことに、男爵は執務室にいた。

 人相は事前に聞いてあるので、間違いない。

 ここから《お喋り(チャット)》で、洗いざらい吐かせることもできる。この男爵は、意志は弱そうなので。


 ただ問題は、自白した記憶は残るので、黒幕に伝えられることにある。口封じに殺しても、やはり気取られる。


 ラークは一考しつつ、男爵のそばまで歩いた。

 男爵はまったくラークに気づいていない。


 廊下からノックがあり、男爵が入室を許可する。執事が部屋に入り、何やら報告しだす。

 修道院の用心棒を始末するため雇った、暗殺者についてのことだ。


 要約すると、依頼は受理され、結果が出るのもすぐとのこと。


(用心棒というと、僕のことか)


 ラークは机の上の手紙を取り上げ、封蝋の印璽を見やった。


 キメラのシンボル。


(ふーむ。見たことがあるシンボルだ)




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